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THINK PIECE

Michael Costiff

ロンドン・カルチャーの伝説の人物
マイケル・コスティフの刺激的なメモワール

13 5/28 UP

photo: Yayoi Arimoto interview: Misho Matsue

オープン1周年を迎えたDOVER STREET MARKET GINZAの4階、
「Michael Costiff's World Archive」のオーナーであるマイケル・コスティフが来日。
1970~90年代のロンドンのファッション、カルチャーシーンのキーパーソンである彼が
30年に渡って綴った日記から構成した回想録『Michael & Gerlinde's World: Pages from a Diary』が出版され、
DSMGにてサイン会が開催されたのだ。本書はノスタルジックな回想録とは全く異なり、
ファッション、音楽、クラブカルチャー……、刺激的なロンドンの貴重な記録でもある。

 

MICHAEL COSTIFF(マイケル・コスティフ)

写真家、ビデオディレクターなどとして活躍しながら、1989年には伝説のクラブイベント、Kinky Gerlinkyをオーガナイズ。90年代にはウエストエンドに世界中の雑貨を集めたセレクトショップWorldを、そして2004年にはロンドンのドーバー ストリート マーケットのオープンにあたりWorld Archiveをオープンし、現在は北京、銀座のDSMにもコーナーを持つ。

 

──
ファッションデザイナー、ショップオーナー、クラブオーガナイザー、インテリアデザイナー、写真家、映像ディレクター……、多くの肩書きで語られてきましたが、現在はどのような活動をしているのでしょうか。
「まず、この2年はとにかくこの本に集中していたね。それからロンドン、東京、北京のDOVER STREET MARKETのWorld Archiveのオーナーとバイヤーをしているよ」
──
『Michael & Gerlinde's World: Pages from a Diary』はタイトル通り、あなたと奥様・ガリンダの旅や思い出をスクラップした日記を元に作られたということですが、検索では辿り着けないであろう、当時のロンドンの熱気を感じました。
「それはよかった!まだ本が刷り上がったばかりだし、内容もとても個人的なものだから、こうやって多くの人の目に触れることに対してナーバスだったんだ(笑)。ロンドンでもまだ近しい友人にしか見せていないんだけれど、多くの内容がぎゅっと詰め込まれていることもあって、それぞれが違った箇所に興味を持ってくれるのが面白いね。それに、とても美しい本に仕上がったのがとてもうれしいよ」
──
Kinky Gerlinkyという伝説のクラブイベントをオーガナイズされていたそうで、ボーイ・ジョージやリー・バウリーをはじめ、80年代のロンドンのクラブカルチャーには欠かせない面々のスナップも多く見られます。ほとんどの写真はあなたが撮影されたのですよね。コラージュのページもたくさんありますが、これらは当時の日記のままなのでしょうか。
「そうだね。日記の中の写真にフォーカスしたページもあれば、コラージュをそのままスキャンしたページもあるよ」

左:マイケルがオーナーを務める「Worldarchive (ワールドアーカイブ)」のDM。右;現在、ドーバーストリートマーケットにて発売されている著作『Michael & Gerlinde's World: Pages from a Diary』の表紙。表紙のデザインに使用されたのは、愛妻ガリンダが着ていたという思い出のスパンコールのドレス。

 

──
さて、あなたにお話を聞くにあたり、避けては通れない3人の素敵な女性がいると思います。ヴィヴィアン・ウエストウッド、川久保玲さん、そして奥様のガリンダ。彼女たちについて教えていただけますか。
「いいとも。まずヴィヴィアンについて。彼女とマルコム・マクラーレンの最初のショップ、Let it Rockはチェルシーのキングス・ロードにあって、僕とガリンダはすぐそばに住んでいたから、オープンした頃からよく知っているんだ。ヴィヴィアンがデザインした服を毎シーズン、25年に渡って二人で本当によく買ったよ。数えてみたら全部で360着はあったね。でも収集していたというつもりはなくて、あくまで自分たちで着るため、ショッピングとしてね。1994年にガリンダが亡くなった後は、遺された服をどうしたらいいか途方に暮れてしまい、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)に寄贈したんだ。V&Aはいま、ヴィヴィアン・ウエストウッドがデザインした洋服を最も多く所蔵する博物館になっているそうだよ」

左:ロンドン、NYのアート、クラブシーンを代表するアーティストのひとりであるリー・バワリー(左)とガリンダ(右)のツーショット。右;マイケルが撮影したスージー・アンド・ザ・バンシーズのアルバム『A Kiss in The Dreamhouse』ジャケット写真。

──
そうだったんですね。以前、V&Aでヴィヴィアンのアーカイヴを見た気がするのですが、もしかしたらガリンダのものだったのかもしれませんね。あなたはヴィヴィアンやマルコムより少し歳上ですが、彼らはあなたの目にはどのように映っていたのでしょうか。
「スキャンダルもたくさんあったけれど、何かしてやろうという情熱を持った面白いカップルだと思ったね。でも彼らに限らず、当時のロンドンは若者たちの熱気で溢れかえっていた。そういう時代だったんだ。この本には、今や世界的に有名な友人もたくさん登場するけれど、彼らが有名だから知り合ったわけじゃないんだよ。次はええと、先にガリンダのことから話していいかな?」
──
もちろんです。
「僕がイギリスの小さな村から、そしてガリンダがドイツからロンドンにやってきたのはだいたい同じ時期なんだけど、その後すぐに恋に落ちたんだ。それからは25年間ほぼずっと一緒にいたよ。1994年までは幸せに過ごしていたけれど、ある日突然、彼女は脳卒中で倒れ、たった5分で永遠にいなくなってしまった。本当に恐ろしい出来事で、これは僕の人生における唯一の悲しい物語だ。そうやって沈み込んでいた僕にレイ(川久保玲)はDOVER STREET MARKETでWorldを復活させないか、と声をかけてくれ、悲しみから抜け出すきっかけを与えてくれた。彼女が僕を救ってくれたとも言えるね」