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THINK PIECE

ADULTS will ROCK YOU!

2008年、テイ・トウワの考えるアダルト・ミュージック

08 8/5 UP

Text:honeyee.com

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ノリというか反射的に成熟した雰囲気の作品に仕上がるというのは、今テイさんのテンションがそちらに向かっているということでしょうか?
「どうなんでしょうね。ちなみに『MOTIVATION7〜』と同じ日に細野晴臣さんのdaisyworldから『デイジー・ホリデー』というコンピが出たのですが、僕の『チャンネル銀河』という曲も入っているんです。この曲はもともと、シニア向けの新しいケーブルテレビ・チャンネル用に“次のアルバムに入るような曲を作ってほしい”と依頼があったもので、そのトラックのインスト・バージョンです。『A.O.R.』も『チャンネル銀河』もたまたま“アダルト”がキーワードになっているんですが、両方とも気に入っているので今制作中のアルバムにも入れるつもりです。現状ではアルバム用の曲としては4つ打ちのトラックを一つも作っていないんですよ。DJではを4つ打ちを使うことが多いんですけどね。僕は自分のDJとソングライティングのスタイルを重ねているつもりはなくて。Deee-Liteのアルバムデビューの頃は僕が人生で一番DJをやっていた時期で、自分でプレイしてフロアを盛り上げたくて作っていた曲が形になったとは思うんですけど。そこにこだわり続けるのは一つの手だとは思いつつ、節操がない雑食性こそが僕らしさだと思うので、フラクタルのようにかいつまんで聞くとなんとなくテイ・トウワ、というのが見えてくるのが理想ですね」
──
テイさんの中でダンスミュージックの定義が変わってきたりはしていますか?
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なぜ太田莉菜さんを起用されたのですか?
「莉菜ちゃんは、女優の猪俣ユキちゃんに紹介してもらったんです。去年の細野さんの野外フェスに一緒に行ったりしましたね。そこで彼女がお母さんと話している時のロシア語の響きがかっこいいなと思い、誘ってみました。勘のいい子ですね。僕がまず英語で歌詞を作り、それをロシア語にしてもらいました。彼女はすごく絵になるし、PVも作れたらいいなと思っていたんです」

 

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アーティストとしては、今のダンスミュージックというより、細野晴臣さんなど才能ある先輩クリエイターにシンパシーを感じるのでしょうか。今にして思えば YMOの凄さは、色々な音楽の要素をブレンドしながら新しい質感で表現したところだと思うのですが、テイさんも今の音楽とは十分にシンクロしつつ、作品では違った表現をされていますよね。
「そうですね。DJは現場主義というところで、釣り仲間のような感覚ですね。『あの箱、音悪いよね』なんて情報交換をしたり。一方でミュージシャンシップというものがあるかどうかは微妙なんですけど。細野さんともこの前初めて音楽の話をした気がするし(笑)」

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日本の優秀なミュージシャンの伝統とも言える編集能力が今は雲散霧消しかかっている気がするんです。たとえばエレクトロであれば、シーンに忠実にあろうとすることを頑張りすぎてしまうというか。
「一括りにしてしまうのは違うと思うんですけど、エレクトロ方面で言えば断トツでJUSTICEがいいと思っていたんです。するとある日myspaceを通して彼らから『長年に渡ってTOWA TEIの大ファンだ』というメッセージをもらって、そういうのはうれしいですね。この言葉を聞けたら満足してしまって、僕はこのあたりのシーンはもういいかな、と。世界的には未だにダフト・パンク、そしてインターネット“以降”を引きずっていますよね。ネットの功罪は気楽な情報の蔓延というか、なんとなく大物アーティストとヴァーチャルでつながる安心感をばらまいてしまっている」
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センターにアクセスできることで、センター自体がなくなってしまっていますよね。
「みんなが発言をすることで、一億総評論家になっていて。それはいいことだとも思うんですけど」