AKLO “THE PACKAGE”
国内音楽シーンに変革をもたらす、ニュー・ラップスターが登場。
12 9/19 UP
photo: Kentaro Matsumoto text: yk
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- トラックのクオリティという意味では、ONE YEAR WAR MUSICは他に無いほど恵まれた環境ですよね。
- 「今の日本で作られるメイン・ストリームのヒップホップでは、ONE YEAR WAR以上のクオリティはないと思っています。最高の条件が揃った理想の環境だったからこそ、自分のパートであるラップにはこれまでに感じたことのないようなプレッシャーもありました」
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- 制作する上でアルバム全体のコンセプトはありましたか?
- 「最初は探り探り始まったんですけど、途中から自分の中では”かっこ良さ”を追求したアルバムにしようと思いました。今はちょいダサが逆にかっこいいとか色々あるけど、今回はそういうのを全部取っ払って、純粋にかっこ良いものの説得力を突き詰めてみようと。聴いた人に、そのかっこ良さを強さ、エネルギーとして感じてもらえるようなアルバムにしたかったんです。あと、制作中はグラミー賞を獲るくらいのヴァイブスで作るという意味で、グラミー・テンションという言葉をよく使っていましたね(笑)」
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- バイリンガルでありながら、リリックはほぼ日本語で統一されていますね。
- 「初めは英語でラップし始めたけど、今は日本人が聴いて内容が分かる曲を作りたいと思っているんです。USのヒップホップが売れている理由って、音楽そのもの以上に、エンターテイメントとしての面白味があるからだと思うんです。例えばJAY-Zは色んな都市にホテルを建てようとしているリアル・モノポリーのような人で、ラップする必要もないくらお金も持っているけど、そんな人がお金儲けについてラップしている面白さです。カニエにしてもそうだし、そういう人達の考えがラップで聴けるというのが面白い部分だと思うので、内容が分かってナンボなんですよ」
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- "THE PACKAGE"という作品、またONE YEAR WAR MUSICというレーベルからは、今の日本のポップチャートをひっくり返すような勢いを感じるのですが、AKLOさん自身にそういった意識はありますか?
- 「自分は海外に長く住んでいたこともあって、日本の良いところや悪いところが客観的に見られると思うんですが、日本の音楽に関してはアイドルやK-POPばかりが流行っている現状が世界的に見てあまりにもダサイと感じるんです。その一番の理由が、歌っている本人に意思がないこと。今は、どこかのおじさんが書いた歌詞を歌っているアイドルの曲とか、そもそも日本語も喋れないような人が歌う日本語の曲なんかが流行っているわけですよね。歌っているアーティストに何の思い入れもない曲を皆で聴いているという現状はおかしいですよ。その点、ラップは自分の言いたいことを言うという意味で、何の操作も受けない究極のスタイルだと思うんです。自分の中でも、この現状を変えたいという意識は常にありますね」
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- アルバムがリリースされて、今おっしゃったようなことが本当に実現できるのではないかと感じるほど、多くの賞賛の声が挙がっているようですね。
- 「iTunesの総合チャートで1位を取った日があって、それはさすがに自分達も嬉しかったですね。今回でひっくり返るかどうかは分からないけど、僕だけじゃなく、シーン全体に今後の可能性を感じさせる象徴的な結果だったと思います。ヒップホップは日本でももっと受け入れられるべき音楽だし、これからも自分にできることは何でもやっていきたいと思っています」