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THINK PIECE

Christian Louboutin×VERBAL

"レッドソール"に秘められたパンクな精神

10 12/8 UP

photo:Kentaro Matsumoto text:Jun Namekata

L
「当時の一般的な人たちはメイクもあまりしないし、ヒールも履かなかった。香水を身につけ、ドレスアップするということをバカにするような節もあるくらいだったんだ。それが一般的な女性像だった。私はなぜそうなのか理解できなかった。憤りすら感じたよ。なんで!? もっとキレイに魅せてあげた方がいいのに!ってね。そんな中でロックバンドのブロンディやティナ・ターナーの存在はとても刺激的だった。ブロンディのヴォーカルのハリーはもともと赤毛だった髪をブロンドに染めて、ハイヒールを履いて、フランスの女性にとってタブーとされてきたことをすべて行って出てきた。そこにはロックな女性らしさがあったんだ。ある意味、自分を表現するのに自由な女性が出てきたんだよ。私はこういう人のために作りたいと思ったね」
V
「彼女たちにはどこかボーイッシュなセンスがあった。それがフランス人にとって斬新なものとして写ったんじゃないでしょうか」
L
「それから女性は進化して以前よりもずっとスマートになり、多くの人たちが美しくなることに価値を見いだすようになった。ドレスアップすることにせよ、歌を歌うことにせよ、そこには、政治的な関係などそもそもなかったんだ。だから私はごく普通の人達を価値あるものとして見て、多くの女性に美しくなれる権利を与えてきた。それが私のミッションであり、彼女達を守ることだと思っているんだ」
V
「クリスチャンはレディスだけでなくメンズラインも作っていますが、そのきっかけはなんだったのですか?」

L
「歌手のMIKAがある日やって来て、彼のステージのために靴を作ってほしいと言われたのがメンズシューズを作り始めたきっかけだね。私は彼になぜ自分なのだと訪ねたよ。だって私はレディスシューズのデザイナーだから。そうしたら彼は“それがポイントなんだ”といったんだ。レディスシューズのエレメントを活かしたメンズシューズが欲しいんだと。それがメンズシューズを作るはじめたきっかけかな」
V
「メンズシューズを作るときになにか特別なテーマやコンセプトはあるのですか?」
L
「これといったテーマはない。ただ、実は今パリにメンズ専門のショップを作りたいと思っていて、そこにはイメージがある。それは風変わりな冒険家というコンセプト。ノマドのように自由に旅をする収集癖のある男が、世界中から集めてきたさまざまな靴を並べている。そんなイメージなんだ。靴のデザインとしてのコンセプト? そうだな、すべての靴に様々な特徴があるけど、メンズのシューズに付けられるものは限られている。例えばローファーだったらタッセルとかね。僕の場合はそれをひとつじゃなくて全部付けてしまう。私はただ単に定番のエレメントをおくだけでなく、すごく作り込むことでメンズシューズをとてもドレッシーなものに仕上げているんだ。強いてあげればそれが特徴かな」

 

V
「僕はいつも、なんでメンズの靴は同じようなものばかりなのか不思議だったんです。例えばスニーカーにしても人気のシェイプは決まっていて、色が違うだけだったりする。女性が人と違う新しいものを求めるのとは逆に、男性は保守的なものが好きですよね」
L
「靴に対して言えば、女性のほうが男らしくて、男性のほうがフェミニンだね。男性は決まった靴を綺麗に磨いて大切に使うだろう? 私の知り合いには、より輝きを出すために靴にクリームを塗って冷蔵庫に入れて浸透させるという人もいるくらいだよ。どちらかというと女性ははきつぶして、新しい次の靴を求める。男性は物を、女性は新しい見かけやアティチュードを求めているというわけさ」
V
「なるほど、それは深い話ですね。僕は気に入ったものは色違いで集めてしまうこともあるし、収集することも好き。見たことないクレイジーなデザインを見つけると、無条件にこれは手に入れておかないと!って思ってしまうんです。だからボトムからスタイリングすることもすごく多い。人と同じになりたくないって言う気持ちが僕の中にあるからなんだけど、それは僕にどちらかというと女性的なセンスがあるっていうことかもしれません」
──
ところでルブタンさんには自分のデザインした靴を履いて欲しい男性像というのはあるのでしょうか?
L
「それは難しい質問だね。さっきもいったように、レディスシューズもメンズシューズもイメージは常に変わっていくから。とはいえ、強いて言うならば人生のパフォーマーのために作っているという感じかな。例えば先ほどのMIKAに関しては、彼のパフォーマンスのために作ったのだけど、それはステージでのパフォーマンスのためだけではなく、いろんなシチュエーションでのパフォーマンスにも履けるものだと思う。つまりパフォーマンスというのはその人の姿勢であり、ある意味生き方でもある。つまり、僕の靴を買いたいとか履きたいという人は、普通のものを履いて満足するような人ではない、人生におけるパフォーマーだと思うんだよね」
V
「僕もできることなら個人的にオーダーしてみたいな。特定の人に靴を作るというのは今もやっているんですか?」
L
「それは時と場合によるのだけど、これが欲しいという特別な希望があれば是非作りたいとは思っているよ。ただ、ほかにもあるようなものはデザインしたくないけどね。できるだけ人々のセンスや夢などに対して反対はしたくないんだ。僕はクリエイティブなことが好きで、それを純粋に楽しんでいるのだから。今度、パリに来ることがあった是非アトリエに遊びにきてくれ。VERBALのようなパフォーマーだったらいつでも歓迎するよ」

 

クリスチャン ルブタン銀座店

東京都中央区銀座7-6-2
tel:03-6280-6501
fax:03-6280-6502
営業時間:11時〜20時
定休日:年内無休
http://www.christianlouboutin.com/