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THINK PIECE

Sigur Rós "Kveikur"

メンバー脱退を経て新体制で挑む、Sigur Rósの最新作。

13 6/5 UP

photo: Naoki Ishizaka text: yk

アイスランドを代表する唯一無二のバンド、Sigur Rós。
商業的な成功を音楽の力だけで成し遂げた稀有な存在として世界中から絶大な支持を得ており、
その神秘的で壮大なサウンドは、リスナーはもちろん、
Radioheadのトム・ヨークをはじめアーティストにもファンが多い。
前作「Valtari」から11ヶ月という短いスパンでリリースされる今作「Kveikur」は、
これまで作品では類を見ないほどにエモーショナルなサウンドを展開。
メンバー脱退を経て新たな体制で制作された最新作を、フロントマンのJonsiが語る。

──
タイトルとなっている「Kveikur」にはどのような意味があるのでしょうか?
「”芯”という意味なのですが、ロウソクの芯というよりは爆弾の導火線という意味でつけました。今作は制作するにあたって、新たな衝動や興奮、そしてここから何かをスパークさせるという気持ちがあったので、その感覚に最も適した単語だと思ったのです」
──
前作の「Valtari」から非常に短いスパンでのリリースとなりますが、かなり順調に制作が進んでいたのですか?
「実は今作の制作は2年前からスタートしていたのですが、途中で一時中断して、先に”Valtari”を完成させてしまったんです。その後に改めて”Kveikur”の制作に入ったので、作業期間としてはそれほど短い作品ではないんですよ」
──
“Valtari”と”Kveikur”は両極と言っても過言ではないほど相反する作品だと思います。穏やかで美しいサウンドスケープが印象的な前作に対し、今作ではビートが際立ったエモーショナルな作風となっていますね。
「2つの作品を並行して制作していた期間もあるので、無意識の内に正反対のものを求めていたのかもしれません。おっしゃったように、一つはドラムレスのアンビエントなアルバム、そしてもう一つはエモーショナルなバンドサウンドになっています。とはいえ、どちらもSigur Rósのサウンドであり、それが僕らの世界観なのだと思います」
──
過去にはプロデューサーを起用した作品もありましたが、今回は全てバンドメンバーのみで完結しているのですか?
「ストリングスとホーンセクションに関しては外部のミュージシャンにお願いしましたが、それ以外はプロデュースも含めて全て自分たちで完成させました。今回は特に、メンバーが一人脱退してからの初めてのアルバムだったので、どうしても自分たちだけで完結させたかったのです」
──
Sigur Rósの音楽は非常に様々な要素が複雑に絡み合って完成していると思うのですが、ゼロの状態からどのように制作をスタートしていくのでしょうか?
「ビートから始めるものもあればPC上のプラグインシンセで始めるものあるように、作品によって異なります。しかし、先ほども言ったように今作からはこれまでキーボードをプレイしていたメンバーが脱退したので、余計に今までとは違う方法で制作するように意識しました。欠けてしまったものを補うように、随所で新たな実験や挑戦をしているんです」