The Gossip
ポップカルチャーにおいて現在最も注目されるThe Gossip のBeth Dittoが語る「シーンにおける自身の姿」
08 1/21 UP
Text:honeyee.com Photo:Shoichi Kajino(atelier L'APPAREIL-PHOTO)
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- 『Standing In The Way Of Control』のSOULWAXリミックスもすごく衝撃的だったんですが、オリジナルバージョンやライブアルバムに収録されているテイクもものすごくパワフルだなと感じました。とくにライブアルバムはThe Gossipのバンドとしてのアイデンティティや、あなた方の背後にあるカルチャーを充分に感じることができると思います。それは他のニュー・レイブ・シーンのアーティストとはまた別のものですね。
- B:
- バンドメンバーそれぞれが異なる音楽や、カルチャーから影響を受けていて、The Gossipではそれぞれが影響を受けた様々な要素を持ち合って、それらを融合させた音作りをするので、結果的にメンバーの視野が広がって、それがバンドとしてのアイデンティティを形成するうえでのポイントになるんです。私の声とBraceのギターとHannahのドラムを上手く融合させて、やりたい音楽を、ごちゃごちゃしたものではなくて、コンパクトに表現できていると思うんです。さらに付け加えると、『パンクをやっているんだから、パソコンなんか使わないぜ!』と言う人もいるけれど、もともと自分達がやっている音楽のジャンルがあったとしても、リミックスひとつで異なる次の扉を開くことができることが重要というか。例えば、パンクしか聴かない人達がいたとしたら、リミックスによってエレクトロやダンスミュージックの扉を開けるようになるだろうし、逆に、エレクトロやダンスミュージックしか聴かない人達も、パンクの扉を開けるようになるだろうし。私達にとって、そういった意味でとても大きな存在だったのがNirvanaだったんですが、グランジ・シーンが大きくなった時に、Nirvanaの存在によってアンダーグラウンドシーンの扉を開くことができたんです。それは私達だけではなくて、色々な人達にとっても同じような影響を与えたと思うんですが、そういったことも音楽の魅力だと思うんです。そこを忘れがちなアーティストもいますけど……、自分の居心地の良い場所があったら、そこから抜け出すのは難しいですから。
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- Nirvanaの話があがりましたが、現在、あなた方はいわゆるインディーのロックシーンとエレクトロ、ダンスミュージックシーンの交差点に、言ってみれば流行の先端に存在していますよね。しかし、実際にTheGossipというバンドは作品の中に社会的なメッセージも含んだ正統派ロックバンドであるというか、知れば知るほど、久しぶりに現れた本格派ロックの後継者という感じがして、そこに興味を覚えるのですが。
- B:
- 80年代を振り返ってみた時に、Dead Kennedysがいたり、EXPLOITEDがいたり、衝撃的なポップカルチャーがありましたよね。2000年代だったら考えられないけれど、地上波で Boy Georgeが流れているという、そういうことがあった時代。ここ最近は、´N SynkやBackstreet Boys、Britney Spearsのような深みの無いポップカルチャーがあって、「いい曲は、いい曲だよね」という感じはあるけど、そこで終わっていた感じがするんですよ。現在のアメリカという国にはもっと中身のあるカルチャーが必要だと私は思ってるんです。ここ8年を振り返ってみた時に、戦争を強いられた国民がいて、大統領もいつの間にか決まっていて、それで未来に不安を抱えた国民がいる中で、メインストリームの大多数はポップカルチャーや、アートシーンなどから何らかのメッセージを求めていると思うんです、有名な人からの大きなムーブメントを……。90年代にはグランジ・シーンがあって、私達はグランジ・シーンで育った世代だけど、その世代が一人前になって、そして表舞台に出てきている。暫くメッセージ性の無いカルチャーが続いた後に、私達の世代に時代が回ってきて、久々に中身のあるカルチャーというか、意味あるものを表現できる時代になってきていると思うんです。「政治的な発言をするのはクールでない」という時代から、再びNirvanaが活躍した時のような時代がやってきていて、政治的な発言や、メッセージ性が強いものを世間が求めているのであれば、それを私達が頑張って伝えていかなければいけないと思っていて。でも、また10年後には「政治的なメッセージなんていらない」という中身の無いポップカルチャーが台頭するかもしれませんが。
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- 政治的なメッセージについての話がでましたが、The Gossipの場合、大上段から構えての体制批判ではなく、セクシャリティーに代表されるあなた自身のパーソナルなことを世に問いかけていくというやり方でしよね。そして、それが今日的な政治性の正しい表現なのかなと思うのですが。
- B :
- その通りだと思います。パーソナルなことを世間に問いかけていくというやり方は、The Gossipのスタイルというか、新しいスタイルだと思います。私はパーソナルであることがポリティカルであると信じてます。まだアイディア段階ですが、左翼系というか、そういう人達を集めて、60年代、70年代にあったような「未来をどのように迎えるか」を真剣に考えるような機会というか、大きなフェスを開催したいなと考えているんです。パーソナルなことを問いかけていって、それに対するレスポンスを得るというやり方で。
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- そこで質問なんですが、あなた方が契約を交わしたRick Rubinの新しいレーベルというのは、コンセプトがゲイ・ミュージックというカテゴリーですよね。ゲイ・ミュージックというレーベルのコンセプトと自分達の活動を上手く合わせていけそうな感じはしますか?
- B :
- ゲイ・レーベルということに関してだけど、ゲイに関して真面目に捉えてくれている感じはする。今までの世の中は、ゲイとストレートが分け隔てられてきた事実があって、ゲイは変わり者、そして差別の対象とされてきましたよね。過去にアンダーグラウンドでは、「ゲイもストレートも同じカルチャーの中にいて、それは普通のことなんだ」という動きがあったけど、今度は、オーバーグラウンドでもそのような動きがみられるんじゃないかなと思います。
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- 一般に、ですけれども、ゲイ・レーベルというコネセプト、あるいはThe Gossipというバンド自体に対してある種のセンセーショナリズムを感じる人は多いと思うんです。実際、あなたがNMEで披露したヌードフォトセッションはある種のスキャンダルと受け取られるでしょう。あなた自身、そうしたスキャンダリズムを利用してやろうという、つまりSex Pistols的というか、その意味で伝統的なロックの手法だと思うのですが、メディアを利用することで自分達の影響力を浸透させていこうとしていう戦略をはっきりと意識しているのではないですか?
- B :
- そうですね。結構見落とされがちですけど、パンクというものはストラテジックに計画されたものでもあるんですよ。センセーショナリズムはメディアが作り上げるもので、そのメディアを逆に利用してやろうというのがパンク精神だと思うんです。自分達がメディアに使われるばかりではなく、自分達がメディアを使ってやろうというゲーム感覚を持った方が楽しいし、その方が自分にとっていいんです。メインストリームのメディアからみたら、アンダーグラウンドシーンは金儲けの要素がたくさんある。そういった意味において、現在CSSやKlaxonsが存在するのはメディアがピックアップしてくれたからというのもあるんですけれど。メディアからみたポップカルチャーが金儲けのためものであるなら、それを逆手にとってやろうという感じですね。