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THINK PIECE

ADULTS will ROCK YOU!

2008年、テイ・トウワの考えるアダルト・ミュージック

08 8/5 UP

Text:honeyee.com

テイ・トウワが監修を手がける大人気コンピレーション・シリーズ『MOTIVATION』。最新作の『MOTIVATION7 compiled by DJ TOWA TEI』には、本人名義のオリジナルとしては約3年ぶりとなる待望の新曲で女優/モデルの太田莉菜をフィーチャーした『A.O.R.』が収録されている。アダルトでスタイリッシュなムードのこの曲に込められたメッセージ、制作中のアルバム、そして彼が考えるDJのあり方について話を聞いた。

テイ・トウワ

ミュージシャン/DJ/音楽プロデューサー。1990年にディー・ライトのメンバーとしてデビューし、1994年に『Future Listening!』でソロ・デビュー。2007年、音楽プロダクションhug inc.を設立。最新作は『MOTIVATION7 compiled by DJ TOWA TEI』で、現在はアルバム制作中。
http://www.towatei.com/
http://www.myspace.com/towatei

 

──
『MOTIVATION7 compiled by DJ TOWA TEI』の1曲目『A.O.R.』は、テイさんご自身の新曲ですよね。新曲はけっこう久しぶりではないでしょうか。
「まず音楽業界全体として、今はマキシ・シングルというマーケットがうまくいっていませんよね。一方でiTunesやbeatport(註1)、“着うた ”などのダウンロードが台頭している。そんなご時世に新曲をどう発表するかという流れのなかで、ちょうど僕のコンピ『MOTIVATION』の新作発売のタイミングと合ったというか。『A.O.R.』は、amadanaの携帯端末N705i(註2)のために作った『N705i』(註3)をベースにした曲です。『N705i』は携帯のスピーカーを意識してミックスしたのですが、『A.O.R.』ではミックスのバランスを変えてさらに太田莉菜ちゃんのボーカル/コーラスを乗せています。『N705i』の段階から“Adult Oriented”というキーワードは僕の中にあったんですが、MOODMANがミックスした『MOTIVATION6』(註4)を聞いた宇川(直宏)くんが“Adult Oriented Click”というフレーズを口にしたのを聞いて、『みんな今同じ事を考えているんだな』と繋がった気がしました」
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なぜ太田莉菜さんを起用されたのですか?
「莉菜ちゃんは、女優の猪俣ユキちゃんに紹介してもらったんです。去年の細野さんの野外フェスに一緒に行ったりしましたね。そこで彼女がお母さんと話している時のロシア語の響きがかっこいいなと思い、誘ってみました。勘のいい子ですね。僕がまず英語で歌詞を作り、それをロシア語にしてもらいました。彼女はすごく絵になるし、PVも作れたらいいなと思っていたんです」

註1:ダンスミュージックを中心とした有料オンライン音楽配信サービス。2008年1月より日本語にも対応。
註2:2008 年2月発売。プロダクトデザイン/クリエイティブディレクションをインテンショナリーズ、グラフィックデザインをタイクーングラフィックスが手がけた携帯端末。テイ・トウワはサウンドデザインを担当。着信音や効果音も含めN705iに搭載された中心となる音をプロデュースした。
註3:携帯端末N705iに着うたフルとして搭載された書き下ろしインスト曲。なお、amadanaの「デスクトップオーディオ2」TOWA TEIコラボレーションモデルには、「N705i」のミックスバランスを変えたCDシングル「N705i2」が付属した。同じトラックをベースに「N705i」「N705i2」「A.O.R.」の3バージョンが存在することになる。
註4:『MOTIVATION6 Adult Oriented Click Nonstop-Mix by MOODMAN』。MOTIVATIONシリーズ6作目にして初となる、選曲をMOODMAN、監修をテイ・トウワが手がけた作品。ジャケットデザインは宇川直宏が担当。


 

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テイさんはこれまでも映像を含めビジュアルに意識的だったと思うのですが、『A.O.R.』は曲とPVのテンションが揃っていますよね。PVのビジュアルイメージは曲の制作と同時にあったのでしょうか?
「制作中は曲に集中していて、具体的なヴィジョンはありませんでした。いざPVを、となった時にはまず莉菜ちゃんありきで、撮影は絵作りのうまいタジマックス(田島一成)に、そして監督や脚本も手がけているユキちゃんはストーリーの流れを作る能力があるのでPVの原案を、監督は友だちでもあるteevee graphicsのコジ(小島淳二)にお願いしました。その3人のスタッフのバランスがいいな、と思っていて。一つだけディレクションさせてもらったことがあるんですが、僕の中でアダルトと言えば“すぐ寝ちゃう”という印象なんです。行きつけのバーでおじさんが寝ているのを横目で見ながら歌詞を考えたりしていて、実はこの曲は僕なりの、自分を含めた“おじさん応援歌”でもあるので(笑)、PVでもその雰囲気は残したかったんです。莉菜ちゃんを前にどうにかしたいと思いながら戦闘不能になってしまうおじさんたちを描きつつ、どこを切ってもスチールにできるようなかっこいい絵でタジマックスがシニカルに撮るのがいいんじゃないかと」
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時代の音というものがない今、例えば“A.O.R.”というキーワードと結びつくと当時の音に立ち戻ってしまうアーティストも多いですが、テイさんの魅力の一つは、テーマなりキーワードをきちんとアップデートして表現している所にあると思うんです。
「タイトルは“A.O.R.”ですが、自分の中では“Adult Oriented(バーで寝ているおじさん) Rocks you”という気持ちで作りました。この曲の前身の『N705i』を手がけることになった時、グラフィックを担当したタイクーン・グラフィックスと“小賢しくない携帯”を作りたいと話していたところからスタートしたんです。僕の曲が着信音として鳴ることによってずっしりするというか、重心が低くなるような感じにしたいと思ったんですが、コンピュータにファイル名を保存する時に仮で付けたタイトルが“A.O.R.”でした。結果的には整合性が取れているんですが、ノリで進んでいた部分もあるんですよね」