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THINK PIECE

Smart Bands to Watch

VOL.5 MGMT
極彩色に塗りたくられた21世紀のサイケデリア

08 10/21 UP

Text:Misho Matsue Live Photo:Ryota Mori

フレーミング・リップス、オブ・モントリオール、アニマル・コレクティヴなど、
クセはありつつも中毒性の高いポップミュージックにおいて懐の深いアメリカはブルックリンから、
また一組、話題のバンドが登場した。
デイヴ・フリッドマンによるプロデュースのもと、今年のポップアンセムとなった「Kids」、
ロックスターの退廃をアイロニックに描いた「Time to Pretend」などを収録したデビューアルバム
『オラキュラー・スペクタキュラー』でシーンに躍り出たMGMT(エム・ジー・エム・ティー)だ。
先行きの見えない時代への不安も影響するのか、別世界に飛ばされるようなスペーシーなサウンドと
オルタナティブな世界の提示に、多くのリスナーが引き寄せられているようだ。
パフォーマンスが期待されたサマーソニックでの出演を終え、その音楽性、そしてNYの街について、
フロントマンのアンドリューが語ってくれた。

MGMT

2002年、大学で音楽を学んでいたアンドリュー・ヴァン・ウィンガーデンとベン・ゴールドワッサーによって結成。2007年、『オラキュラー・スペクタキュラー』でアルバムデビューすると、欧米のメディアによって絶賛、また新人ながらBECK、RADIOHEADのツアーをサポートするなど、大きな注目を浴びている。12月に単独来日ツアーを予定。

http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/SR/mgmt
http://www.whoismgmt.com/
http://www.myspace.com/mgmt

 

──
日本の感想を教えてください。
「まず大阪に3日間滞在したんだけど、フェスの出演含めて楽しかったし、そして暑かったね。歩き回っておいしいものも食べて、買い物もしたよ。それから東京に移動したんだけど、オーディエンスはさらに数が多くてエネルギーを感じたし、僕たちの音楽をあんなにたくさんの人が知っているなんて驚いたよ」
──
初めてライブを拝見したのですが、ハードロックを思わせるバンドスタイルで、CDとはずいぶん印象が違いますね。このギャップというかアレンジは意図的なものなのでしょうか?
「レコーディングの時はもしかしたらちょっと弱気だったかもしれないんだけど、5人編成でのステージを重ねるうちにスタイルが進化しているんじゃないかな。それからライブには、自分が影響を受けたり最近聞いている音楽が反映されやすいと思うんだ。敢えてそうしているわけではないんだけど、ハードロック的な演奏って楽しいんだよ(笑)」
──
そのエネルギーを受け取れるのとともに、MGMTの魅力である美しいメロディもしっかり堪能できるのがすごくよかったです。
「ツアーで世界中をまわり、毎日のようにプレイするうちにミュージシャンとしてのスキルも上がってきたことで、余裕が生まれて僕たちも気持ちよく演奏できるようになったんだ。その結果、曲自体も自然にベストな形になってきているんじゃないかな」

 

──
では、世界的な評価を受けるきっかけとなったアルバム『オラキュラー・スペクタキュラー』についてお伺いします。以前はもっとエクスペリメンタルな音楽に傾倒していたとのことですが、このアルバムはメロディをカラフルに響かせたポップな仕上がりですよね。ここにはどんな心境の変化があったのでしょうか?
「初めのうちはほとんどジョークというか、遊びのつもりで音楽をやっていたからそういう意味では実験的だったと思う。でもだんだん、純粋にいい音楽を作りたいと考えが変わってきて、サウンドに磨きをかけたりよく考えたりするようになったんだ。今でも実験的なスピリットは忘れていないけれど、以前に比べるともっとさりげない形でアレンジや曲の構造に表れていると思うよ。ラジオでオンエアされるような音楽でありつつ、かといってどこにでもあるようなメインストリームのポップソングではない、僕たちなりの型破りな新しいポップを作りたかったんだ」

──
あなたにとって、「ラジオでも流れるポップミュージック」というのは具体的にはどんな音楽を指しますか?
「僕自身は、80〜90年代半ばくらいまでの音楽に影響されていると思う。両親はトーキング・ヘッズ、プリンスやシンディ・ローパーなんかを家でかけていて、僕は世代的にもMTVキッズだったから、ニルヴァーナやパール・ジャム、あるいはスヌープ・ドッグやドクター・ドレ、その他PVのある音楽は自然と耳に入ってきたんだ。サウンドに直接影響しているわけではないんだけど、こういった音楽に対して抵抗がなかったから、ポップソングにチャレンジすることが怖くないのかもしれないな」
──
次に歌詞について。全体的にメランコリックな雰囲気を感じたのと、ビジュアル化しやすいイメージのコラージュで組み立てられているように思いました。言葉という領域において、詩なり文学なりに意識的に触れてきたのですか? それともあなたの内的世界を描写しているのでしょうか?
「どちらでもあるかな。まず曲ができて、それから歌詞を乗せていくんだけど、例えば響きのいい言葉をどこに入れるかのところで戸惑ってしまったりすると、その辺に置いてある本を手に取ってみるんだ。このアルバムを作っていた時は80年代のナショナル・パークについての本やホイットマンの『草の葉』を眺めていたよ。でも本からだけじゃなくて、映画を見ても他のアーティストの音楽を聞いても何かしらインスパイアされるものはあるかもしれないし、一概には言えないんだけど。作詞家として一番好きなのはニール・ヤングで、彼のとにかく書き続けて後から編集したり手を加えたりしない、というシンプルなスタイルにすごく憧れるよ」