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THINK PIECE

"to be" is to create

クリエイティビティでつながる
全く新しいWebプラットフォーム

13 6/19 UP

photo: Chikashi Suzuki interview: Misho Matsue

この秋、NYで新たなWebプラットフォームが誕生する。名前は「to be」。
web上に作成する「フィールド」と呼ばれるページを、いわばキャンバスに見立て、
写真・映像・音楽・ドローイングなどを組み合わせて自分だけの作品を創作、他のユーザーと共有もできるというもの。
このサービスには公式コントリビューターとして、写真家のマーク・ボスウィックをはじめ、
世界各国のクリエイターが開発段階から参加しているのも特徴だ。
とはいえ、なんとも謎の多いこの「to be」の未知の可能性を探るべく、
プレビューイベントのため来日中のマーク・ボスウィックと
「to be」の開発ディレクションを担当するニック・デンジャーフィールドを訪ねた。

 

Mark Borthwick (マーク・ボスウィック)

「to be」には公式コントリビューターとして参加。
1966年イギリス生まれ。現在はNYを拠点に活動中。90年代より雑誌やファッション・フォトの世界で活躍した後、
現在は写真だけでなく、映像、音楽や料理など表現領域にとらわれずに活動している。

Nick Dangerfield (ニック・デンジャーフィールド)

「to be」では開発の全体ディレクションを担当。
企業家、製品開発者、音楽/出版/デザイン業務を行う会社、Parteの創立者でもある。
Parteでは、ピンバッジ型の mp3プレイヤー「Playbutton」を開発し、
Lady Gaga、ルイヴィトン、オープニングセレモニー、The xxなど数多くのクライアントを持つ。

 

──
web上には既に様々なツールやプラットフォームがありますが、今回「to be」を立ち上げようと思ったきっかけは何でしょうか。
Nick Dangerfield(以下: N )
「クリエイティビティを通じて誰かに思いを伝える際、容易に表現できるスペースをweb上に作りたかったのです。手描きのドローイングをプレゼントすること、手料理をふるまうこと、心をこめて手紙を書くこと、これらはどれも誰かのことを思う素晴らしいひとときです。ところがオンラインではそのようなスペースは十分ではなかったので、表現のための白紙の『フィールド』と操作しやすいツールを提供しようと考えました」
──
ローンチにあたり、さまざまなアーティストが公式コントリビューターとして名を連ねているのも気になります。特に、今回一緒に来日されたマークは写真・映像・ドローイング・音楽など多岐に渡る表現活動で知られており、「to be」とも相性が良さそうですね。
N
「もちろんマークのことは以前から尊敬していましたし、過去には別のプロジェクトで一緒に仕事をしたこともあります。マークの活動と『to be』のコンセプトの一致は偶然なのですが、ぜひ彼にも参加してもらえたらと思い、プロジェクトの初期の段階から意見を聞いていたのです」

──
それではマークにお尋ねします。世界中のファンが「to be」上でもあなたの作品を見られるのを楽しみにしていると思いますが、あなたは関わるプロジェクトについては思慮深く慎重に選んでいらっしゃる印象です。「to be」のどんなところに魅力を感じたのでしょうか。
Mark Borthwick(以下: M )
「今回参加した理由として、まずは我々の友情が根底にあります。それから、現在の世の中ではキーボードでタイプさえすれば直ちに知りたい情報にアクセスでき、全ての決定はすでに用意されているも同然です。若者たちは自分の意見を持つのが困難になってきていると感じています。一方、私はいつも“まだわからないこと”に惹かれてきました。『to be』にアクセスすると、最初の『フィールド』には何もありませんし、その先にどんな出会いがあるのかもわかりません。行き先を決めてしまうキーボードではなくマウスやタッチパッドを操作しながら、ゴールのない旅に出ることができるのです。目を閉じて歩くと自分がどこへ行くのかわからないように。そんな可能性を感じるサービスだと思いました」
──
あなたは表現者として、他の人々と場や感情をシェアすることを重視しているように思うのですが、「to be」においてもそういったコミュニケーションを意識していますか。

 

M
「『to be』は孤独になりがちなコンピュータの世界において、人々と繋がることのできる可能性を持った、拡張された夢のような感じでしょうか。他のユーザーとのコラボレーションで生まれるコラージュに完成形はないし、ルールや答えもありません。実はいま、答えがないことこそがとても重要だと感じています。どんな服を着てどんな音楽を聴くべきか、そんな情報ばかりが氾濫している中で、私たちは若い世代に答えばかりを求めず、本当は何をしたいのか疑問を持つきっかけを与えなくてはなりませんから。そういえば今回、日本に来て印象深かったことがあります。3.11以降の“新しい”世代は、自分たちが口にするものがどこから来ているのかを非常に気にしているように思えました。日本語は読めないし話せませんが、感じるのです。きっと、若者たちが農業やオーガニックな生活にこれほど関心を持ったことはなかったのではないでしょうか。こういった感覚はかつて人間が本質的に持ち合わせていたのだとは思いますが、ある意味では災害が当たり前であったことに疑問を持ち、見失いかけたものを呼び覚ますきっかけになったのかもしれませんね」

──
これからも公式コントリビューターの作品は増えていくと思いますが、「to be」は誰でも利用できることが特徴に挙げられると思います。開発チームとして、一般ユーザーにはどのようにアプローチしていくのでしょうか。
N
「私自身、ビジュアルアーティストではありませんが、『フィールド』制作をとても楽しんでいますよ。『to be』はアーティストのために作られたのではなく、誰もが表現できる場として開発されています。昔でいえばミックステープ、あるいはコンピレーションCDなどは、アーティストやDJではなくても作ることができますよね。操作感をできるだけシンプルにし、多くの人が親しめることを目指しました。こういったツールを使い慣れない人でも、実際に手を動かし感覚をつかんでもらえたら、オリジナルのフィールドを作ることができるはずです。ライブラリにはサンプル用の画像やGIFアニメーションも用意してあるので、いろいろ試してみてほしいですね」