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THINK PIECE

THA BLUE HERB

遂に沈黙を破る、TBH5年ぶりのニューアルバム。

12 4/27 UP

photo: Kentaro Matsumoto text: yk

激動の2011年をあえて沈黙で貫いた、THA BLUE HERBの5年振りとなるニューアルバムが遂に完成。MCのILL-BOSSTINOとビートメーカーO.N.Oの二人だけで作り上げた、音と言葉の世界。様々な価値観がうずまく現代において、TBHが投げかけるメッセージとは。

THA BLUE HERB

ラッパーILL-BOSSTINO、トラックメイカーO.N.O、ライブDJ DJ DYEの3人からなる一個小隊。1997年札幌で結成。以後も札幌を拠点に自ら運営するレーベルからリリースを重ねてきた。'98年に1st ALBUM「STILLING, STILL DREAMING」、2002年に2nd ALBUM「SELL OUR SOUL」を、'07年に3rd ALBUM「LIFE STORY」を発表。巨大フェスから真夜中のクラブまで、47都道府県に渡り繰り広げられたライブでは、1MC1DJの極限に挑む音と言葉のぶつかり合いから発する情熱が、各地の音楽好きを解放している。
http://www.tbhr.co.jp/


 

──
前作「LIFE STORY」から実に5年振りのアルバムリリースとなりますが、お二人にとってこの5年間はどういったものでしたか?
O.N.O(以下: O )
「結婚したり子供ができたり、プライベートな面でもすごく変化があったよ。ソロでのライブ活動もそれまで以上に精力的にやるようになったんだけど、それはTHA BLUE HERB(以下:TBH)が動き出すための準備だったと思うね」
ILL-BOSSTINO(以下: B )
「俺もずっとライブばかりやっていたけど、このアルバムに向けての準備だったのかもしれないな」

──
特に昨年は本当にたくさんのことが起こって、ファンとしてはTBHの音と言葉を心待ちにしていたと思うのですが、そこをあえて沈黙で貫いたのは何故でしょうか?
B
「簡単には答えが出せないほど大変なことが起こってしまったから、中途半端なものをリリースしたくなかったんだ。自分自身の中で考えていることをしっかりとまとめてから納得するまで作り込まないと、曖昧なままで人前に出ていっても聴いてくれる人に響かないからね。ラップはメッセージだから、それを投げかける自分達の大元の思想や考え方をしっかりと形作らないと、出ていく意味が無いと思ったんだ」
──
震災があってから、今回のアルバム制作がスタートしたのでしょうか?
B
「本格的にはね。それ以前からそれぞれトラックを作ったり、リリックを書いたりはしていたけど」
──
お二人の間ではどういったやりとりで制作を進めていかれたのですか?
O
「始めはそれぞれで作っていて、それからお互いの音とリリックを合わせながら組み立てていく感じだね」
B
「基本的にはそうだね。そこから作り替えたり、また始めに戻って個々の作業をしたりの繰り返しだったかな」

 

──
お互いが出してきたものを見たり聞いたりして、気付いた変化はありましたか?
O
「BOSSはリリックだけでは計れないから、それを見ただけで次はこういう感じなんだ、という風にはいかないかな。録る時のフローや勢いを見るまではね」
B
「まずTBHをスタートさせた時に二人で話したことが、単純にかっこいい曲を作ろうということだったんだけど、O.N.Oの音楽的な広がりというのはこの15年間で常に感じていたね。今回に関してもその音楽的な成熟がすごく感じられたよ。ただのループではなく、俺がラップを乗せる前の段階から既に音楽として成立しているという感じで、送られてきた一曲一曲を聴く度に驚かされたね」

──
制作を始める上でインスピレーションとなったもの、またテーマとなったものは何でしたか?
O
「俺の場合はそれを探る作業というのが1年くらいあるんだけど、今回はトラック一曲ずつ丁寧に流れを作って、ラップやリスナーを導くという作業に集中したかな。インスピレーションという意味では、自分で作り上げた一曲が次の曲の糧になっていった感じだね」
B
「俺が作るのは言葉であってメッセージだから、自分が何を言いたいのか、何を伝えたいのかということを深く考えなくてはいけない。だから映画や音楽から影響を受けてというよりは、3.11以降の新聞やニュース、この国や目の前の街の雰囲気など、自分が生活していく上で感じたリアルなものがインスピレーションになったね」
──
「TOTAL」というアルバムタイトルにはどのような意味合いがあるのでしょうか?
B
「今回はゲストも招かず、ブラフやギミックも一切使わないで完全に二人だけで作詞作曲、完結させたから、純粋に音と言葉だけのTOTAL。リリックは俺の、音はO.N.OのTOTALだから、このアルバムで今のTBHの全てを出し切ったという意味だね。今まで出してきたアルバムもその時々の気持ちが込められていて自分ではどれも比較ができないくらい気に入っているけど、それら全てが今回のアルバムのためにあったと思えるくらいの気持ちで作ったから」