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THINK PIECE

PLAY GTAIV TO THE LIMIT

ゲームの限界領域を突破する
"Grand Theft Auto"シリーズ最新作

08 11/20 UP

Text:Kohei Onuki

クライムアクションゲームの金字塔、Grand Theft Auto(以下GTA)シリーズの最新作『GTAIV』が遂に日本上陸。
「殺される前に殺れ!!」がGTAのルール。その過剰なまでのアクションは世界のプレイヤーを狂喜させる。
しかし、このゲームの魅力はアクションという「非日常」的要素だけではなく、
「日常の世界」を構成するあらゆるファクターを極限までリアルに再現し、
単にアクションゲームという枠を超えた新たなエンタテインメントの形を創造している点にある。
GTAIVに見る次世代のゲームの形とは? 開発担当者、ジェロニモ・バレーラ氏にインタビューを敢行。

 

──
まずストーリーについてお聞きしたいのですが、本作はどのような道筋をたどってもハッピーエンドで終わらないし、物語のベースとなっているのはNYで生きる移民の人達の厳しい現実ですよね。なぜストーリーをダークでシリアスな展開にしたんですか?
「身近なところで起こる犯罪や、ギャング映画にインスパイアされて、これまでのGTAは作られてきたんですけど、GTAIVでは『これまでとは違うものを作ろう』ということで、主人公の設定をこれまでのギャングやマフィアではなく、アメリカンドリームを求めてNYに来た移民にしたんですよ。夢を求めてアメリカに来たのはいいが、そこには母国よりも厳しい現実が待ち構えていた、ということです。スタッフの中には海外からNYに移り住んだ者が多いので、移民の立場から見てきたもの、感じてきたものが作品に反映されていますね。ストーリーの終わり方も決してハッピーなものではない。この作品は子供向けの『全ては丸くおさまります』というものではなく、大人向けのものなんですよ。主人公のニコがゲームの中で女性と恋に落ちることもあれば、友人と思いこんでいたキャラクターに裏切られることもある。様々なストーリーが積み重なることでゲームが洗練されていくんです」
──
映画に匹敵する程のストーリー展開がこのゲームの魅力ですよね。例えば映画なら、脚本家を中心にストーリーが構成されますけど、ゲームの場合はどのような過程を経てストーリーが出来上がるんですか?
「それは映画以上に複雑ですよ。はじめにディレクターのダン・ハウザーが大まかなアイディアを出して、それをもとに脚本家がストーリーを仕上げるんですけど、映画の脚本が200ページで構成されているとしたら、このゲームに関しては、全体を通すと数千というページ数が必要になりますね。ゲームでは様々なストーリーが同時に進行しますから。それに同時進行するストーリーが交錯していくなかでは、どうしても『穴』や『矛盾』が出てくるので、それをプログラマーが修正していくんです」

 

──
メイン以外のキャラクターのディテールにもこだわりを感じますけど、それを詰めていくのは膨大な作業量になるんじゃないですか?
「例えばキャラクターが着ている洋服があるじゃないですか、その洋服は実際のものをスキャンして作っているんですよ。キャラクター作りにはちゃんと衣裳係もいて、『このキャラクターにはこの洋服が合う』という話をして作るんです。ダウンジャケットだったら、実在する人気ブランドのアイテムをスキャンしたりして」

──
なるほど。主人公が身に付けているものの良し悪しがミッションの遂行に影響を与えたりするんですよね。
「そうですね。弁護士に会いに行く時は、ちゃんとしたスーツを着ていないと警備員に止められちゃいますよ(笑)」
──
自社で開発した新たなゲームエンジン『RAGE』もリアリティの追求には役立っているんですか?
「肌の質感を本物のように再現することや、洋服のラインをキャラクターの体型に合わせた形で表現出来るようになりましたね。膨大な情報をゲームの中に詰め込めるようになったので」
──
グラフィックはかなりリアルですし、迫りくる映像の迫力には驚かされました。
「次世代機用の作品を作るということで、当初はスケールの大きなものを想像していた人が多くいたようなんですけど、僕達としては細かなディテールを追求することに全力を注ぎましたね。作品の舞台となるリバティー・シティ全体のディテールを主人公と同じレベルにまで引き上げたかったので」