honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

Julian Opie

「世界をどう見るか、見るとはどういうことなのか」
ジュリアン・オピーのフィロソフィーを探る

08 8/12 UP

Text:Naoko Aono

2000年に発表されたイギリスのロックバンド、BlurのアルバムジャケットやSCAI THE BATHHOUSEでの展覧会などで、日本でも人気の高いジュリアン・オピー。彼自身も浮世絵をコレクションするなど、日本への関心は深い。その彼の日本の美術館では初めての個展が水戸芸術館で開かれている。ほとんどがここ1〜2年の間に作られた近作だが、絵画だけでなくLEDやコンピュータによる映像や立体作品まで表現方法は幅広い。

Julian Opie/ジュリアン・オピー

アーティスト。1958年ロンドン生まれ。1982年ロンドン大学ゴールドスミス校卒業。90年代から道路標識のように簡略化されたポートレイトを制作している。2008年10月5日まで水戸芸術館現代美術ギャラリーで個展「ジュリアン・オピー」を開催中。
http://www.arttowermito.or.jp/

【ページトップの画像】
『Jack and Suzanne walking.』 2007 © Julian Opie,SCAI THE BATHHOUSE and Lisson Gallery
【左から】
『Julian with arms crossed. 1』 2005 © Julian Opie,SCAI THE BATHHOUSE and Lisson Gallery
『Ruth with cigarette 2.』 2005 © Julian Opie,SCAI THE BATHHOUSE and Lisson Gallery
『Jack,printer.profile right.』 2007 © Julian Opie,SCAI THE BATHHOUSE and Lisson Gallery
『Shahnoza, pole dancer.』 2007 © Julian Opie,SCAI THE BATHHOUSE and Lisson Gallery

 

──
あなたの作品はポップでとても現代的に見えるけれど、クラシックな絵画のスタイルを引用しているそうですね。
「たとえば三人の女性を描いた『まばたきするハナ、ロッティー、エスター』という作品は喜多川歌麿『寛政の三美人』の構図を借りたものだ。別の作品では 17〜18世紀のオランダで流行した家族の肖像画を下敷きにしている。古い絵画に描かれた人々と、僕が描いている現代の人々とは似ているところもあれば違うところもある。昔の絵画の様式を引用することで、過去と今のつながりを意識させたいんだ」
──
立体はもちろん、平面作品でもよく見ると切り絵だったり、フロッキー加工(毛羽だったような効果のある印刷)だったり、カッティングしたビニールテープを壁に貼り付けたりとさまざまな素材を使っています。
「フロッキー加工はポールダンサーのシャノーザを描いたシリーズに使ったんだけれど、彼女の官能的なポーズやセクシーさを表現するのにはキャンバスにペイントするよりこちらのほうがいいと思ったんだ。他の作品でもそういったことを考えて、最適だと思われる素材を使っている。その意味では僕の作品は平面であっても彫刻だと考えてもらった方がいいかもしれない」
──
同じ部屋の床には石の表面に彫刻された「石でできたシャノーザ」がありますね。
「これは日本の墓からインスピレーションを受けたものなんだ。この彫刻は三つの石からできていて、躍動感のある身体の身体に沿っている。ポールダンサーというセクシーなモチーフが、墓石のような素材に刻まれているのって究極の対比だろう。この展示室は天井にピラミッド状の天窓がある。だからこの部屋にはモノクロームの作品を置いたんだ」

水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景