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THINK PIECE

Smart Bands to Watch

VOL.7 Vampire Weekend
変てこサウンド&詩的なリリックが魅力の不思議系・極上ポップバンド

08 11/7 UP

Text:Mayumi Horiguchi Portrait:Tim Soter Live Photo:Yoshika Horita

ニューヨーク出身のバンド、ヴァンパイア・ウィークエンド。
この4人組は、商業化し、形骸化した「ロックイズム」に染まることを徹底的に避けている。
あくまでも自然体なやり方で。それはすごくカッコイイことだ。
西インド諸島起源の音楽であるカリプソやコンゴのアフリカン・ダンス・ビート、あるいはクラシックなどを、
ローファイなインディー・ロックと混ぜ合わせてできあがった彼らのサウンドは、個性的かつ印象的なポップ。
曲調も、アゲアゲで踊りまくれるものから、ゆるくてまったりしたものまでと幅広い。
リリックはウィットに富んでいて知的で、米文学の世界観に満ちている。
このように、多種多様な要素をごちゃ混ぜに取り入れ、独自のモノにして、新しいものを作り出してしまう手法は、本当にニューヨークっぽい。
そう、彼らは「メルティング・ポット」な街を体現しているバンドなのだ。その雑食性が、たまらなく魅力的! 
元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンやコールド・プレイのクリス・マーティンなど、ロック界の大御所もファンだと公言しているとか。
そんな彼らが、夏フェス・シーズンの日本にやってきた。サマソニ出演を終えた翌日のインタビュー時、4人は多少お疲れ気味。
しかし怯むことなく、がんがん質問責めに……。

Vampire Weekend / ヴァンパイア・ウィークエンド

ニューヨーク市マンハッタン区にある米国屈指の名門大学、コロンビア大学在学中に知り合ったエズラ・クーニグ(Vo & G)、ロスタム・バトマングリ(Key & Vo)、クリス・バイオ(B)、クリストファー・トムソン(Dr)から成るバンド。2006年結成。バンド名の由来は、エズラ曰く「以前、趣味で吸血鬼映画にインスパイアされた映画を作ったんだけど、そのタイトルから取った」とのこと。「2007年冬、最もエキサイティングなパーティ・ミュージックをつくるNYの一番いけてるバンド!〈NME誌〉」、「今年もっとも印象的なデビュー〈ニューヨーク・タイムズ紙〉」などと英米メディアが絶賛し、アルバム発表前から話題に。2008年1月リリース(日本発売は2月)のデビュー・アルバム『吸血鬼大集合!』は、全米でビルボード初登場17位を、全英で15位を記録。サマーソニック08に合わせ、初来日を果たした話題の4人組。

http://www.beggarsjapan.com/artists/VampireWeekend/
http://www.vampireweekend.com/
http://www.myspace.com/vampireweekend

 

──
サマソニに出演した感想を聞かせて。これが初来日なの?
クリス・バイオ (以下: B )
「そう、これが初めて。日本の観客は全然違うね。ものすごく静か。いつもの観客は、すごく強烈で激しいからね。初ライヴは大阪だったんだけど、なんかヘンな感じだったな。みんな完璧に静かなんだ。二日目は東京で、もうそのノリに慣れてたけど、こっちは良かったよ」
──
ハートウォーミングな良いライヴだった、という意見がありましたよ。確かにアメリカやイギリスだと、もっと踊りまくったりしそうだけど。歌詞の意味もダイレクトに通じるしね。
クリストファー・トムソン (以下: T )
「僕らはレコードやライヴ・ショーに、できるだけ多くの"前向きさ"を入れ込みたいと思っているから、観た人がそれを感じ取ってくれたんなら、それはグッド・サインだよ」
ロスタム・バトマングリ (以下: R )
「僕らはいつでも、"自分たちの小さな世界"を創造している。どんなバンドでもそれが実現できているわけじゃない。できたり、できなかったりだ。僕らの世界とは、単にハートウォーミングなわけじゃないから、その人が、物事の'外側'と僕らの音楽に類似性を感じている点が興味深いね。僕らは普段、映画や服といったものを素材として選んでいる。だから、その比較の仕方は好きだな」
──
あなたたちの歌詞は、とても文学的ですよね。ファースト・アルバム『吸血鬼大集合!』にも収録されている曲「ケープコッド・クァッサ・クァッサ」は、英文学を専攻していたエズラが創作の課題として書いた短編小説を基にしているものだというし。今の音楽シーンでは、歌詞よりも「踊れること」や「感覚的に気持ちいい」ことに重点をおいて、歌詞を軽視しているバンドが多いような気がしますが、あなたたちはそういったバンドとは異なる存在ですよね。ダンサブルな曲も作るし。
エズラ・クーニグ (以下: E )
「僕らは、音楽をすべての点に関して、興味深くて面白いものにしたいんだと思う。歌詞だけが重要ってわけでもないし。英語がわからない人もいるんだし、もし歌詞に興味を持ってもらえたなら、後でゆっくり読んでもらってもいいんだしね。とにかく、全般的に楽しんでもらえればいいんだよ。もちろん、踊ってもらったりもしてね。今まで僕らの曲を聞いたことがない人にも、'エキサイトメント'を媒介にしてコミュニケートして欲しいんだ。音楽からエネルギーを感じ取って欲しいのさ」
R :
「うん。ライブの時だけじゃなくて、僕らのレコードに合わせて踊ることもできると思うよ」

 

──
さっきから、受け答えの際に「頭の良さ」を感じさせられてるんですが。4人とも名門コロンビア大学の出身なんですよね。あの、めちゃめちゃ知能指数の高い人が集まっている大学の!
T :
「(笑)まあ、'そうであるべき'だよね」
──
また機知に富んだ答えを(笑)。ところで、皆さんはどうやって知り合ったの?
R :
「音楽好きは、多分みんな知り合いっていうか。一人を通じて、また知り合いが増えるっていう感じだね。オーケストラとかクラシックをやっている人とか、インディー好きでカレッジ・ラジオをやってる人とかさ。ちなみにクリストファーはカレッジ・ラジオやってたんだけどね。それに、クリストファーと僕は二人とも音楽を専攻していたから、講義の時に出会った。エズラとは……」
T :
「共通の友人を通して、だろ。いっぱいいたからね」
R :
「そうそう」
T :
「パーティーで出会ったりとかさ」
R :
「(クリス・)バイオは僕らより一学年下なんだけど、やっぱり友人を通して知り合った。以前僕らと一緒に演奏したことのある奴を通じてね」
──
皆さん、在学中は「アニマル・ハウス(*1978年の米コメディー映画。1962年の名門大学を舞台に、男子大学生社交クラブに所属する劣等生グループの無茶苦茶な行動ぶりを描いた作品)」みたいなノリはありました? もしかしたら、あんな感じで寮が一緒で、出会ったとかもアリ?!……なんて思ったりもしたんですが(笑)。
全員
「(大爆笑しながら)いや〜、全然違うね」
E :
「そんな感じだったことは一度もないね(笑)。確かに、僕らはみんな、キャンパス内にある寮に住んでた。うちの大学の学生は、ほとんどみんなそうしてたんだ。まあ、部分的にはアニマル・ハウス的なノリも起きたりはしてたけど(笑)、僕らがいたのは普通の寮だよ。男子大学生社交クラブとは、あんまり関係なかったしね」