BECK 『MODERN GUILT』
『モダン・ギルト』でシンプルに歌を紡いだ、ベックの今の視線は
08 8/26 UP
Text:Nami Sezawa
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- 今作は歌詞もとても興味深いです。タイトル・トラックの"Modern Guilt"の歌詞の"Don’t know what I've done but I feel ashamed(何かした覚えはないのに、恥ずかしさを感じる)"というフレーズのきっかけは?
- 「そのフレーズは、おそらく僕の頭の中にずっとあったものなんだ。本当にそういう感覚なんだよ。この社会の中で存在することに対して、僕はある種の罪悪感や恥を感じているんだ。何と呼べばいいか分からないんだけど……社会が環境に及ぼしている悪影響に自分が加担していたり、共犯者だという感覚なんだ。税金を払うことだってそうだよ。ショッピングに行くと、僕らはみんな廃棄物を増やすことに加担している。こういう問題は、現代的なジレンマなんだ。僕は決してジャッジしているわけじゃない。僕だってスーパーで買い物をするとプラスチック・バッグをもらうし、無駄にパッケージングされた商品を買ってる。みんなと同じように、僕だってゴミの埋め立て地を増やすことに加担しているんだ。自分がやっていることが悪いことだとは思っているんだけど、自分がそれを改善させるための行動をとったからって、『どれだけ改善されるんだろう?』という疑問が残るんだ」
- ──
- 確かに。
- 「社会が犯している罪に加担しているから、それに対する罪悪感を感じずにはいられないよ。でも、その罪悪感を感じたからといって、何をすればいいのか? 現代の敵は顔も体もないから、どこから責めればいいか分からないんだ。人間である限り、下方スパイラルに加担していることになる。僕らよりも大きな問題なんだよ。そこがジレンマなんだ。普段はみんなはこういうことを考えないし、僕も考えていない。でもこのコンセプトに取りつかれて、それがアルバムのテーマになったんだ。世の中の問題に対して、僕らは殆ど手の施しようがない、というジレンマがあるよ」
『モダン・ギルト』 ベック(Hostess)
¥2,490(税込)