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THINK PIECE

HIPHOP NEVER DIE

ラップ大恐慌を打開する
DJ DECKSTREAMによるニュークラシック

09 3/6 UP

Photo:Shoichi Kajino Text:Kohei Onuki

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DECKSTREAMさんの音楽からはニュースクールの影響を強く感じるので、30代なのかな、と勝手に想像していたのですが(笑)。
「それでも永遠の20歳、ということで(笑)」
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分かりました(笑)。DECKSTREAMさんは以前にONYXの“SLAM HARDER"とPRODUCT G&B”CLUCK CLUCK“のマッシュアップやCUBAN LINK“SUGAR DADDY”のリミックスなどを手掛けていて、それらの作品でDECKSTREAMさんを知るようになったリスナーは多いと思うのですが、それらのオリジナル曲は、HIP HOPやR&Bとして、トラックの完成度が高いものですよね。オリジナルのトラックを再構築してそれ以上のクオリティを出さなければいけない、ということに対してプレッシャーを感じることはありますか。

「プレッシャーはないですね。あまり考え込まない性格なんで(笑)。この曲はこうした方が格好良いな、というアイディアが頭の中にあって、それを形にするだけなんです。正直、音楽理論なんて全然詳しくないですし、全て感覚でやっています」
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DECKSTREAMさんはサンプリングをメインとしたオーセンティックなトラックメイキングしていますけれど、「大ネタ」と言われる有名なサンプリングソースをよく使用していますよね。あくまで個人的な意見なのですが、安易に大ネタを使用してしまうと、曲がチープに聴こえてしまうことがありますけれど、ただ、DECKSTREAMさんの場合は、大ネタを使用した曲でも新鮮に聞こえますね。
「トラックメイキングに関して『何の機材を使っているの?』とか『どうやってネタを抜いているの?』とよく聞かれるんですけれど、特に難しいことをやっているつもりはないんですよね。ただ、同じネタを使用したとしても、10人のトラックメイカーがいればそれぞれの違いが出ますけれど、その中でも自分が作る曲は特徴的なのかな、とは思います。あと、一般的にどうかは別として、自分のまわりには古い曲に抵抗を持っている人が多いんですが、僕は昔のソウルやジャズが好きなので、その時代の音を大事にしたい、という気持ちがサンプリングを主体としたトラックメイキングにつながっているんだと思います」

 

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そもそも、DJやトラックメイキングをするようになったきっかけは何だったのですか。
「実を言うと、DJはHIP HOPをかけたいからではなくて、スクラッチがしたいから始めたんですよ。『スクラッチ=HIP HOP』だと。なので、はじめはHIP HOPのことをよく知らないままレコ屋に行って、その店のレコメンドを買っていました。そこで買ったLORD FINESSEの“THE AWAKENING”などを聴いていくうちにHIP HOPにのめり込んでいきましたね」
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スクラッチに魅せられたのがきっかけ、ということは、Q-BARTのようなバトルDJのビデオを見ながらスクラッチの練習をしていたのですか。
「していましたよ。Q-BARTやDJ BABUのようなバトルDJのショーを見ながら練習していました。そんな風にHIP HOPと出会って、『ネタ』というものの存在を知って、ソウルやジャズを聴くようになったんです。色んな年代の音楽を聴くようになって、『時代を問わず良いものは良い』と思うようになりましたね。なので、曲を作る時も、単に新しいものを追いかける、ということはしませんし、時代を問わず聴いてもらえる曲作りを心掛けています」
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影響を受けたトラックメイカーはいますか。
「DJ PREMIERですね。HIP HOPを聴いてきたなかで、自分の好きな曲には彼のクレジットが乗っていたんです」
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3曲目に収録されている“EXIT SIGN”は、ネタのチョップの仕方、スクラッチのはめ方など、DJ PREMIERからの影響を感じさせました。
「そうですね。彼から受けた影響は大きいです」
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LONNIE LISTON SMITHの“GARDEN OF PEACE”という大ネタを使用していましたが、“GARDEN OF PEACE”をセレクトした理由を教えて下さい。
「ネタはノリで選びました(笑)。ネタに関して『大きい、小さい』ということはあまり意識していないんですよね。単に自分が好きな曲を使う、曲をより良くするために何をサンプリングするか? という基準でネタをセレクトしているんですよ」