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THINK PIECE

THAT’S PITTICOLOR !

第88回 ピッティ・イマージネ・ウオモ
世界のメンズモードで活躍するプレイヤーが集結するトレードフェア。

15 10/13 UP

photo & text: Shoichi Kajino

さる6月下旬、フィレンツェにてPITTI UOMO第88回が開催された。PITTI UOMOは、メンズファッションにおいて、
毎シーズンのサーキットの幕開けを告げる最大のトレードショー。近年ではゲスト・デザイナーを迎えての
エクスクルーシヴなショーやプレゼンテーションも話題を呼び、さらなる注目を集めている。
来季のムードをいち早くキャッチすべく世界中からバイヤーやジャーナリスト、
セレブリティも含め、モード関係者が詰めかける。バイヤー参加者数を誇るのが、
ながらくに渡って日本が上位であるという事実が示すとおり、日本の関係者からの信頼も厚く、
相思相愛の関係の中で発展してきたイベントといえるだろう。

 

 

MOSCHINO Jeremy Scott

第88回、今回の目玉となったのは、ジェレミー・スコットによるMOSCHINOをメンズのゲスト・デザイナーとして迎えたことである。なんでもメンズとして独立して初めてのランウェイを披露するというのでファンはざわめき立ったのである。

会場となったのはアルノ川のほとりに建つパラッツォ・コルシーニ宮殿。夕暮れを待つことなく一見してジェレミー・スコットの信者と分かる個性的なファッション・ピープルが集い始め、狭いエントランスの門の前には溢れんばかりの人だかりが出来た。会場内ではジェレミーの長らくのミューズでもあるケイティ・ペリーがランウェイを前に登場し、フラッシュを浴びて賑わいを見せる。

ランウェイはまったく期待を裏切ることなくジェレミーらしいインパクトに溢れていた。プレスリリースの固有名詞の羅列をそのまま引用させて頂くのなら「レーサーのヴァレンティーノ・ロッシがフレッド・アステアに出会ったような」「『ステイン・アライヴ』と『2001年宇宙の旅』が一つの物語になったような」「ジミ・ヘンドリックスやプリンスとルイ16世のスタイルが入り交じったような」。そんな異質の大胆な交じり合いがふんだんに盛り込まれた今シーズンのスタイルは、すべてがジェレミー・スコットのユーモラスなタッチでシュガーコーティングされ、固められたボンボンのようだ。

長らく、自らの生み出すファッションをあらゆるジャンルのメンズスタイルに属するかを明らかにするのを徹底して拒んできたデザイナー、ジェレミー・スコットの強い信念こそ、このコレクションでも核心にあるのは明確だ。そしてその美学こそが彼の根強い支持の根源でもあるのを感じさせた。

 

 

THOMAS TAIT

PITTI、今季のウィメンズのゲスト・デザイナーとしてこの夏のフィレンツェに迎えられたのは、トーマス・テイト。2014年度のLVMHプライズを受賞した注目の若手英国デザイナーである。彼はこれまでのアーカイブを、新たな解釈で再度実現してみせるというシンプルな設定の中、自らの世界観のコアをコンセプチュアルにプレゼンテーションしてみせた。カクテルの会場ではスージー・メンケス女史も駆けつけ、熱心に取材に応える姿が印象的だった。