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THINK PIECE

Everybody Else

確かな音楽性と知性を備えたエヴリバディ・エルスが放つ
“ウルトラ・ポップ・サウンド”

08 4/30 UP

Text:Mayumi Horiguchi Photo:Eric Bossick

「〈可能な限り、自身の人生から全てを絞り出せ!〉それが僕らの音楽のルール」

──
キャリックは、いつも話すたびに「知能高いなぁ」と思うんだけど、それって、実はミュージシャンにとっては、ある意味「邪魔な要素」だったりしない?! どちらかと言うと、ブライアン・エプスタイン的なやり手のマネージャーに必要な素養というか。例えばモンキーズとか、周囲に作られたバンドだけど、あなたたちは、モンキーズを作り上げる側+演じる側の両方を、自分たちでやってるかのような印象を受けるんだけど。
マイキー(以下:M)
「確かにキャリックは、とてもきっちりした性格で、凄く頭が良い。ミュージシャンには、この二つが両立している奴は普通いないな。俺とか全然違うし」
C :
「でも、僕らとモンキーズは違うよ。彼らは“やらされてる感”に嫌気がさしてたかも知れないけど、僕らは自分たちがやりたいことを自然にやってるだけなんだ。昨日、ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグとかの、ビートニクの本を読んでたんだけど、彼らのスタンスは、まさに僕らと同じだと思った。〈可能な限り、自身の人生から全てを絞り出せ!〉っていうのがそれなんだけど、これこそが、まさに僕らのバンドのイメージ及び、音楽のヴァイヴのルールだと思ったね」
M :
「俺ら、いわゆる『ボーイ・バンド』とは全然違うから!ただ、自分たちのあるがままの生活をしてて、その延長線上でバンドもやってるんだよ。3分間のタームで終わるポップ・ソング作ってるボーイ・バンドとか言われがちだけど」

「既存のジャンルに分類されるなんてまっぴら御免だね」

──
イケメンぶりを売りにしてるわけじゃない……ってこと?
A :
「そうそう。誰かの選んだ服を着て、ライヴしたりしてないから。朝起きたらダンスの練習して、口パクして── そんなんじゃないから!!」
C :
「そうなんだよ! 僕らは自分たちで曲を創作し、楽器を演奏し、プロデュースも手掛けているんだからね」
M :
「ボーイ・バンドはラジオのトップ40にチャート・インすることが『仕事』で、それだけが目的だけど、俺達はそうじゃない。まあ、俺たちの観客も、大半がティーンエイジャーの女子だけどね」

C :
「あと、ちょっとだけゲイのファンもいるよ(笑)。基本的に、知能指数が高いことを自慢にしてる人たちって、ハッピーな曲をやってるってだけで、毛嫌いするんだよね。真っ黒な服着て、シリアスに見える雰囲気出してるバンドのことは誉めたりするんだけど。でも言わせてもらえば、そういうバンドこそ、みんな同じに見えるよ。僕は、もっと違うことをやりたいんだよね。僕らの楽曲で、人々にハッピーになってもらいたいんだ。ライヴの後、お客さんが『わぉ! こんなライヴ、今まで観たことない!』ってよく言ってくれるんだけど、このリアクションが好きなんだ。今まで存在したジャンルに分類されるなんてまっぴら御免だね。今、アメリカでは、ロック・バンドに関しては50%がザ・キュアとジョイ・ディヴィジョンのパクリ・バンド。エモも大流行中だけど、エモもそんな感じ。僕らはそんなバンドとは違う、独自の存在でありたいんだよ」
A :
「エモ・バンドはどれもこれも、パロディって感じ。セルフ・パロディの粋に達してるね」
M :
「もはやジャンルとして終わってるよ、エモは」

 

──
確かにあなたたちのサウンドは「ウルトラ・ポップ」という感じで、それは逆に現代では珍しいかも。バンド名も、キンクスのシングル「Sunny Afternoon」のB面の曲「I'm not like everybody else」(邦題『僕はウヌボレ屋』)から取ってるんですよね?
C :
「うん。歌詞が凄く好きだったし、英語だとリズム的に響きがいいんだよね」
M :
「元セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズは今LAに住んでいて、ラジオ番組を持ってるんだけど……」
C :
「僕らの曲を、ガンガンかけてくれるんだ!」
M :
「スティーヴにこう言われたんだ。“俺はお前らのバンド名が凄く好きだ。まるでザ・フーみたいだから”ってね。ある意味皮肉っぽくて、反語的でもあるしね」
──
なるほど。ところで、新作のパッケージ内のレタリングは凝ってますね。アメリカ独立宣言(*注;英国によって統治されていた13の植民地が、独立したことを宣言する文書。1776年7月4日採択。以後、7月4日はアメリカ合衆国の独立記念日となる)の署名者たちのサインを模倣したとか。ちなみに、署名者のひとりであるトーマス・マケインは、キャリックの先祖にあたるそうですね。
C :
「うん、実はそうなんだよ(笑)。昔っぽい雰囲気を出したくて、そんな感じに仕上げてみたんだ」
M :
「キャリックの自宅近くにある、所有者不明のガレージを使って録音したんだよ。キャリックの家と、建築デザインが一緒だったから『キャリックの家のガレージだ』って主張して使ってたんだ(笑)。騒音騒ぎになって、よく警察が来たよ(苦笑)」
C :
「でも、警官も、近所にある老人施設のおじいちゃん、おばあちゃんなんかも曲を気に入ってくれてね。ガレージまで僕らの音楽を聴きにきて、『良い曲ね!』って言いながら、楽しんでくれたんだよ(笑)」

 

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