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The Verbs

奥田民生がギタリストとして参加する、
磨き抜かれたフレッシュなロックバンド「ザ・ヴァーブス」

10 12/27 UP

photo:Yuji Hamada text:honeyee.com

ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、アリシア・キーズ、ジョン・メイヤー……、名だたるトップミュージシャンとの共演やプロデュースワークで知られるドラマー、スティーヴ・ジョーダン。彼が妻のミーガン・ヴォスと結成したバンド、ザ・ヴァーブスはすでに世界が認める実力に加え、現在制作中のサードアルバムから、あの奥田民生がギタリストとして正式加入したことでも話題のバンドだ。
奥田も参加したセカンドアルバム『トリップ』の国内盤を引っさげ、メンバーの多忙の合間を縫って10月に行われた5都市6公演のジャパン・ツアーを直前に控えた4人に、奥田加入のいきさつやレコーディングについて話を聞いた。

The Verbs / ザ・ヴァーブス

ドラマーやプロデューサーとして世界的に活躍するスティーヴ・ジョーダンと、彼の妻でもあるヴォーカル・ギターのミーガン・ヴォスが結成したバンド。奥田民生とは、アルバム『29』のレコーディングに参加して以来親交を深めており、ザ・ヴァーブスのファーストアルバム『And now…』の来日ツアーには奥田がギターで登場。そしてセカンドアルバム『トリップ』にも参加し、現在制作中のサードアルバムからはギタリストとして正式加入。ベースには、ザ・フーのツアーでもプレイし、ジョーダンと共にジョン・メイヤー・トリオとしても活動するピノ・パラディーノが参加している。

http://www.theverbs.us/

 

──
まず、ザ・ヴァーブスのセカンドアルバム『トリップ』に奥田民生さんがギタリストとして参加することになった経緯をお聞かせください。
スティーヴ・ジョーダン(以下: S )
「タミオと僕たちは長い付き合いの友人で、タミオの作品に僕が参加したりしながら、自分の作品でも一緒にプレイしたいとずっと思っていたんだ。僕のバンド、ザ・ヴァーブスのファーストアルバム『And Now...』の日本公演の時、タミオにギターを演奏してくれないかと頼んだら快諾してくれて、彼がツアーに参加することになった。そのツアーで感じたマジカルなエネルギーを活かして、ファーストでは妻のミーガンと僕がほとんどの楽器を演奏したけれど、セカンドではタミオにも参加してもらって、みんなでレコーディングすることにしたんだ。セカンドの制作を経て、僕たちの間に何か特別なものがあるのは明らかだった。だからもっと一緒にプレイしたくて、この夏にはサードアルバムをレコーディングし始めたよ。作業はスムーズに進んだし、それにすごく楽しかったね。タミオがザ・ヴァーブスに正式加入してくれたのはすごいことだよ。僕はベースのピノ、そしてもちろんミーガンとも長いこと一緒にプレイしてきた。タミオとも、いわば家族のような友情を続けていきたいと思っているよ」
──
では民生さんにお聞きしますが、スティーヴからバンドを一緒にやろうと声をかけられた時はどう思われましたか。
奥田民生(以下: O )
「以前から僕のアルバムのレコーディングやツアーで一緒にプレイしていたので、『あ、そう』とは言わないまでも(笑)、自然な感じでしたね。メンバーに加入するとかしないというのはまあ形式的なことなのかな、と」
──
ザ・ヴァーブスのメンバーとして活動することで、民生さんの他のプロジェクトへの影響もあるのでしょうか。
O
「そうですね。このメンバーは一緒にやっていて相当面白いですから。英語の問題があって、僕は演奏をしていない時の普段の会話がイマイチ分かりきれない状況ではあるんですけど、それでも音楽ですごく盛り上がれるというのは、逆に楽しいんですよね。言葉は必要ないというか。最初にニューヨークに行った時には、言葉の面で不安になったりもしましたけど、時々とはいえ何年も一緒にやっていると、自分の英語がぐっと進歩したわけでなくても、通じているような気持ちになってくるんです」
──
音楽を通して心も通じ合える、という。
O
「そう。そこが楽しいので、こういう機会を与えてもらったのがうれしいですね」
S
「まったくその通りで、音楽は世界共通の言語だね。タミオと僕は長い間友人だけど、僕の話せる日本語の単語は4つ、英語だって400だからね(笑)。それでも完璧にコミュニケートできていると感じるよ」

 

O
「え、完璧に?!(笑)」
ミーガン・ヴォス(以下: M )
「私もそれは実感しているわ。すごくクールよね」
O
「正直、途中からは分かったフリ、という場面もあるんですけど(笑)。でも例えばリハーサルの時には、『今こう言ったんじゃないかな』と予想して音を出し始めると、演奏している間に『ああ、やっぱり』と本当に分かったり、時には全然違っていたり。そうやってなんとなく進めていけている状態ですね」
──
『トリップ』を聞いた時に、ザ・ヴァーブスはプロフェッショナルなミュージシャンの集合体でありながら、若々しくてフレッシュなロックサウンドだと感じました。もちろん、聞きこんでいくと深みがあって、繊細なサウンドプロデュースになっているのですが、このアルバムでは当初からこういったバンドサウンドを考えていたのでしょうか。
M
「あら、若く『聞こえる』の(笑)? 演奏している時は、まるで子どものように楽しんでいるからかしら」
O
「プライヴェートなスタジオで自分たちだけでシンプルに作っているから、それでフレッシュなスタイルになっているんですかね。このバンドに関しては、立派なミュージシャンだから大金を使って立派なスタジオと機材を用意して、大勢のスタッフやエンジニアを連れてきて、というやり方ではないんですよ。スティーヴはmanufactureという言葉を使うけれど、手作業というか、みんなそういう音楽が好きで自分たちもそういった作り方をしているので、音も当然、原始的になってくる」
M
「誰も私たちのやり方に口を出さないしね。自分たちのスタジオでレコーディングしているからレコード会社や予算のことも考えないし(笑)、作りたいサウンドや曲に没頭して、アルバムが完成するまでは他の人がどう言うかなんて考えないもの」
ピノ・パラディーノ(以下: P )
「フレッシュで若々しいサウンドを作れるようになるにはすごく時間がかかるのかもしれないね。若い時には古臭い音を出したくなるだろう?」
M
「すごい、それは真理だわ」
S
「ああ、若い頃はもっといろいろ確認しながら進めようと思いがちで、その後ようやく自分を解き放つことができるんだ」