Ben Eine
ロンドンのストリートアートの立役者
ベン・アインが初の立体作品を東京にて発表
15 1/20 UP
photo: Kentaro Matsumoto
interview & text: Misho Matsue
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- 今お話にもあった3種類のキューブ状の立体作品“ Objets D’Art ”は、平面作品で印象的な色使いが光と影に置き換わったようで、とても見ごたえがありますね。作品を三次元化することで何か発見したことはありますか?
- 「今となってはキャンバスがどんどん大きくなる一方だから、退屈して何か違うことをしたいと思っていたんだ。今回のコラボレーション相手であるFRAGILE VENTURESがアプローチしてくれたことで、自分自身の作品では試してこなかったアイデアにチャレンジし、技術を持った職人たちと出会えたことは大きかったね。もし自分一人で取り組んだとしたらダンボール製になったかもしれないけど(笑)、クオリティの高いオブジェとして形に残せたのはありがたいと思う。ただ壁に描かれていたり掛けられている作品を眺めるのと違って、触ったり動かしたりしながら楽しんでもらえるんじゃないかな。そういえば、手のひらに乗るサイズのキューブに取り組んだことで、作品のサイズもちょっと小さくなったかもしれないね(笑)」
"YOU DO"とペイントされた中野ブロードウェイのシャッター。
今回の来日時に制作された。
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- 以前、ルイ・ヴィトンともスカーフのプロジェクトでコラボレーションの経験がありますが、今、世界的にラグジュアリーブランドがストリートのパワーを必要としているような風潮があると思います。そういった流れについてはどのように考えていますか?
- 「いいことなんじゃない(笑)?自分について言えば、アートが大好きだし、ルイ・ヴィトンのようにアーティストとのコラボレーションにも歴史があって、アートをサポートする姿勢を持ったブランドは素晴らしいと思う。コラボスカーフのプロジェクトにおいてもアーティスティックな意味での自由を与えてもらったし、パリにも行っていないんだ(笑)。さらにはアーティストにだけでなく、職人たちにも同じように敬意を払っていると感じたよ。もちろん、アニヤ・ハインドマーチの場合も同様だ。ラグジュアリーなイメージの看板を掲げるだけで、実際には生産を中国に丸投げしているような企業とは組みたくないね」
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- 先ほど東京に住んでみたいという言葉もありましたが、ストリートを見る鋭い視線を持ったあなたが東京に感じる魅力は何ですか?
- 「自分が育ってきた西洋の文化とはまったく違うところかな。建築、タクシー、言葉も食べ物も、すべてにおいていい意味でのカルチャーショックを受けたんだ。東京に来ると、笑顔でいることがいつもより多いような気がする。君らはみんなクレイジーだよ
- (笑)。特にファッション、建物、プロダクトなど、日本人のディテールへの着目やこだわりには目を見張るものがある。すべてがレイジーでプラスティックなアメリカにいる分、余計にそう思うのかもしれない。アメリカのテレビ番組やコマーシャルにはもう本当にうんざりだよ」
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- 最後に、文字にコンシャスなあなたには日本語の文字はどのように映るのでしょうか?
- 「実は今、漢字っぽいレタリングに挑戦しているんだ。日本語は一文字も理解していないんだけど、書体の止め、撥ね、払いに興味があって、アルファベットとミックスして“FUCK YOURSELF”と読めるようなTシャツを作りたくて。自分に理解できないとしてもそれぞれが意味を持っている文字だから、変にいじるのはやっぱり良くないと思うので、日本語“風”に見えればそれで十分なんだけど。これが初めてのチャレンジだから、うまくいくかどうかはわからないけどね。3月にドバイで個展を予定していてアラビア語も見ているところなんだけど、アラビア語はさすがにハードルが高すぎて(笑)。アラビア語なら、適当な単語を形で選んでリピートし、模様のようにするのも面白いかもね。いずれにしても、言葉の持つ意味自体よりも、さまざまなフォルムを持った文字同士をいかに調和させたり、対比させたりするかのほうに興味があるんだ」