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THINK PIECE

THE COMPLETE STUDIO

アジア特有の勢いとモラルを兼ね備えた台湾を舞台に、
岡沢高宏が、店作りを通じて、伝えたかった想いとは。

08 7/15 UP

Text:Hiroshi Yamamoto Photo:Shoichi Kajino

今年の1月、台湾・台北にオープンしたショップ『THE COMPLETE STUDIO』。
東京を代表するブランド、クリエーションが集結した同ショップを
オーガーナイズしたのはご存じ、岡沢高宏。
異国の地を舞台に、空間作りを通して、彼が込めた想いとは。
岡沢高宏へのインタビューに加え関係者の証言を交え、その深層を探る。


──
まず、岡沢さんにとって台湾・台北という街にどのような印象を持っていたのでしょうか?
岡沢高宏(以下: O )
「近年のアジア特有の勢いがあるのは当然なのですが、そのなかにモラルを持っている。きちんと話をすれば、突っ走るのではなく、一度止まり、考えて、行動してくれる。そういう人間性に惹かれたからこそ、一緒に仕事をしようと思えたんですよね。それと歴史上、国として日本だった時期もあったので、日本人に対してとても尊敬の念が強い。今回のショップ作りを通じて、そういう部分は節々に感じました」
──
実際に台湾で、店を作ることになった経緯を教えてください。
O :
「初めて台湾を訪れたのが7年くらい前。それからSMART MAX台湾版が創刊されたときにも、招待して頂いて。そのときに『THE COMPLETE STUDIO』のパートナーであるRPM NETWORKの方々にお会いして、実際に取引もするようになって…、という感じですね。当初から『何か手掛けて欲しい』という話はあったんですが、東京の洋服を売っているだけのお店は作りたくなかったので、徐々に構想を固めていきました」
──
店作りをするうえで、心がけたことなどはあるのですか?
O :
「僕のブランド自体、東京でもオンリーショップを展開していくスタンスではないので、セレクトショップかなと。ただ、先ほど話したように東京のブランドを置くだけの店にはしたくはなかった。たとえ同じ洋服を買い、着ていても、感じる取るものが変わってくる。やっぱり環境が違うので、価値観のズレは必ずありますからね。従来のやり方だと、最終的には違う価値観なのに共有したつもりになってしまう、と思ったんです。今は良くも悪くもシンクロできるタイミングなので、きちんと東京と台北がリンクするような、共有できる空間を作ろうと心がけました」

 

──
台湾のスタッフから求められていたことはありましたか?
O :
「僕のやりたいと思うことを自由にやってほしい、と言う一方で、ただ消費するためではなく発信する空間にしてほしい、と」
──
そこで山本宇一さんや形見一郎さんのような、東京のエッセンスを持った方々の力が必要になってくる。
O :
「そうですね。僕自身がよく行く東京のカフェを手掛けているのが、彼ら。彼らの協力を得たことで、僕が日々感じている『東京』の雰囲気や空気感を、空間を通してきちんと伝えられたと思います」

──
スティルシークエンスの復活も驚きの1つだと思うのですが。
O :
「(渡辺)陽平くんは最初の企画段階から参加して、キュレーション的立ち位置でサポートしてもらいました。スティルシークエンスもそうだけど彼の感性が昔から好きだったし、僕の持っていない東京っぽさもそこにはあって、今の台北だからこそ、やる意義があるのかなと。洋服だけでなく、ガジェット類、CDや本といった物からも、僕らの今の好奇心をそのまま伝えられると思ったので。」
──
洋服に関して言うと、岡沢さん自身のブランドはもちろんですが、visvimやSOPHNET.、NEXUSVII®、TENDERLOIN、GOODENOUGHなど、東京を代表するブランドが集結しています。
O :
「どれも僕が良いと思えるブランドですね。すべて僕から声を掛けさせてもらったのですが、どのブランドも台北の情報が少ないなか、協力してもらえたことには、とても感謝しています。実際に台北においての東京ブランドは若者に人気が集まっています。けど、『THE COMPLETE STUDIO』では年配の方にもゆっくりと見てもらえると思います」