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THINK PIECE

FANCY

グラマラスに世界を魅了する「世界の王者たち」

08 7/9 UP

Text&Photo:Shoichi Kajino

'70~'80年代のロックのレファレンスをごちゃ混ぜにして現在のパリに産み落とされたような、そんな不思議な魅力で目も耳も釘付けにしてしまうフレンチ・ロック・バンド、FANCY。スーパー・スキニーにアフロ・ヘアのジェシー、ニュー・ロマンティックな風貌のライ、そして性別さえも非公開、取材中は一言も発しないというモム…と、他のどんなバンドにもたとえようのないような強烈な個性を持った3人だ。

ハイトーンなヴォーカルとスウィートなメロディが絡むグラマラスでファンキーなロックは一度耳にこびりついたら離れない。ジェシーは昨年のダンス・フロア~ラジオのワールドワイド・アンセムともいえるJUSTICEのヒット曲『D.A.N.C.E.』の共作者であることからも、そのキャッチーなセンスは実証済みである。さらにそのJUSTICEをして「世界最強のバンド」といわしめ、ツアーのサポートにも指名しその“魅せる”ステージでオーディエンスを熱狂させてきた。すでに夏にはフジロックでの再来日も決まっているという彼らが、デビュー・アルバムのリリースにあわせて急遽来日した。タイトル『LES ROIS DU MONDE』は『THE KINGS OF THE WORLD』の意味である。自ら自信満々に「世界の王者」を名乗る彼らの話しを聞いた。

──
まず、この強烈な個性の3人がどの様に出会ってバンドを結成するに至ったのかを教えてください。
ライ (以下: R )
「僕らはこの強烈な個性だからこそ、出会うべくして出会えたんだと思うよ。まずジェシーとモムは高校生のときからの知り合いで、バンドを組んでいたんだ。そのバンドのライヴの際、僕はそのあまりにかっこよさにシビれてしまって、気がついたらステージに飛び入りしていたんだ。そこである種の化学反応が起きて、今のFANCYが生まれたというわけさ」
──
3人があらゆる時代、あらゆるジャンルの音楽が好きという話は聞いていて、実際その音やルックスにも現れていると思うんだけれど、FANCYとしてのバンドの音楽性というのはどのようにフォーカスされていったのでしょう?
ジェシー (以下: J )
「僕らはとにかく音楽が大好きで、ジャズやクラシックからヘヴィ・メタル、シャンソン、ヒット・ソングまで節操なく聴きまくっていたんだ。同時にこれはいわゆる戦隊ヒーローものの影響なのか、そんなあらゆる種類の音楽を好きな僕ら3人が力を合わせれば最強…みたいなアイデアがあるのかも知れないね(笑)──というわけで、僕ら3人の広いバックグラウンドをすべて合わせたからこそFANCYのユニークでビッグで信じられないような音楽性が生まれたというわけさ」
──
FANCYの音楽性は確かに雑多な影響が読み取れるけれど、最終的にはいわゆるオーセンティックなロックの様式に倣っていると思うんです。それこそ'70年代~'80年代のロック・スターがいた時代のような。実際今のパリで、君らの周りにはJUSTICEもいるし、シーンとしてはエレクトロが全盛で、彼らのようにエレクトロの手法をつかって“ロックする”という方法もあったと思うんです。でも、あえてそこはリミックスなどに任せて、古典的なロックに進んだのをとても潔いと感じました。
R :
「君のいう通り、今パリではエレクトロは大きな波だ。ギターの音を使ってエレクトロ風のトラックに仕上げるのは簡単で、そうすれば売れて注目を浴びるのも分かっている。ペドロのリミックスなどでのそのシーンへの目配せは忘れなかったつもりだけれども、はっきり言うと僕ら、王者のFANCYに、そんなシーンにすり寄っていく必要なんてないからね(笑)。JUSTICEが僕らをサポート・アクトに抜擢してくれたり、ペドロ(BUSY P・ウィンター)がリミックスしてくれたりと、彼らの協力には心から感謝しているし、僕らが彼らにインスピレーションを与えているのもうれしく思うよ」
──
(笑)インスピレーションを与えている?
J :
「本当さ。ジャスティスのアルバムの中にSHOUT TOのリストの中にマイケル・ジャクソンに並んで僕らの名前を見つけてみてくれよ」