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THINK PIECE

LUCKY TAPES『The Show』

いま注目の4人組による待望の1st アルバム。彼らの素顔と制作秘話に迫る。

15 8/5 UP

photo: Satomi Yamauchi
interview: Tetsuya Suzuki
text: Yuri Nishikubo

高橋海(Vo / Key)、田口恵人(Ba)、濱田翼(Dr)、高橋健介(Gt / Syn)の4人から成るバンド、
LUCKY TAPES(ラッキーテープス)。高橋(海)、田口によるSLOW BEACH解散後、当時からサポートメンバーとして
演奏していた濱田と高橋(健介)を加え結成。結成直後に発表したEP『Peace and Magic』は僅か3ヶ月で完売し、
今年4月にリリースされた公式デビュー・シングル『Touch!』は、発売日を待たずにレーベル在庫が完売するなど、
着実に人気を集めるいま注目のバンド。ceroの最新作『Obscure Ride』を手がけた得能直也氏をエンジニアに迎えた、
待望の1stアルバム『The SHOW』のリリースを目前に控えたタイミングでインタビューを敢行。

 

LUCKY TAPES

左から、
濱田翼(Dr)、高橋健介(Gt / Syn)、高橋海(Vo / Key)、田口恵人(Ba)

http://luckytapes.tumblr.com/
http://www.rallye-label.com/?pid=81236126

 

──
まずはじめにLUCKY TAPES結成までの経緯を簡単に教えてください。
高橋海(以下K)
「もともとこのメンバーでSLOW BEACHというバンドをやっていて、一度就職活動などそれぞれの進路がバラバラになって解散してしまったんですけど」
濱田翼(以下H)
「当時は僕以外は学生でしたかね。オリジナルメンバーがこの2人(高橋、田口)で、僕と高橋健介がサポートで入っていました」
K
「解散後にメンバーでご飯に行ったとき、ちょうどマイケル・ジャクソンの『Love Never Felt So Good』がリリースされたタイミングで、それが最高だって盛り上がったんですよ。こんな音楽やりたいねって話していて、気づいたら数日後にはスタジオに入っていました。そこで曲が生まれて、また何か新しく始めようという流れでした」
──
SLOW BEACHの時もこのアルバムのような音楽性だったのですか?
K
「SLOW BEACHでは、思いっきりインディーズに寄った、全体的にリバーブ掛かった浮遊感のある音楽をやっていました」
──
ギター主体のシューゲイザーっぽい感じ?
K
「シューゲイズというよりはCHILL WAVEっぽい、シンセポップかな。パッド系のシンセがふわふわ鳴っているようなイメージです」
──
今回のアルバムからは60年代とか70年代のソウルやポップスのテイストが感じられて、さらにそれらは90年代にリバイバルされた

ものでもあります。過去の音楽のアーカイブに対する自分たちの音楽の距離のとり方は意識していますか?
K
「みんなリアルタイムで流行っている音と過去の音を隔たりなく聴いているので、生音重視の昔のソウルっぽいテイストと今っぽいサウンドのバランスを意識してつくっています。バンド名(LUCKY TAPES)にもそういった意味合いを込めていて、テープというと何だか懐かしい感じがしますよね」
H
「どっちかに極端に寄り過ぎないようには気をつけていますね。古すぎず、かといって流行を取り入れすぎず。昔のものでもすごくいいアプローチはいっぱいあるので、いいと思ったら結構すぐに取り入れますね」
K
「70年代のソウルとかは影響が大きいかと」
──
90年代にも日本でいえば渋谷系だったり、70年代のソウルやロックのリバイバルがありましたが、そういったものは意識していますか?

 

K
「渋谷系だったりシティポップとかはよく引き合いに出されるんですけど、逆に自分たちはあまり通っていなくて。彼(田口)が一番知っているかな?」
田口恵人(以下T)
「渋谷系の存在はORIGINAL LOVEを最初に知ったんですけど」
K
「そこまで熱心に聴いてきたジャンルではないよね?」
T
「ORIGINAL LOVEは好きだけど、ラヴ・タンバリンズはこのあいだ知って」
──
ラヴ・タンバリンズとやろうとしていることがそっくりだと思いませんでしたか?
K
「思いました思いました!すでに80年代にこういうことをやっていた人がいたんだっていうのが衝撃的でしたね」
──
知ってたらやれなかったかもしれないですよね。
K
「ああ、たしかに」
T
「渋谷系って何?っていう感じだもんね」
──
今回のアートワークはメンバーで意見を出しながら決めたのですか?
K
「前回のシングルと同じ方に描いて頂いて、前回はイメージだけ伝えてお任せした部分が多かったのですが、今回は何枚かラフを出してもらって、色などもぎりぎりまで詰めながら制作していったので、とても可愛く愛着のわく仕上がりとなりました」
──
高橋(海)さんは詩と曲を両方メインで書かれているのですよね?先ほどおっしゃっていたバンド名の「Tapes」というのもある種のノスタルジーや生っぽさを自分たちの音楽に入れていくっていうコンセプトがあって、それを意識した感じで詩や曲を書いていっているということでしょうか?
K
「そうですね。完全にコンセプトに寄せすぎても今の時代には鳴らないと思っているので、70年代のソウルやファンクを土台に、今っぽいシンセやメロディを組み合わせて聴きやすいポップスを作りたいなと思っています」
──
いわゆるCHILL WAVE系って内面的というか内側にこもる感じだと思うのですが、もうすこし開放的な音楽をやっていきたいなと思った意識の変化には、なにかきっかけがあったのですか?
K
「みんな元々外向きの音楽も好きだったけど、SLOW BEACHではなかなかメンバーが定まらず、サポートを入れ変えながら活動してきたので、デモを宅録で作るしかなく、それが内面的なサウンドに繋がっていたのだと思います。今は生バンド感を重視していて、メンバーみんなでアレンジしていくスタイルをとっているので徐々に音が外に向いてきているのだと思います」