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THINK PIECE

tha BOSS 『IN THE NAME OF HIPHOP』

THA BLUE HERBのMC、tha BOSSリリースする初のソロアルバム。

15 10/14 UP

photo: Kentaro Matsumoto
text: yk

THA BLUE HERBのフロントマンとして、唯一無二の言葉と共に47都道府県を縦横無尽に駆け抜けるtha BOSS。
活動開始当初から、その音楽、思想、スタイルには常に注目が集まってきたが、18年を経た現在もなお、
その影響力は衰えることなく新たなフォロワーを増殖させ続けている。そして今回リリースされた初のソロアルバム
『IN THE NAME OF HIPHOP』では、ラッパーとして原点に立ち返り、そして更に進化を遂げようとする
tha BOSSの魂が込められた意欲作。TBHのパートナーであるO.N.O以外の音、
そして自分以外のラッパーの言葉とともに、新たな挑戦に臨む。

 

──
過去の客演作品をコンパイルした『BORDERS - Mixed by DJ HIKARU』、そして今作『IN THE NAME OF HIPHOP』と、これまでにはなかったBOSSさんの個人名義での作品が立て続けにリリースされますが、そこにはどういった心境の変化があったのですか?
「これまでずっとO.N.Oと二人でTHA BLUE HERB(以下:TBH)として音楽を作り続けてきて、もちろん最初の頃は初期衝動だけで作っていた部分もあったけど、テクノロジーの進化もありながら段々と自分たちのスキルも上がって、細部まで完璧にこだわって作ることができるようになった。それで2012年にリリースした『TOTAL』というアルバムで、一度頂点を極めたという感覚があったんだ。その山が巨大だったということもあるんだけど、『TOTAL』以上にパーフェクトなものを作ることを目指してしまうと、ヒップホップの良い部分である”ラフさ”をなくしてしまう危険性もあると感じたんだ。だからここで一度TBHからは離れて、それとは違う音作りに挑戦してみようと思ったことが発端だね。そこで、まずはそれまでのTBH以外の仕事を集めて聴いてもらってから、自分のソロ作品を聴いてもらおうと思ったんだよ」
──
昨年末にリリースされた”NEW YEAR’S DAY feat. 般若”の段階でその構想ができはじめていたと伺いました。

「TBHRというレーベルで自分の作品に自分以外のラッパーを招いたことも、O.N.O以外の音で曲を作ったこともなかったけど、純粋に般若との作業自体が楽しかったし、これをもっと他の人とやるのも面白いかもしれないと思ったんだよね。だから”NEW YEAR’S DAY feat. 般若”が、『IN THE NAME OF HIPHOP』のきっかけになっているともいえるよ」

 

──
今作ではトラックメーカーもラッパーも、シーンではおなじみの面々から、知る人ぞ知るという方まで幅広く参加されていますが、どういった基準で選ばれたのでしょうか?
「まずは18年間この仕事をしてきて、ライブやツアーで訪れた先々で出会った人たちに声をかけたんだ。多分それぞれの夜に、”いつか一緒に曲を作ろうぜ”なんて話していた人たちだよね。

あとはこれまでにもらったデモCDを全部聴き直したり、スタッフから薦められた人もいたりして、そこから一緒にやってみたいと思った人に声をかけさせてもらったんだ」
──
プレスリリースに書かれていた”日本のHIPHOPに真正面からエントリーする”という一節がとても印象的でした。
「TBHでは、自分たちにしかできないというものを追求し続けて、色んな突然変異を繰り返しながらオリジナリティを獲得してきたと思うんだけど、自分たちが日本のヒップホップの中心だとは思ったことがないわけ。やっぱり常にヒップホップ番外地というか、そういう場所に身を置いているアウトサイダーだという意識があったし。札幌という土地柄もそうだし、O.N.Oのビートなんて唯一無二のものだからね。でも今回に関してはヒップホップのオーセンティックなスタイル、俺がヒップホップにハマった時の感動に忠実に作って、ビートとライムだけでどこまでできるかってところを追求したかったんだ。”シーン”なんてものはハナから気にしちゃいないけど、これが2015年一番純粋な日本のヒップホップだよって聴かせたいものがこの作品ってことかな」