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THINK PIECE

She Talks Silence “When it Comes”

ポストパンク/オルタナティブロックを昇華した、STSのニューアルバム。

14 7/10 UP

photo: Ai Ezaki
interview: Tetsuya Suzuki

ギター/ヴォーカルを担当する山口美波とドラマーの河合亜由美による2ピースバンドShe Talks Silence。
そのルックスと女性2人組ということから、ガールズポップバンドとして語られがちだが、その音楽は彼女達の
怒りやフラストレーションといったネガティブな感情が原動力となっており、80〜90年代のポストパンクや
オルタナティブロックのバンド達が持っていた、ヒリヒリとした緊張感に満ちている。
そして、今回12インチのアナログフォーマットでリリースされる「When it Comes」には、彼女達のバンドとしての
ネクストステージへの可能性を大いに感じさせる意欲作となっている。

 

──
今回リリースされた「When it Comes」の収録曲は全て未発表の音源なのですか?
山口 (以下:Y)
「ライブ会場だけで販売したカセットテープやCD-Rに入っている曲もあるのですが、今回のようにオフィシャルな形で発表されるのは初めてですね」
──
過去の楽曲も今回のリリースに合わせて改めてミックスしたのですか?
Y
「ミックスを変えたものもありますし、レコーディング自体をやり直したものもあるので、ほぼ新作といった感じです。『Walk Away』や『Long Ways』なんかは一年くらい前からライブでやっていたのですが、お客さんのリアクションがよかったので、今回のアルバムに収録することにしました」

──
She Talks Silenceの活動はライブが中心になっていますが、お二人の中ではライブのために曲作りをしているという感覚なのでしょうか?
Y
「どちらかというと楽曲の制作が先立ちますね。作曲をして、レコーディングをして、作品にすることの方が大事です。今はライブをやるために制作をする方も多いかもしれませんが、私たちの中ではその逆で、ライブはあくまで作ったものを発表する場所、自分たちの演奏というかたちで、作品を聴いてもらう機会を得る場所だと思っています」
──
制作自体はどのような流れで行っているのですか?
Y
「デモと呼べるほどのものでもないような、アイディアの断片を日頃から作り溜めていて、その中から形になったものを河合(亜由美)に送ります。デモとはいえ、その時点で納得した形になっていないと、自分以外の人間に聴かせられないんです」

 

河合 (以下:K)
「そこから二人で、曲のイメージに合う楽器の音作りをしたり、場合によっては信頼できる友人の意見も貰ったりしながら完成させるという流れですね」
──
事務的に曲作りを始めるのではなく、何かしらのインスピレーションを受けて、初めて制作に入られるのでしょうか?
Y
「最近気付いたことなのですが、昔から本屋さんでファッション雑誌とかを立ち読みしているとモヤッとした気持ちになって、そうすると『帰って曲を作ろう』という気分になるんです(笑)」
──
ヴィジュアルによって音楽の創作意欲が刺激されるということですか?
Y
「いや、華やかなファッション雑誌の世界と自分自身に相容れない部分を感じて、その違和感がエネルギーになっているんだと思います。洋服とか可愛いと思うし、雑誌も媒体として好きなはずなんですが、なぜかモヤモヤして、『あぁ、もう家に帰って曲を作ろう』という気分になります(笑)。まぶしさに耐えられなくて、日陰に入りたくなるというか(笑)」
──
山口さんの中ではそこで感じる世の中に対する違和感や、自分とのギャップといったものが、自己表現をする上でのインスピレーションになっているのですね。
K
「リベンジだよね(笑)。二人とも常に何かしらにフラストレーションを感じてますね。『なんだかなぁ!』って(笑)」
Y
「でもそのフラストレーションで外に対して攻撃的になるわけではなく、作ったもので表現している感じです。作ることで発散しているのかもしれません」
──
とはいえ、最近は世の中に対するフラストレーションを持って作品を作るというスタイルのバンドは少ないですよね。
K
「そうですね。でも私たちの場合は、スタイルとかそういうかっこいいものでもないと思います。もっと生々しいかも(笑)」
Y
「女二人だし、いわゆるロックな格好をしているわけでもないので、ガールズポップなバンドだと誤解されることが多いんです。そういう見られ方に対して違和感はありますし、フラストレーションの一つになっています。だから最終的に、そういう現状を作ってしまった自分たちに対して怒りが湧くんですけど(笑)」