honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

AKLO “THE PACKAGE”

国内音楽シーンに変革をもたらす、ニュー・ラップスターが登場。

12 9/19 UP

photo: Kentaro Matsumoto text: yk

インターネット上で発表したミックステープ "A DAY ON THE WAY" や "2.0"が多方面で絶賛され、
各メディアで数々の賞を受賞したバイリンガル・ラッパーAKLO。
遂に完成させた待望のデビューアルバム"THE PACKAGE"ではiTunes総合チャート1位を獲得する快挙を成し遂げるなど、
現在の国内音楽シーンに変革をもたらすニュー・ラップスターが登場。

 

──
AKLOさんのバックグラウンド、ラッパーとしてのキャリアのスタートについて教えてください。
「東京で生まれて6ヶ月でメキシコに移住して、そこで育ちました。それから日本に戻ってきて、高校ではアメリカ、その後はさらにまた日本に戻ってきてという感じで、引っ越しを繰り返してきました。アメリカにいる時にヒップホップに出会って、大学生の時に自分でラップするようになり、空というギタリストと"AKLOと空"というラップ×アコースティックギターのユニットを始めたんです。2009年には"AKLOと空"としてアルバムを一枚リリースしました」
──
当時アメリカで聴いていたのはどんなアーティストでしたか?
「No Limit Soldiersというゴリゴリのサウスラップがすごく流行っていて、僕もそのメンバーのMASTER Pというラッパーにハマっていました。当時、同じ時期にNASのILLMATICなんかもリリースされて、また別のところでブレイクしていたんですが、僕はそっちにはいかずサウス系を聴いていましたね」

──
アメリカから日本に戻ってきて、日本のヒップホップシーンに入り込むきっかけはなんでしたか?
「ずっと日本のシーンに入り込めなかったんですよ。"AKLOと空"でアルバムを出した時もシーンからは全く相手にされず、色物ラップのような扱いを受けていて、そこにすごくフラストレーションを感じていましたね。それでも何とか自分のラップを認めさせたかったので、フリーのミックステープをインターネット上で発表して、自分の存在を知らしめようという作戦を思いついたんです」
──
今でこそ多くのラッパーが自身のラップを披露するために、ミックステープという手法が主流になってきていますが、当時としてはかなり珍しかったのではないですか?
「アメリカでは既に流行りはじめていた手法だったので、USのヒップホップを常に追いかけていた自分にとってはナチュラルな行動だったんです。でも日本ではそういう作品の発表の仕方をしている人がほとんどいなかったので、それが話題になって注目されたんです。最先端なことをやって売れようとしているやつがいるという見方をされたみたいでしたが、僕の中では特に新しいことをやっているつもりはなかったんですよ」
──
受け入れられ方はどうあれ、結果的にミックステープがAKLOさんの知名度を一気に上げるきっかけになったのですね。
「"A DAY ON THE WAY"というタイトルで一本目を発表した時に、シーンに受け入れられたという実感がありました。それがすごく嬉しくて、自分のラップへの自信は勘違いじゃなかったと思えたんです。シーンの中でもコアなアーティストの人達がフックアップしてくれたので、それが原動力にもなって、それから3ヶ月くらいの短いスパンで次の"2.0"を発表して、より広い範囲の人達にも名前が知れ渡ることになったんだと思います」

 

──
それがさらに今回のONE YEAR WAR MUSICからのリリースに繋がるという。
「今回のアルバム"THE PACKAGE"でプロデューサーを努めてくれたBACHLOGIC君やJIGG君も僕のミックステープを聴いていてくれたし、他にもSIMON君みたいなプレーヤーの人からもフィーチャリングオファーをもらえたきっかけにもなりましたね。フィーチャリングの仕事が増えて、そのレベルが上がれば上がるほどJIGG君達プロデューサーとのやり取りも増えてくるんです。そんな流れの中で、今回のリリースの話をもらったんです」
──
お話を伺っていると、AKLOさんはご自身のラップに絶対の自信を持ちながらも、どこか戦略的にキャリアを推し進めてこられたように感じるのですが、そういった意識はありましたか?
「"A DAY ON THE WAY"の時は、外部のものを受け入れないシーンの懐の小ささに対するフラストレーションがメインにあって、”2.0”では初めてファンができて、受け入れられたことへの喜びが根底にあったので、戦略的というよりもその時の感情で動いて、ここまできたという感じですね。それ以降は自分の想像以上の評価を得たことで、オフィシャルの作品に対するシーンの期待感もすごく感じていたし、それをプレッシャーに感じることはありました。それでも日本のヒップホップの最高峰を目指す作品を作るという気持ちで、今回のアルバムを完成させたわけです」
──
今作「THE PACKAGE」が実質AKLOさんのデビューアルバムになるわけですが、制作する上で過去のミックステープとは異なる意識はありましたか?
「ミックステープではトラックを全てジャックしているので、カニエ・ウエストや世界のトップ・プロデューサーのクオリティの高いトラックが使い放題なんですよ。だから国内でオフィシャルの作品としてリリースする時に、ミックステープよりクオリティが低くなる可能性が高かったんです。でもそれでは意味がないので、自分のラップやリリックはもちろん、サウンド面でもミックステープ以上のクオリティが絶対条件という意識がありましたね」