honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

The Verbs

奥田民生がギタリストとして参加する、
磨き抜かれたフレッシュなロックバンド「ザ・ヴァーブス」

10 12/27 UP

photo:Yuji Hamada text:honeyee.com

──
キャリアを経てこその原点回帰ということで言えば、民生さんも三人のシンプルで原始的、インディペンデントな曲作りにはフィットする部分があったのではないでしょうか。
O
「そうですね。それに、僕がニューヨークで彼らに混じって活動していること自体、東京で知っている人の中で仕事をするのとは違い、言葉や一日の動きがよくわからなかったりするのが新鮮で。音楽の仕事を始めた頃に戻ったような感覚もありますね。僕は東京に出てきた頃、自分がやっていることに自信がなくて、周りのプロ達に対して気負っていたんですけど、もちろん実際に彼らはすごいとはいえ、もしかしたら自分にもできるかも、とだんだん思い始めて、気が付けば一緒に仕事をしていたり。そういったことを現場で感じてきた中で、アメリカのロックンロールに憧れてギターを始めたものの、自分は世界に通用するのか、わかってもらえるのか、という気持ちも正直ありましたけど、スティーヴと一緒にアメリカで活動するうちに、これは若い頃に感じたのと同じことなんだな、と思いました。結局、人生は『やってみたら自分にもできた』の繰り返しじゃないですか。できるかできないか、ではなくて、試せるかどうか、実際にやったかどうかの方が重要なのであって。僕が東京に出てきた時もニューヨークに行った時も、チャンスの時にトライしたからこそ、できたわけですよね。もちろん、機会を与えてもらったことにはすごく感謝してます」
──
さて、ツアー間近ということでリハーサルを重ねていると思うのですが、今回のツアーに際して改めてザ・ヴァーブスはどんなバンドだと感じていますか。
P
「エキサイティングなバンドで大好きだよ。サウンドはフレッシュで正直だしね」
M
「正直というのはいい表現ね。私にとっては……そうね、ザ・ヴァーブスにとってカバーは大事な表現方法なんだけれど、次のアルバムではすべてがカバー曲なの。才能あるミュージシャンと一緒にこういったカバーやオリジナルの曲をプレイできるのは素晴らしいわ。パワーとダイナミクスに溢れていて」

 

──
カバーといえば、『トリップ』に収録されているニール・ヤングのカバー『Only Love Can Break Your Heart』が、フレッシュで正直という言葉にぴったりの仕上がりでしたね。今回のツアーでは、他にどんな曲がプレイされるのでしょうか。そして今おっしゃったように今後もカバーは続けていくと思うのですが、そのレパートリーはどのように決めているのですか。
M
「今回はバッド・フィンガーズの『Baby Blue』と、それから……えーと(笑)」
S
「デイヴ・クラーク・ファイヴの『Glad All Over』、バディ・ホリーの『Heartbeat』、シレルズの『Baby, It's You』、それからサプライズにもしたいから全部は明かせないけれど他にも何曲か予定しているよ。どの曲をカバーするかは、大抵ミーガンが選ぶんだ」
M
「父が口ずさんでいたりラジオで聞いたりした曲の中から、お気に入りをピックアップしているの。 今後はタミオにも選んでもらって、ぜひコラボレートしたいわね。みんなでいつも一緒に制作できたらきっと素敵だと思うんだけれど、タミオは日本に住んでいるし、ピノはイギリスだし、スティーヴと私はニューヨークだし。そうそう、実は3人はサードアルバムのために、シカゴにあるあの有名なチェス・スタジオも使わせてもらって、何曲かレコーディングをしてきたのよ。どうやらちょうどシカゴにいたビッグアーティストも何か弾いてくれたみたいだし、スティーヴと一緒にいるとなんだか調子が狂っちゃうわ。彼は何でもできるんだもの(笑)」
O
「チェス・スタジオにはもう機材はないんですけど、博物館のようになっているところに機材を入れて、一日レコーディングしてきました。日本に戻ってきてから、当時あそこで録音されたブルースのレコードを聞いてみると、やっぱり同じ音がするんですよね」
S
「サウンドは本当に素晴らしかったね」
──
出来上がりが非常に楽しみです。いつ頃完成する予定ですか?
M
「歌入れがまだなので、日本から戻り次第作業を再開するつもり。トラックは本当に素晴らしいの。今回は一発録りをしてみたんだけれど、それがすごく効いていると思うわ。でもそのうち、『タミオ・オクダはザ・ヴァーブスを脱退、ローリング・ストーンズに加入』なんてニュースが流れちゃうんじゃないかしら(笑)」

 

ザ・ヴァーブス 『トリップ』

(Ki/oon Records)
3,059円[税込]