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THINK PIECE

THE KILLS

ブルージーで退廃的なサウンドを放つ真のロック・バンド

08 5/7 UP

Text:Mayumi Horiguchi Photo:Shoichi Kajino

ザ・キルズは、本当に「パンク」で「ロック」なバンドだ。ギター&ヴォーカルという、ソリッドでタイトな構成。ブルージーで退廃的なサウンド。そして絶対にぬぐい去れない「暗さ」。どれもが、たまらなくセクシー。R&Rの持つ魔力を常に放ち続けているバンドである。英米ではデビュー当時から、ものすごく評価も人気も高いバンドだが、ここ日本では今ひとつ地味な存在だった。その事実に常々不満だったが、ギターのジェイミーがケイト・モスの恋人としてメディアに登場し、突如日本でも注目度がアップ。その理由はともあれ、彼らが「話題のバンド」扱いされるようになったのは、喜ばしい限りだ。なぜなら、ザ・キルズの音楽は本当に素晴らしいのだから!! いまだ噂でしかザ・キルズを知らないアナタは、今すぐ新作『ミッドナイト・ブーム』を聴くべし! 必聴モノの傑作である。来日した二人に、その新アルバムの制作にまつわる話をはじめ、色々語ってもらった。

The Kills / ザ・キルズ

英ロンドン出身のジェイミー・“ホテル”・ハインス(G & Vo)と、米フロリダ出身のアリソン・“ヴィヴィ”・モシャート(Vo)による男女ユニット。2001年に英レーベル、ドミノと契約。2002年にEP 『Black Rooster』をリリースし、デビュー。英米の音楽メディアから絶賛を博す。プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが「2003年最高のバンド」とコメントしたことは有名。2003年にファースト・アルバム『キープ・オン・ユア・ミーン・サイド』、2005年にセカンド・アルバム『ノー・ワウ』を発表。いずれも高い評価を受ける。今年3月12日に、約3年ぶりとなるニュー・アルバム『ミッドナイト・ブーム』をリリース。同作には、スパンク・ロックの“アルマーニ・トリプルエクスチェンジ”ことアレックス・エプトンも参加。

http://www.thekills.tv/
http://www.myspace.com/thekills

 

──
『ミッドナイト・ブーム』には12曲が収録されていますが、すべて短い曲ですね。まるで、ラモーンズのように。
ジェイミー(以下: J )
「(笑)そう。でも、故意に短くしたわけじゃない。俺たちが内に抱えるエネルギーが、そういう形で反映されたんだと思う。即座に放出されるべき、膨大な量のエネルギーを表現した結果なんだ。このアルバムを作る前、俺たちは疲れ果てていた。精神的に消耗しきっていたんだ。1年半ツアーに出っぱなしで、同じ曲を、いろんな場所で何度も何度も演奏し続けて……永遠に巡業中の人生なんて、マジあり得ないね」
──
それで休養を取るためにメキシコに行ったんですか?
J :
「そう。でもメキシコは短期間だよ」
アリソン(以下: A )
「最後にちょっとだけって感じよ」
J :
「基本的には、ミシガン州のベントン・ハーバーという街ばかりに行ってた。そこで友達が経営しているスタジオ、キー・クラブに入り浸って、創作やレコーディングをし続けたんだ」
A :
「ツアー中は、曲を書く気分にはならないわ。プライバシーもないし」
J :
「曲作りというのは『秘め事』でなくてはならないんだよ」
──
新アルバムのタイトルは、ジャック・ケルアックの小説「地下街の人びと」(原題:The Subterraneans)から取られたそうですが、レコーディングは、主に深夜から朝にかけて行われていたとか。そのこともタイトルの由来になってるんですか?
A :
「ええ。一晩中起きて作業して、昼間はずっと寝てたわ(笑)。スタジオは、私たちのセカンド・ホームみたいなものだった」
J :
「そもそも、子供の時から、創作活動するのはいつでも夜だったよ。昼間に作業をするなんて、ファッキン・ジョーク! 人々が眠りについている時間にはマジックがあって、魅力的な創作物を生み出すことが可能になるのさ」