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THINK PIECE

Smart Bands to Watch

VOL.2 THE TING TINGS
D.I.Y.精神が成功の秘訣?! 世界を魅了する男女ユニット

08 10/7 UP

Text:Mayumi Horiguchi Live Photo:Ryota Mori

初めてザ・ティン・ティンズの曲「グレイトDJ」のプロモーション・ビデオを観た時は、なんとも言えない不思議な感覚に襲われた。
チャート番組に登場する他のアーティストやバンドのPVとは、明らかに何かが異なっていたからだ。
楽曲的な面でいうと、そのエレクトロ・ポップには奇妙な中毒性があり、映像に関しては、その「手作り感」に何ともいえない
レトロかつ斬新な味があり、逆に最先端の映像よりも衝撃的だったほど。他の人々も同様な感想を持ったようだ。
曲作りや演奏はもちろん、アルバム・ジャケットやミュージック・ビデオまで自分たちで手掛けてしまうそのD.I.Y.精神は、
全世界の人々を惹きつけた。
デビュー・アルバム『ウィ・スターテッド・ナッシング』は、UKアルバム・チャート、シングル・チャート共に初登場No.1を記録。
収録曲の「シャット・アップ・アンド・レット・ミー・ゴー」は、iPod+iTunesの新CMソングに抜擢され、さらに今年の
"MTV VIDEO MUSIC AWARDS 2008"では、最優秀ビデオ賞(VIDEO OF THE YEAR)にノミネート。
何もかもが順風満帆のようなこの二人──だが、実は「苦労人」だったのだ! 2008年要注目の新人が語る「成功の秘訣」とは?!

The Ting Tings / ザ・ティン・ティンズ

英マンチェスター出身の23歳・ケイティ・ホワイト(Vo, G, B, Dr.)と、ロンドン出身の33歳・ジュールズ・デ・マルティーノ(Dr, Vo)による男女ユニット。2006年結成。地元であるマンチェスターのパーティ・シーンにて、そのオリジナルなD.I.Y.スタイルが「クールかつキュート」と話題になり、口コミで大人気となる。まだインディーだった時に、マイスペースやユーチューブ、英グラストンベリー・フェスティバルのパフォーマンス等で注目を浴び、結果メジャー各社の争奪戦が勃発! あのリック・ルービンからは直々のラブコールを受け、前代未聞の英国・米国、それぞれ2カ国との直接原盤契約を結んでしまった驚異的新人。

http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/thetingtings/
http://www.thetingtings.com/
http://www.myspace.com/thetingtings

 

──
実はこの二人、ザ・ティン・ティンズ結成以前に、ディア・エスキモー(Dear Eskiimo)という3人組バンドとして、既にメジャー・デビューしていた。ケイティはそれ以前に、友人二人と共にガールズ・グループ、TKOをやっていたが、そのバンド活動中に、現在のパートナーであるジュールズと出会ったそうだ。
ケイティ (以下: K )
「ロンドンのリハーサル・スタジオで知り合ったの。ジュールズはその時、別のバンドやってたんだっけ?」
ジュールズ (以下: J )
「いや、単にセッションしてただけだよ」
K :
「私の訛りを聞いて、"ねえ、君ってマンチェスター出身?!"って話しかけてきたの」

J :
「僕は元々、ロンドン出身なんだけど、マンチェスターに友だちがいっぱいいてね。そこでの出会いをきっかけに、お互いに手紙を交換するようになって、僕は二都市間を頻繁に行き来するようになったんだ。そして、結局、マンチェスターに長期滞在することになったのさ。前のバンドの時は、今よりメンバーは多かった。でも、活気溢れるパフォーマンスさえ実現出来るんだったら、僕ら二人だけで十分だって悟ったんだ。メンバーが多いと、意見の相違も起こりやすいし。本当にやりたいことをやるためには、逆に二人だけの方が良いと思ったのさ。例えば、ケイティがギターを始めたのは、ほんの一年前ぐらいだけど、僕らのライヴ、エネルギーに満ちてて凄かっただろ?! そういうライヴを実現さえできれば、メンバーは僕ら二人だけで十分なんだよね」
──
その言葉通り、サマーソニック08でのライヴは、集まった日本の観客を魅了した。
J :
「大阪と東京のサマーソニックでプレイしたんだけど、めちゃくちゃよかったよ。日本のオーディエンスには驚かされたね。僕らは午前11時半からプレイしたんだけど、あれほど多くの人たちが来てくれるとは思っていなかった。みんな、すごくエネルギッシュで、盛り上がってくれた。観客が僕たちにエネルギーを分けてくれたから、パフォーマンスを続けられたんだ。本当は僕たちは朝がすごく苦手で、パワーが出ないからね」
K :
「とにかく、本能に従うことが一番だって悟ったのよね。ナチュラルなのが一番よ!」

 

J :
「今はテクノロジーが発達してるしね。例えば、オアシスみたいなギター・バンドが、ここ15年の間は世間を席巻していた。でも、今はアイデアさえあれば、レコードは作れるし、バンドもやれるんだ。二人だけで、スタジオにこもりながらテクノロジーを駆使して作った楽曲が、ステージ上でも実現可能なのさ。例えば僕らのライヴでは、ループとか、フッドペダルを多用してる。そこにありったけのエネルギーを注入するのがポイントさ……」
K :
「パンキーなライヴが好きなの! 私たちはポップ・ソングを作ってるけど、ステージ上ではパンクな要素を入れることが不可欠ね!」
J :
「二人しかいないから、その点は重要だよね。僕はビッグなショウが好きなんだよ。例えば、フレディ・マーキュリーとか、エルヴィス・プレスリーとか、マドンナがやるようなね。偉大な才能に恵まれた、大御所ミュージシャンは大好きなんだ。だから、ショウをやる時には、とにかく、エネルギー溢れるものにすることを心がけているよ」

──
ライヴ・パフォーマンスに関しては、ビッグ・アーティストに負けないエネルギッシュさを求める二人だが、成功の秘訣に関しては、やはり「何から何まで二人だけで手掛ける」というD.I.Y.精神ゆえだと、断言する。
K :
「マイスペースやユーチューブは、私たちにとってすごく重要な役割を果たしていると思うわ。例えば、ライヴ活動を始める以前に、マイスペースに曲を二曲、アップしたんだけど、回りからの反応は、すごく早くて、凄まじいものだったわ」
J :
「反応して連絡をくれた人々は、すごく誠実だったしね。マイスペースをチェックした、あらゆる国の人たちから連絡が来た時は、本当に嬉しかったな。例えばメキシコからとか……本当に、様々な国の人たちが、僕らの音楽を気に入ってくれた。音楽業界の人々も含めてね(笑)。元々は、友だちを集めたパーティーで演奏して、ラップトップ・コンピューターを使って50枚のCDを焼いて、アルバム・ジャケットも自分たちで作ったりしてたのにね(笑)。ライヴをやる時に、資金が足りないから、他のバンドからの寄付を募ったりもしてたぐらいだよ。とにかく、活動の全てに“想像力”を駆使することは忘れなかったね。音楽自体はもちろん、その他すべてのものに対してもね。それから一年後が、今だよ。とにかく、やりたいことが何でもやれる状況だったのが良かったんだろうね。誰からの押しつけもなく、野望すら持ってなかった。とにかく、音楽がやれれば良かったんだから」