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THINK PIECE

DENKI GROOVE THE MOVIE? 〜石野卓球とピエール瀧〜

結成25年周年を迎えた電気グルーヴの歴史に大根仁が迫る。
貴重なライブ映像や関係者インタビューによるドキュメンタリー。

15 12/15 UP

interview: Tetsuya Suzuki
text: Ryu Nakaoka

フジロックフェスティバル ’14に出演した際の石野卓球とピエール瀧

「ミュージシャンとしての活動だけではなく、ビジュアルワークなども含めての電気グルーヴだと思います。映画の中ではアルバムのジャケットの見せ方ひとつ取っても、ただ見せるだけじゃつまらないので工夫しました」
──
先ほど、ドキュメンタリーを制作する過程で大根さんご自身も知らないことがあったとおっしゃっていました。
「『A』(97年)や、そこからシングルカットされた『Shangri-La』(97年)をリリースしたあと、電気グルーヴはヨーロッパに行きます。彼らが向こうですごく受け容れられたということは情報として知っていて、卓球さんがドイツの“ラブパレード”で100万人もの観客の前でDJ、なんて話に驚いたのを覚えています。しかし電気グルーヴがヨーロッパでライブしている映像はほとんど観たことがなかったので、あんなに盛り上がってたのか、と改めてびっくりしました。コーネリアスやギターウルフなどのアーティストも含め、ヨーロッパで日本のバンドがあれほど受け容れられていた様子が、当時の日本の音楽メディアであまり伝えられなかったのは非常に残念です。もっと取り上げるべきトピックだったんじゃないかと思います」
──
同じように感じました。90年代に日本のローカルなサブカルチャーが海外に受け容れられて、海外マーケットでユニークな存在感を持っていたということを、この映画でビジュアルとして観ることで、はじめて現実的に理解できました。

 

「そういう現象が起きた原因は、電気グルーヴがヨーロッパに向かっていた1998年から2000年くらいまでって、日本の音楽マーケットもめっちゃ盛り上がってたからなんですよね。ライジング・サンやフジロックなどのフェスがはじまり、ロックバンドではミッシェル(・ガン・エレファント)とかブランキー(ジェットシティー)がいた。そしてラルク(・アン・シエル)やGLAY。さらに椎名林檎、宇多田ヒカルが出てきて、それはそれで成熟したシーンがあった。その間に電気グルーヴが海外に行っていたのは、らしいといえばらしい」
──
批評的かつジャーナリスティックな視点であの時代の音楽シーンを切り取っていましたね。音楽ドキュメンタリーという仕事で大変だったことは何ですか。
「ドラマや映画と違って、出口がよくわからないまま作っていたことです。構成、脚本、取材、編集すべてが同時進行。途中で新しい素材が来て、また編集し直して、というようなことの繰り返しで、この作品はどこに行き着くんだろう、と思っていました」
──
その結果、見事に2時間で起承転結をつけたストーリーになっていると思います。
「去年のフジロックで『N.O.』(94年)を演奏してくれたおかげです。あれで全体をまとめることができたので、本当によかった(笑)」
──
初期のライブ映像の印象はいかがでしたか。
「僕は電気グルーヴと同世代で、彼らがデビューした89年に働きはじめているんですよ。思い返すと、90年代初頭の時代感は観ていてちょっと恥ずかしかったですね(笑)。しかしあの怖いものなしの調子の乗り方は、それはそれで魅力的だな、とも思います。絶対に使えないヒドいMCとかいっぱいありますからね」

 

──
今だったらネットが炎上しますね(笑)。電気グルーヴの25年間の変遷を追ったわけですが、”大根さん自身の25年”と重ねたところもあったのでしょうか。
「それは制作しながら感じていました。電気グルーヴと自分を比較することなんてできないのですが、自分もそれなりに山あり谷ありでしたから。例えば、電気グルーヴが『Shangri-La』でヒットを狙ったことは、自分が『モテキ』でやろうとしたことと似てるし。電気グルーヴがテクノシーンを作り変えたように、僕は深夜ドラマで、作品単体を制作するだけでなく、深夜ドラマという場所そのものを作り変えたかった。時期はずれていますが、僭越ながら自分と重ねられる部分はありましたね」
──
このようにひとつのバンドを追いかけて、達成感や得るものはありましたか。
「まだ実感がないです。映画は視聴じゃなくて体感ですから、お客さんが映画館でどう感じるかで出来上がってくるでしょう。音響面にもこだわって、徐々にフジロックの音に近づいていくように、ヒストリーの部分を音設計しています。僕自身、映画館の大スクリーン大音量であのフジロックの演奏を聴きたいと思いながら

作っていました。フェスという環境は素晴らしいけど、そこで聴くことができるのは本来出している音とは違うものなので、改めて一番クリアな状態で聴きたかったんです」
──
そのあたりを最終的に劇場で楽しんでもらいたい、ということですね。
「そうですね。まずは劇場で体感してほしいです」

 

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』

監督: 大根仁
コメント協力(A to Z): 天久聖一、Andi Absolon (元ヨーロッパ ブッキング エージェント)、ANI (スチャダラパー)、Bose (スチャダラパー)、CMJK、DJ TASAKA、日高正博 ((株)スマッシュ 代表取締役)、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、道下善之 ((株)ソニー・ミュージックアーティスツ)、中山道彦 ((株)ソニー・ミュージックアーティスツ 代表取締役)、小山田圭吾、SHINCO (スチャダラパー)、砂原良徳、山口一郎 (サカナクション)、山根克巳 (LIQUIDROOM)、山崎洋一郎(rockin'on JAPAN総編集長)、WESTBAM 配給: ライブ・ビューイング・ジャパン

2015年12月26日(土)より、新宿バルト9ほか
全国の劇場で2週間限定年越しロードショー

www.denkigroove.com/themovie