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THINK PIECE

CREATION FOR THE EARTH

中村ヒロキ×エドワード・バーティンスキー

08 7/14 UP

Text:Hiroshi Yamamoto Photo:Shoichi Kajino

人類の発展とともに、造り変えられてきた地球の異様な風景をグロテスクでありながらも美しく、
そして力強く 写真に収め続けるエドワード・バーティンスキー。
先進国の消費優先主義に違和感を持ち続けながらも、 その矛盾に対して真摯に向き合い、
独自のアプローチで服作りを続けるvisvim中村ヒロキ。
異なる立場でありながらも、共鳴しあう両者が語る、 地球の悲しい現実、
そしてそれを打開するためのクリエイション。

エドワード・バーティンスキー

カナダを代表する国際的写真家。地球中の産業の風景を収めた彼の素晴らしい写真は、カナダ国立ギャラリー、パリ国立図書館、ニューヨーク近代美術館やグッゲンハイム美術館など世界中の主要美術館に所蔵されている。彼が中国を訪れ、写真をおさめる姿を記録したドキュメンタリー映画『いま ここにある風景』が公開中。



消費者の心理を変えることが、新たな経済モデルに繋がる。

──
中村さんは商品を作り、売る立場ではありますが、消費優先主義に違和感を感じていますよね。そういった意味で、今回の映画『いま ここにある風景』で描かれている、行き過ぎた産業資本主義が社会を歪めている、という考えに通じる部分があると思うのですが。
中村ヒロキ (以下: N )
「そうですね。シーズン毎に新たな洋服を作り、消費されていくなかで、ある種の責任感というか、どこか居心地の悪い部分はあります。この映画ではエドワードさんの写真を通して、僕が日々感じている居心地の悪さを視覚的に訴えている、と強く感じました」
Edward Burtynsky (以下: E )
「ありがとう。中村さんはウィリアム・マクドノーフという建築家をご存知ですか? 彼は自らの著書『Cradle To Cradle』のなかで“プロダクトデザイン自体の哲学は変わってきている”と書いています。人間は消費し続ける生き物であり、その現実を理解したうえで物作りをするべきだ、と。彼自身、“フル・ライフサイクル”というテーマの基、実際に50年近く使えて、なおかつリサイクルできるプロダクトを作っているのです。つまり、これからの未来にとって、作り手が物作りへの問題意識を持つことは、非常に重要になってきます。ウィリアム・マクドノーフのような意識を持ち、その意識をインターネットを通じて世界中の人々と共有する。消費者とそういった物作りを約束することは、作り手にとってクリエイションを持続するためのエネルギーになりますからね。そして、なによりも大切なのは、持続することなのですから」
N :
「伝統的なプロダクトは、長い間使えるし、実際に使われてきました。しかし、現代の商業的なクリエイションの多くは、数を売る方法ばかり考えています。僕は、むしろ長く使われる物を作りたい。未来のデザインがどうあるべきかを考えるのも、デザイナーの役目だと思います」
E :
「その通り。プロダクトは常に進化、革新していくけれど、服や車、家具などは長く使われるべきだと思います。そういったプロダクトは、多少値段が高くても長く使える物を選んでもらえるよう、消費者の心理から変えなくてはならない。それが、新たな経済モデルに繋がってくる」