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THINK PIECE

DAFT PUNK
"RANDOM ACCESS MEMORIES"

遂に発売開始! 全世界待望のDAFT PUNK 4thアルバム。

13 5/21 UP

photo: Shoichi Kajino

ダンスミュージック・シーンを飛び越えて、
今や音楽界の頂点に君臨するスーパースターDAFT PUNKの最新作が遂に発売。
ナイル・ロジャース、ジョルジオ・モロダー、ファレル・ウィリアムスなど、
レジェンド級のアーティスト達を多数ゲストに迎えたことでも話題を呼んでいる今作を
DAFT PUNKのトーマ・バンガルテル自らが語る。

 

──
オリジナルとしては実に8年ぶりのニュー・アルバムとなりますが、制作に要した8年はお二人にとってどんなものでしたか?
「僕たちは自分たちがリリースしたいと思う音楽に、常に実験と追求の時間をかけてきたんだ。今回は特に、後にシーンに様々な影響を与えることになったこれまでの3 枚作をふまえて、というところもあったかな。その間、2006年と2007年にライヴ・ツアーを行って、ディズニーの映画“トロン: レガシー”に書き下ろした音楽は制作に1年とちょっとかかったしね。それを除いても、今回のアルバムにはフルタイム換算で2〜3年くらいかかったんだよ。4枚目のアルバムを完成させられるか否か、時間をかけながらやろうという考え方だったから、制作に入ったときはただスタジオに入って実験した音のコレクションしかない状態だったんだ」

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アルバム・タイトル“ランダム・アクセス・メモリーズ”は、RAM(半導体素子を利用した記憶装置) の複数形ですが、インターネットの発展により、地域性、時代性がより希薄にフラットなり、どこからでもライブラリの抜き出しが可能になっている現代のシーンに対して、とても示唆的なタイトルだと感じました。本作を制作するにあたり、そうした時代性をどのようにアルバムに反映されたのでしょう?
「僕たちは以前からロボットの知識を深めてきて、ロボットは“テクノロジー”と“人間”の関係性を表すメタファーに匹敵するものだと気づいたんだ。20 年前、僕たちが音楽を作り始めた頃と現代では大きな違いがある。コンピューターの存在が強くなり、人工知能とまではいかないけど、インターネットの世界が突如人類の延長線上になったようにさえ感じるよ。テクノロジーという人工産物やそこに付随する情報などが、知能の延長線そのものになりつつあるんだ。人間の脳とハード・ドライブの類似点、相違点を例にとっても、ハード・ドライブは保存するのが実に簡単だよね。だから、“メモリー”と“メモリーズ”の言葉にも意味を持たせた。“メモリー”は“データ/情報”であり、“メモリーズ”は同じ言葉でも“感情”がこもる。“感情”や“愛情”がある。同じデータと言っても人間の視点・脳には“感情”が入る。この“感情”という本質が、ロボットと人間を分ける違いであるという理解を表現したかったんだ。極限まで設計された人工知能が感情という次元を持てるのか、とかね。“ランダム・アクセス・メモリーズ”のタイトルに含まれる“ランダム”という言葉には、カオスの意味合いも込められているんだ。

 

今回のアルバム一つ一つの方向性を形成する手助けとなったこのカオティックで膨大なプロセスが示すもの、それは一つの音楽的アイディアからもう一つのアイディアへとジャンプするようなもの。もしかしたら僕たちのことをシュルレアリストと感じるかもしれないけど、人間の思考過程と同じ様なものだよ。ある考えから全く違うことに考えが飛ぶこととかね。例えば友達同士でディナーをしていたとして、一つの話題が出るよね、そしてその話題が次の話題へと移る。その時に起こる思いつきという本質は、過去に経験した感情、思い出(メモリーズ)、会話からランダムにアクセスされるもの……そんな要素も音楽のプレゼンテーションに少し含ませたコンセプトなんだ」
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あなた達は今作のアートワークで初めてバンド・ロゴのジャケットではなく、自身を反映させたものを採用しましたが、その理由はなんでしょうか? 2人のヘルメットが合体して1つになっていることには何か特別な意味が込められているのでしょうか?
「そうだね、2つの意味合いがあると思う。過去13〜14年の間、自分たちが作り上げたロボットのイメージが広く浸透した。一方で、ロゴはいわゆるアイコニックなものになった。今やロボットはさらに生活の一部となり、何故かロゴよりロボットのイメージの方が“ダフト・パンク”を物語っていると感じるんだ。言葉のないコミュニケーションというアイディアも好きだしね。ロゴや名前はフランス語、英語、日本語で変わるかもしれないけど、合体ヘルメットはロゴに使われる“D, A, F, T”のような字体とは違ってもっと抽象的な本質を示すから。そして、この融合した合体ヘルメットには、何かの中身を見ようと真ん中をスパッと切るみたいに縦真二つに線が入っていて、“まだ開いていないけど、制作プロセスの中で極めて深い中枢まで何かをやってみよう”という意味合いも込めたんだ」
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新作を一言で表すとしたら、どう表現しますか?
「たぶん“音楽性”(ミュージカリティ)だ。音楽における現代の“テクノロジー”と言うと、過去30 年間で進化してきたレコーディング・フォーマットや、専門的な楽器の発達などを意味するけど、どんなに技術が進化しても、音楽性(ミュージカリティ)自体を向上させてはこなかった。まるでテクノロジーが真の音楽性の邪魔をしているかの様にね。外観的な小型化技術や利便性の追求が進化して、もちろん素晴らしい音楽は今も沢山あるけれど、一つの時代をとってみると確実に音楽性の割合が顕著で重要視されていた時代があるよね。このアルバムではその音楽性にこだわりたかったんだ」