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THINK PIECE

Ben Eine

ロンドンのストリートアートの立役者
ベン・アインが初の立体作品を東京にて発表

15 1/20 UP

photo: Kentaro Matsumoto
interview & text: Misho Matsue

トレードマークである「シャッターフォント」をはじめ、アルファベットをモチーフにしたワードアートで
世界的に知られるロンドン出身のストリートアーティスト、ベン・アイン。昨年、アインはアート作品を3次元の形で
生み出す企業、FRAGILE VENTURESとのコラボレーションにより、独特のタイポグラフィーを取り入れた
リミテッドエディションの3次元のキューブ“ Objets D’Art ”を発表。12月に東京・MEGUMI OGITA GALLERYにて
展覧会「URBAN[E] 」が開催され、作家のベン・アインも来日した。

 

──
専門的にタイポグラフィやデザインを学んだわけではないようですが、造形のバランスや持ち味でもあるカラーコンビネーションなどのテクニックやスキルはどのように身に付けたのでしょうか?
「何より失敗を重ねたことと言えるかな。ストリートでグラフィティを始めた頃は自分が何をやっているのかよくわかっていなかったから(笑)。当時から他の誰かが描いていないものを描きたいとは思っていて、自分が興味のあることを追求し、実験と失敗を繰り返しながら少しずつ成長できたんだと思う。時には捕まったりもしたけれど、グラフィティ仲間と自分たちならではの表現を磨いていくうちに、ギャラリーでショーを開くこともできるようになってきた。そういえば、数年前MOCA(ロサンゼルス現代美術館)別館でのグループ展「Art in the Street」では、顔を合わせた参加アーティストは全員前科持ちだったよ(笑)。色使いについては、自然に身についていたのかもしれない」

MEGUMI OGITA GALLERYでの展覧会準備の様子。

──
2010年には、イギリスのキャメロン首相からオバマ大統領へのプレゼントとしてあなたの作品が贈られましたが、これをきっかけに周りの環境も変化したのではないかと思います。その後、あなたの人生には何がもたらされたのでしょうか?
「あの一件以来、確かに人生は変わったね。妻にも離婚されたし(笑)。それはともかく、それまではイギリス国内ではアーティストとしてそこそこ知られた存在ではあったけれど、他の国ではペイントをしながらプロモーションをしていたんだ。でも、あのニュースが3日ほどに渡ってテレビやラジオで報道されたことで、世界的に注目されるようになったと思う。すごくシュールレアリスティックな体験だったよ。アートスクールにも行っていない、逮捕歴ありのグラフィティライターの作品が、“世界でもっとも影響力のある男”への贈りものになるなんて。“イギリス代表”に俺を選ぶなんてバカげてる、と思ったね(笑)」

 

──
そもそも、キャメロン首相はどうしてあなたの作品を見出したのでしょうか?
「当時、アニヤ・ハインドマーチとコラボレーションをしていたんだけど、デザイナーとも仲の良い首相夫人が薦めてくれたらしい。シェパード・フェアリーが手がけた選挙ポスターで知られるオバマ大統領へのプレゼントとしてストリートアートを、となった時にバンクシーは引き受けないだろうから、俺に声がかかったんじゃないかな(笑)」
──
時期としてはその後になりますが、ロンドンオリンピックのためロンドンの街が清掃されてしまうのを見たくない、として当時は海外を回っていた、という発言を以前目にしました。
「そうだね。でもオリンピック後、競技場の跡地に385mにも及ぶ大作を描くことになったので、結局はオリンピックに参加したようなものかな(笑)。実は今、サンフランシスコに住んでいて、一年の半分はアメリカ、あとの半分はヨーロッパという生活だから、今ロンドンがどうなっているのかはよくわからないんだ。もちろんロンドンは自分にとってのホームだし、行くたびにストリートに作品を
描いてはいるけれど、サンフランシスコは天気もいいし食べ物もおいしいんだよ。今の奥さんにもアメリカで出会ったしね。拠点を移したことは間違いなくパーソナリティや作品にも影響していると思うよ。今回発表した木製のキューブはサンフランシスコの工房で製作したものだし。以前から東京にも住んでみたいと思っているけど、サンフランシスコにも東京にも地震があるのが残念だよ」