THE KILLS
ブルージーで退廃的なサウンドを放つ真のロック・バンド
08 5/7 UP
Text:Mayumi Horiguchi Photo:Shoichi Kajino
- ──
- 今作を制作中、特定の音楽や物事からインスピレーションを受けたりしましたか?
- J :
- 「音楽からはないね。自分自身の内側にあるものを見つめて、それを外側に出しているから。『ロックンロールの古い概念』を形にしたかったんだよ。みんな “Oh! お前ってロックだぜ”とか、“そのジャケット、ロックンロールじゃん”とか言うけど、じゃあ、『ロック・バンドであること』の意味はなんなんだ?! ってことをね。『Pizza Pizza Daddy-O』っていう、人類学の研究資料であるドキュメンタリーにはインスパイアされたよ。60年代のアメリカに関する資料映像で、子供たちが遊び場で、プレイグラウンド・ソングを歌ってるんだけど、歌詞の内容がワイルドで、ダークで、残酷なんだ。堕胎、家庭内暴力、アルコール依存症について歌われている。歪んでるのさ。だけど、曲調はハッピーなんだ。これらの曲を初めて聴いた時には、既にアルバム収録曲は出来上がっていたから、作る際の参考になったってわけじゃないが、聴いているうちに、突如、見抜いたんだ——“ここにはザ・キルズがある!”、“これはザ・キルズに属するものだ”ってね。俺にとっての完璧な歌詞っていうのは、直接的に何かを表現してはいないが、その詩を歌い始めると同時に、伝えたいことが何だったのかを、自分自身で悟ることが出来るといったもの。だから気に入ったね。俺に強烈な印象を残したよ。今作の収録曲で、世界観が近いのは"Cheap And Cheerful"、"Sour Cherry"、"Getting Down"、"Alphabet Pony"だな……」
- A :
- 「"M.E.X.I.C.O."もそうよ!」
- J :
- 「ああ、そうだな」
- ──
- サウンド面に関して、レゲエのベースラインや、スカの影響などを感じたんですが。
- J :
- それらのサウンドの『感触』は、俺たちの楽曲の中に存在している。でも、意図的にそうしたわけじゃない。レゲエ、スカ、ロック、ブルース——偶然に、あらゆる種類の音楽が、俺たちの曲の中に入ったんだ。俺たちは、既に存在しているすべての音楽を、また発明しているのさ」
- ──
- 古いヒップホップのドラム・シーケンサーであるMPC-60を使って、リズムを作ったそうですね。
- J :
- 「そう。MPCはずっと長いこと忘れられていた。ヒップホップと技術革新は、常に同時に進んでいったからね。俺たち以外のロック・バンドは、誰もMPCを使ってないと思うよ。俺は金がないから、いつも安い物や壊れたものをe-ベイで買って、修理して使ってるんだけど、こういう古い機材を使って音作りをすることに、すごく魅了されているよ」