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THINK PIECE

Smart Bands to Watch

VOL.7 Vampire Weekend
変てこサウンド&詩的なリリックが魅力の不思議系・極上ポップバンド

08 11/7 UP

Text:Mayumi Horiguchi Portrait:Tim Soter Live Photo:Yoshika Horita

──
アルバム『吸血鬼大集合!』を作る際に留意した点や、コンセプトについて教えて。様々なタイプのジャンルの音楽が変幻自在に取り入れられているけれど、最終的にはひとつのアルバムとしての統一感が出ていると思いました。
B :
「そういう感じで作りたかったから、そう言ってもらえると嬉しいよ」
R :
「例えば、ビートルズの『リボルバー』には、ストリングスを使っている曲は一曲しかないけれど、決して場違いな印象は受けない。僕らのアルバムにはいろいろなモチーフが用いられている。そしてそれを何度もリピートしているけれど、誰もその事実にすら気づいてないんだ(笑)」
T :
「特別なもの──できるだけ多くの人々が、進んで物事を考えようとするきっかけになるものを作りたい。だからこそ、自分自身も、多様な物事からの影響を進んで受けているんだと思う」
E :
「他にはない特別な存在になり得る、きちんとした意味を持つグッドなポップ・ソングを作ること。これが僕らにとって最も重要なことなんだ。異なる多彩な音楽を組み合わせ、何か新しいものを作り出したいと思っている。それが可能だと思った時だけに、そういう手法を取り入れているんだ。珍奇なことをやりたいわけじゃない。アフリカン・ミュージックとかクラシックが好きだから、それを全部混ぜ合わせてひとつにする。珍奇なものではないが、興味深い作品をプロデュースできたと思っているよ。僕らのアルバムでは、異なる物事が進行していると、聴いた人が思ってくれるのは嬉しいね。なぜなら、それこそが僕らがやろうとしていたことなんだから」
──
マイスペースに、「エズラって、教師やってたって噂あるよね」なんて書き込みがありましたが、それは事実?
E :
「うん。8年生を受け持っていた。14歳の子供が集まっているクラスだね」
──
サンフランシスコにいる友だちで、公立高校の教師をやってるコがいるんだけど、彼女の生徒はチャイニーズかヒスパニックが大半で、みんなヒップホップばかり聴いてるから、自分の好きなインディー・ロックを聴かせてみたら「Yo! いいじゃん、先生!」という反応が返ってきて嬉しかったと言ってたんですが、似たような経験をしたことはある?
E :
「あるよ。僕が教えていた学校はブルックリンにあって、生徒の大半が黒人で、残りのほんの少しがヒスパニック、基本的に白人のキッズはいなかった。みんなMTVを観て、ラップとR&Bに興味を持っていたよ。環境ゆえだね。育った環境が、聴く音楽を決めるんだ。例えばロングアイランドに住んでいると、みんなポップ・パンク・バンドばかり聴くようになって、多分その他のジャンルの音楽と触れあう機会を一生失ってしまうんだ。僕の音楽を気に入ってくれた子も、そうじゃない子もいたけれど、僕の一番のお気に入りの生徒は、"ヴァンパイア・ウィークエンドってなかなかクールじゃん!"って言ってくれたよ。最近は状況が変化してきてるかも知れないけど、あの学校の生徒たちは、ロック・バンドはあんまり聴いてないと思うな」

 

──
「ロックイズムだけはやらない」という方針を頑なに守っているそうですが、その理由は?
B :
「音楽的な意味での否定だよ。デカいラジオ局でかかるような典型的なロックはやりたくないんだ。だって退屈じゃん、そういうの」
R :
「'ロック・ミュージックの歴史'みたいなことをやるつもりは毛頭ないね。"○○年にはこういう音楽が流行ってました"って簡単に分類されたくないよ」
──
例えば「モッズの時代」、「ヒッピーの時代」なんかがあって、それを象徴するファッションと音楽を嗜好していても、それがイコールださくはなかったですよね、昔は。
S :
「そう、それはクールだよ! その時代にはね。各時代によって状況は異なると思う。僕らがバンドを始めた頃は、ストロークスがめちゃくちゃ流行ってて、ストロークスにそっくりのバンドをやることは、最高に退屈なことだったんだ。ストロークスは大好きだったけどね。ぼくらのバンドは、ギターが目立つ音作りをあえてしていない。ギターをフィーチャーすると、キーボードとベースの音が目立たないからね」
──
では最後に、お気に入りの吸血鬼の名前を挙げてみて。
全員
「……え〜っ!! いないよ……(とみんな、悩み始める)」
R :
「別の質問に変えてくんない?!」
T :
「僕には、お気に入りの吸血鬼がいない。それが問題だ!」
──
それこそが待ってた答えですよ(笑)。
全員
「(悔しそうに、でも大爆笑しながら)……一本取られちゃったな!!」