08 10/21 UP
Tex:Rina Watanabe (YCAM Assistant Curator) Photo:Camil Scorteanu, Conception Lévy
そんな中、3夜目のトリに出演したのは、ベルリンに次いでカナダ初上陸の渋谷慶一郎である。
『maxima』とタイトリングされたこのライブのスタートは、ドイツの内在物理学者、オットー・E・レスラーのリーディング(今年2月のベルリン滞在時に実現した対談の抜粋であるという)を絶妙にサンプリング加工した渋谷のサウンドに、両者のアーティスト名をばらばらに分解し、斬新なカットアップで映し出すエキソニモの映像。その既視感を打ち破るインパクト大な幕開けにフロアが一気に加熱。
続いて渋谷が、三次元立体音響作品『filmachine』の素材を駆使し、超高密度な音像を会場空間全体に縦横無尽に駆け巡らせると、エキソニモは、回転盤にドリッピングのごとくドローイングを書き連ねてゆくムーヴィーや、コンピュータのマウスを車で踏み潰し、火炎放射するウィットと狂暴性を湛えた映像でヴィヴィッドに感応。
アプローチのユニークネスにおいて、このライブは傑出したスタンスを築いていたと言っていい。モントリオールでも、渋谷の2月のベルリンでのインスタレーション『filmachine』&ライブの噂は評判で、その期待感に違わぬアップエンドとなっていた。
今後も展開予定というこのコラボ。次は一体、どこに照準を合わせてくるのか。意表を突く新たな問い直しの遊戯。挑発的かつ革新的なこのトライアルは、常にその発火点を追い続けるしかない。