honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

NECK FACE × WACKO MARIA

PARADISE TOKYO1周年を記念した、幸福な邂逅

16 9/21 UP

photo:Kentaro Matsumoto
interview and text:Hiroaki Nagahata

10代の頃から世間をあざ笑うかのようなストリートタギングで名を馳せ、VANSやNIKEなどのブランドとコラボレーションを
成功させているネック・フェイス。自身もスケーターでありながら、その才能はバンクシーと並び称されるなど
アートシーンでも高い評価を受ける彼が、満を持してワコマリア(WACKO MARIA)とタッグを組んだ。“満を持して”というのは、
過去に一度、スケジュールの都合でネックにコラボレーションを断られたことがあるワコマリアにとって、まさに今回が念願だったから。
今年の9月9日でちょうど1周年を迎えたワコマリアの旗艦店、パラダイストウキョウ(PARADISE TOKYO)では、ネックの作品や
ポスターを展示・販売している他、コラボレーションアイテムとして、傑作アーカイヴがプリントされたTシャツやパーカをはじめ、
ネックのイラストが自然に馴染みすぎているアロハシャツをラインナップ。また、今プロジェクトのために制作されたZINEも限定販売している。
以下、ネックと森敦彦(ワコマリア)との対談では、コラボレーションに対する両者の思いと、ヘビメタとB(C)級ホラーに影響を受けた
“永遠のバッドボーイ”ネックのイントロダクションを知ることができる。なお、この幸福な邂逅は9月25日まで続く。

 

──
まず、森さんがはじめてネック・フェイスのことを知ったきっかけを教えてください。
森敦彦(以下:M)
「10年くらい前に友達に彼の作品を教えてもらって、おもろいなと。その時は顔を出していなかった(正体がバレないようにマスクで隠していた)から、どんな奴なんやろうと気になって」
──
ネックが顔を隠していたのは本当に警察から逃れるため?
Neck Face(以下:N)
「昔はそうだった。いまは顔を出さないと女の子が気付いてくれないからさ」
M
「隠してたほうが良かったんちゃう?」
N
「アグリー・フェイスだって言うのか!?」
M
「ハハハ!(笑)」

──
なぜ今回、ワコマリアからのオファーを受けようと思ったんですか?
N
「実は、数年前に最初のオファーをもらった時は、僕が他のプロジェクトで忙しくてOKを出せなかった。当時はワコマリアのことも知らなくて。今回はウィアード・デイヴ(NYC出身のコラージュアーティスト)からの『ワコマリアなら絶対一緒にやったほうが良いよ』というプッシュもあって、受けることにしたんだ」
M
「デイヴとは4年前にコラボレートしたんです。でも、彼が推してくれたなんて知らなかったですね」
──
何度もオファーするなんて、森さんは相当ネックに入れ込んでいたんですね。
M
「自分が心の底から“おもろい”と思うようなアーティストなんてそう出合えないですから。オファーを受けてくれた時は本当に嬉しかったです」

 

──
ネックのダークな作風は、自身のバックボーンとどの程度関係しているのでしょうか?
N
「かなりリンクしていると思う。僕は小さい頃から13日の金曜日のようなグロテスクなホラー映画を観ていたし、それを家族に止められることもなかった。両親はあまり厳しいほうではなくて、何でも好きなことをさせてくれたから。それと、僕が生まれ育ったのは治安が悪いエリアで、犯罪者も含めて本当にいろんなタイプの人が暮らしていたから、それにも影響を受けたのかもしれない」
──
森さんはネックの作品のどの部分に魅力を感じましたか?
M
「一見ダークなんだけど、そこにユーモアが潜んでいるような気がしたんですよね」
N
「世間一般に良くないとされていることをわざとやって、人を笑わせるのが快感だからね。“自分を隠さずにさらけ出す”というのが重要なんだ」

──
それでは、ネックがダークネスの中にユーモアがあると思う作家を何人か教えてください。
N
「絵本作家のエドワード・ゴーリー。ティム・バートンは彼に相当影響を受けているんだ。それとチャールズ・アダムズも。ホラーコメディの傑作、アダムス・ファミリーを作った人だね」
──
そんな彼らには何かしら影響を受けましたか?
N
「自分がイラストを描き始めてからその人たちのこと知ったから、影響されたというよりも、同じ立場としてクールだと思ったんだ」
──
自分がアーティストだと意識し始めたのはいつですか?
N
「お金を稼ぎ始めた時だね(笑)。いや……今でも自分でアーティストという認識は持っていないかもしれない。それって、どこかノーマルじゃないんだ。まわりから『アーティスト、ネック・フェイス』と言われると、そうなのかと思うくらいで」

 

──
森さんはネックに実際に会ってみてどんな印象を受けましたか?
M
「何ていうたらええかな……もっとはっちゃけてるのかなと思ったら、インテリでコミカルな奴でした」
N
「おれはプロフェッショナルだからね(笑)」
──
インテリであることはあなたにとって重要なことですか?
N
「もちろんバカだとは思われたくないよ(笑)。こう見えて、自分がやっていることに対しては常に意識的だし、クレイジーな面と冷静な面の両方を持ち合わせていると思う。ビジネスはビジネスだ。何よりバランスが大切だし、やるべきことはきちんとやる。誰も僕のために働いてくれるわけじゃないし、自分でいくつかの違う役割を果たす必要があるからね」
──
ストリートでタギングする時、ギャラリーで作品を展示する時、あるいは今回のようにブランドとコラボレーションする時とでは、意識や目的に違いはありますか?
N
「常に良いものを残すということしか考えていないから、そういう意味ではどんな仕事でも僕の姿勢は変わらない。ブランドと一緒にやる時は何かしらの縛りがあるけれど、それでも良いものを作ったと思うことができれば、誰に文句を言われても気にしないね」