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Text: Tetsuya Suzuki
1991年から2002年にわたり、ダイアモンドなどの天然資源の支配権を巡る血みどろの内戦が行われた、西アフリカの小国・シエラレオネ。そのシエラレオネ内戦のリアルな姿を余すことなく伝えるドキュメンタリー映画、『The Empire in Africa』が3月21日、高円寺ドキュメンタリーフェスティバルで、藤原ヒロシのセレクト作品して上映される。
映画は、シエラレオネの内戦終結を国連で宣言するカバー大統領(当時)と革命統一戦線(RUF)のリーダー、サンコーの姿で始まる。そして、壇上に上げられる腕を無くした幼い少女。少女のこの悲惨な姿は、しかし、シエラレオネで行われていた残虐行為のごく一部であるに過ぎないことを、この映画は伝えることになる。
一般市民に対する残虐行為の数々が、生き残った者たちの生々しい証言で伝えられる。生き残った者たち。しかし彼は腕を無くし、あるいは脚を無くしている。男も女も大人も子供も、武装集団に「切り落とされた」のだと言う。おびただしい数の人々が四肢を切断された姿でストリートにたたずむ姿は、あまりにも衝撃的だ。
内戦と聞けば、我々は腐敗した政府による軍隊と革命勢力とのゲリラ戦をイメージするし、実際、このシエラレオネ内戦を、そうした構図で捉えることも可能だろう。しかし、内実はそれほど単純ではないようだ。貧しいながらも資源に富ん
だこの国で、圧政と貧困からの脱出を目指すということは、その天然資源の支配権を獲得することを意味し、同時にそれは、植民地時代の宗主国の思惑、西欧の強国の思惑にも触れることになる。そして、この映画は本来なら豊かに暮らすことのできるこの国の市民を貧困と恐怖に陥れているもの本当の正体は欧米の正義とは言えない姿勢である、と訴えているようにも思える。
映画はシエラレオネ政府の要人、RFUの幹部、アメリカ大使、イギリス大使、フランス領事官等のコメントを挟みながら、傷ついた人たち、命を失った人たちの姿を淡々と映し出していく。そのなかには、見たこともない残酷なシーンを映し続ける。恐ろしいのは、この見たことのない残酷なシーンは、ある時期、シエラレオネの人々にとっては間違いなく「日常の風景」であったということだ。
レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ブラッド・ダイヤモンド」の背景にこのシエラレオネ内戦があると言えば、興味を持つ映画ファンも多いだろう。藤原ヒロシはフランスの友人からこの映画を紹介され、あまりにショッキングなシーンの連続に言葉を無くしたと言う。
なお、今回の上映以外、日本語字幕付きで国内で公開される予定は今のところない。
2010年3月16日(火)〜22日(月)
会場:座・高円寺1
〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-1-2
Tel:03-3223-7500
[主催・お問い合わせ先]
『座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル』実行委員会
(株)ドキュメンタリージャパン
Tel:03-5570-3551
http://www.documentaryjapan.com/
詳細は下記ドキュメンタリージャパンのウェブサイトから
http://www.documentaryjapan.com/topics/2010/02/10/post_18.html
3月21日(日)
19:00〜
上映
20:40〜
藤原ヒロシトークイベント
*吉岡忍氏との対談