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THINK PIECE

名作ZXの新たなる可能性

adidas 2008 F/W CONSORTIUM "aZX" PRODUCT
Vol.2 滝沢伸介(NEIGHBORHOOD代表・デザイナー)

08 9/17 UP

Text:Atsuo Watanabe Photo:Kotaro Kikuta

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さて、本題のaZXについて色々とお伺いしたいと思います。過去にNEIGHBORHOODとadidasはコラボレーションを2度行っていますよね。最初がスーパースター35周年の記念プロダクト"SUPER 35 STAR"(2005年)で、次がワールドカップドイツ大会時に展開された"off-side"プロダクト(2006年)のガッツレー。そういう経緯があって今回のaZXモデルに続くわけですが、まず過去2作を振り返ってみて、NEIGHBORHOODらしさをadidasのプロダクトに落とし込む際に、どの辺がポイントになるのでしょうか?
T :
「過去2型を作らせてもらった時には"adidasの意外性"みたいなものを表現したいと思いました。先ほどの話に遡るのですが、プロユースというか早く走るために開発されたハイテクノロジーのシューズや、疲れないシューズ、軽いシューズといったアスリートの視点ではなく、あくまでも『NEIGHBORHOODというブランドがadidasのシューズを改良するのだったら?』という考え方が根底にあります。既存のadidasのイメージを裏切るみたいな。スポーツ的な要素は確信犯的に無視したいと思って作りました」
──
adidasというステージではなくて、あくまでもNEIGHBORHOODの領域内に落とし込むと。
T :
「単純に言えば、着地点がストリートユースということですかね。スカルのマークをadidasのシューズに入れたりすることなんて、今までは皆無だったと思うんですよ。そういう斬新さを取り込みたかったんです」
──
よく考えたら、スポーツブランドにスカルってスゴいことですね。
T :
「(笑)。まぁ、そこも意外性の解釈というか。どうせやるんだったらみんなに驚いてもらえるようなスニーカーを作りたいですから」
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過去2型はそれがうまく形になったということですよね?
T :
「そうですね。デザイン自体は極めてベーシックですけど、各ディテールにはウチらしさを具体化できたかなと」

 

──
NEIGHBORHOOD×adidasモデルの制作には倉石さんの影響も大きいと思うのですが?
K :
「製作には携わっていますが、でも単に僕がネイバー好きだからといってコラボレーションが実現するわけではないです。このコラボレーションで重要なのはadidasのスタッフ自身がネイバー好きということ。そういう前提条件があってこそ、僕が提案して形になっていくんです」
──
ZXっていうのは1980年代半ばにadidasが出したランニングシューズの名作です。滝沢さんはZXをご存知でしたか?
T :
「スミマセン、僕、全然知らないんですよ(笑)。というかランニングシューズ自体、履かないから知識もないし。だから、最初にaZXのお話を頂いた時も、ランニングシューズなので今回は厳しいかなと思いました。でもZXのラインナップを見たらブーツタイプがあったので、これならNEIGHBORHOODらしくデザインできるかなと。当初、ブーツタイプは他のブランドやショップのみなさんも選ぶんだろうなって思っていたら、意外にもウチだけしかピックアップしていない。まぁ、結果的にモデル選択からもランニングシューズという枠の中で、ウチらしく裏切れたのかなと」

K :
ZXはランニングシューズの代表作だから、他はもっと"ジャスト・ランニング"という方向で選んだんでしょうね」
T :
「もちろん、今回も僕はネイバー目線です(笑)。だってこれでランニングしないでしょ!」
K :
「しないよね。でもそこがポイント。ネイバーのプロダクトとして考えれば、すごく当たり前のデザインに仕上がっていますから」
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では次に。今回のコラボレーションモデルのこだわり具合を聞きたいです。
T :
「今回に限らず、過去に作ったスーパースターやガッツレーにもいえることがあって。抽象的なんですけど、海賊船をイメージしているんですよ。だからスカルマークを付けたりとかね。aZXはAからZまでのシリーズなんでしょうけど、僕の中では継続のシリーズというか……うん、あくまでもNEIGHBORHOOD × adidasプロダクトの第3弾という捉え方です」
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第3の海賊船みたいな?
T :
「まぁ、そんな感じですね(笑)。adidasらしからぬ個性的なデザインに仕上がったと思います」
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ちなみに、なぜ海賊船なんですか?
T :
「最初のスーパースターの依頼があった時、すごく光栄なことだったし、自分の中でも非常に大きな出来事だったんですね。それで、マスメディアという大海原に向けてNEIGHBORHOODという海賊船が自分の信念を貫いて侵略していく、というイメージが浮かんで。それがきっかけですね。で、今作にもスカルや海賊旗で見られるモノトーンの格子柄などで、海賊船のニュアンスを表現しています」