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THINK PIECE

SHINCO×HIROSHI KAWANABE

常にオリジネイターとした歩んだSDPとSOUL SETの20年

10 3/2 UP

Photo:Shoichi Kajino Text:honeyee.com

今年、結成20周年を迎えたスチャダラパーとTokyo No.1 Soul Setが、
お互いをフィーチャーした新曲を含んだベストアルバムを同時リリース。
デビュー当時から親交を持ち、今や日本を代表するトラックメイカーとなった
スチャダラパー・SHINCOとTokyo No.1 Soul Set・川辺ヒロシが、この20年を振り返る。

 

SHINCO

Bose、ANI、SHINCOの3人からなるラップグループ「スチャダラパー」でDJ・トラックメイカー。1990年にデビュー。1994年『今夜はブギーバック』の大ヒット以来、ヒップホップシーンの最前線で、フレッシュな名曲を日夜作り続けている。デビュー20周年を迎えた2010年、5月9日に日比谷野外大音楽堂、5月29日に大阪城音楽堂にて20周年記念イベントを開催予定。

http://www.schadaraparr.net/

川辺ヒロシ

BIKKE、川辺ヒロシ、渡辺俊美の3人からなるユニット「TOKYO No.1 SOUL SET」のDJ・トラックメイカー。90年に活動を開始。95年にメジャーデビューアルバム『TRIPLE BARREL』を発表。99年、活動休止状態になるものの2004年に活動再開。TOKYO No.1 SOUL SET以外に、藤原ヒロシとの"HIROSHI II HIROSHI"や、クボタタケシとの"SONS OF NICE YOUNG"、最近では石野卓球との"InK"としても活躍。

http://www.t1ss.net/

 

──
スチャダラパーとソウルセットが共に活動20周年を迎えたわけですが、2人は互いのグループに対してどのような印象を持っていますか。
SHINCO(以下:S)
「ソウルセットはメンバー3人の音楽的ベクトルがバラバラなので、よく続いているなと思いますね(笑)」
川辺ヒロシ(以下:K)
「むしろ、ベクトルの向きがバラバラだからこそ続けてこられた感じはありますよ。スチャダラパーはベクトルの向きが同じなのに20年も続いているから、逆にすごいなと思います」
──
ソウルセットというバンドを20年間続けてこられた理由は何だと思いますか。
K :
「3人で物事のすり合わせをする作業が少ないからだと思います。3人が勝手に音を作り、後でまとめるという感じが良かったのかなと思います」
S :
「今回、ソウルセットと一緒に制作をしたんですけど、ソウルセットは川辺君がトラックを制作した後にいなくなるんですよ。その後(渡辺)俊美君がメロディーをオーバーダブして、最後にBIKKEがボーカルを入れる。すると数日後みんなで顔を合わせた時には曲が完成しているんです。はじめから3人で作る僕たちとは、制作の仕方が全然違いますね」
──
最終的には、ソウルセットなら川辺さんが、スチャダラパーならSHINCOさんが曲の全体のバランスを整えていくんですか。
S :
「最近はボーちゃん(Bose)も色々と意見を伝えてくれるので、2人でやっていますね。ANI君は寝ていますけど(笑)」
K :
「以前は1人でしたが、今は僕と俊美君の2人でやっています」

──
メンバーそれぞれが個別に音を入れるソウルセットの場合、上がってきた音が予想と違い、各トラックのバランスを整えるミキシングの段階で曲が上手くまとまらない、ということはありませんか。
K :
「それはないですね。上がってきた音が自分の予想と違えば違う程、整える側としては面白さを感じますし。ソウルセットの場合、結果さえ良ければ、それこそギターの音が無くてもいいし、BIKKEの歌を無くしてもいいので」
──
初期のスチャダラパーではどうでしたか。
S :
「僕が1人で音と格闘している間、2人はただ居るという感じでした。1人でずっとテンパってましたよ(笑)」
──
川辺さんはソウルセットと並行して個人としての活動もしていますけど、個人の活動がソウルセットに影響を与えることはありますか。
K :
「DJから得られるフィードバックはソウルセットにも還元されています。DJを長く続けてきたことは自分の中ではすごく大きいですね。ソウルセットの活動をしていない時は、DJが唯一、社会との接点でしたし、DJをしていないと本当にダメ人間になると思って、キツくても頑張ろうと決めていたんです。この20年間を振り返ると、すごく良い時期にDJをすることが出来たと思いますね」

 

──
長くDJを続けてきて、昔と比べてフロアの雰囲気が変化したなと感じる事はありますか。
K :
「それは無いですね。かかる音は変化していますけど、みんな楽しそうに踊っていますから」
S :
「川辺君がDJをする現場によく遊びに行くんですけど、川辺君のDJはカテゴライズされない感じがありますよね」
K :
「『カテゴライズされない』というのは常に意識していました。人一倍、ロック、ハウス、テクノ、ヒップホップなど、色んな音楽を聴いてきましたし、誰かの真似をした時点で自分にバレるというか、自身で納得がいかないんですよ」
──
20周年を機にリリースされた今回のベスト盤は、その「カテゴライズされない」という川辺さんのポリシーを聴く者に感じさせます。
K :
「自分たちの名前がそのままジャンルになれば一番いいんですけどね(笑)。ただ、渋谷系とか、ジャジー系とか、常にどこかのジャンルに入れられてきた感じもするんですよ。それならば、レコード店の全てのコーナーに作品を置いてもらえばいいんですけど。あと、ソウルセットは明確にカテゴライズ出来ないのが弱み、という部分もあるかもしれないです(笑)」
──
ソウルセットを始めた頃は、20年後にベスト盤を出すなんて想像出来なかったんじゃないですか。
K :
「もちろん想像出来ませんでしたよ。ここまで長生きするなんて考えていませんでしたから。どこかでのたれ死んでるんだろうなって(笑)。僕は1980年頃から音楽にハマりはじめて、ClashとかPoliceなんかをよく聴いていましたけど、その当時の20年前は1960年ですよね。1960年っていうと、ロックが生まれてまだ間もない頃ですし、そう考えると20年って長い。20年続けてきたと思うと少しゾッとします(笑)」
──
とはいえ、20年という時を経て、ソウルセットとスチャダラパーで共作した曲をそれぞれのベストアルバムに入れることが出来たわけですが、実際の制作はどのように進められたのですか。
K :
「僕がSDPのスタジオに曲のデータを20曲分くらい持って行って、どんな感じにしようかと、2人で聴きながら作っていました。SHINCOがずっと二日酔いで、ウーロンハイの匂いをぷんぷんさせているから、こいつ聴いてんのか? と思いつつ(笑)。そんなこんなしながら、SHINCOがピクッと反応した2、3曲でビートを組むんですけど、もうその時点でSHINCOの音になるので、それはすごく新鮮でしたね」
──
二日酔いにも関わらず(笑)。
K :
「20分作業しては休んで(笑)」
S :
「そうして出来たビートに俊美君がオーバーダブをすると、何でこうなるの? という感じで、これがソウルセットの醍醐味かと思い、感動しましたね」
──
川辺さんは自身の表現においてやりたくない事はありますか。
K :
「やりたくない、ということばかり言うのも良くないなと思うようになりました。やりたくない事をやるのも面白いのかなって」