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THINK PIECE

ALL TOMORROW'S PARTIES

これぞDIY精神の権化?! フリーな祭典
『オール・トゥモロ−ズ・パーティーズ』主催者
バリー・ホーガン インタビュー

09 12/8 UP

Text: Mayumi Horiguchi

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バリーさんは、映画や映像作品、そして映像作品に使用されている音楽に対して、強い興味を持っているように見受けられますね。
「ああ、そうさ。映画の中で音楽が流れる瞬間が大好きなんだ。ウェス・アンダーソンの映画が特別である理由の一つもそれだと思う。映画において音楽は大切で、それによって映画の印象が変わることだって少なくはない。彼はその働きを完璧に理解してるんだよ。映画館があるのも、ATPの特徴の一つだしね。イベント内でも映画を上映してるんだ。キュレーター達が自分たちの好きな映画を選んで、それを流してるのさ。それも、このイベントの良いところなんだよ。更にはテレビ番組だってある。キュレーターが選ぶドラマやスポーツ番組、映画、それにドキュメンタリーを放送してるんだ。それって、音楽のみをやるよりもクリエイティブなことだと思うんだよね」
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今後も、音楽畑以外からキュレーターを選ぶプランはあるのでしょうか?
「ああ。来年5月のATPの10周年アニバーサリーでは、マット・グローニングがキュレートすることになってる。音楽外の世界の人たちにキュレーターを任せるのは好きだよ。でも同時に、その人がちゃんと、良い音楽のテイストと、音楽に対する深い興味を持っているかにも注意しなければならない。あ! ソフィア・コッポラなんかいいんじゃないかな。彼女の音楽のセンスは良いに違いない。彼女の映画に出て来る音楽は、良い音楽が多いからね。彼女自身が興味を持ってる音楽を使ってるかもしれないだろ? あとは、俳優なんかもいいかもしれないね。どの職種や、どの業界の人っていうのに関しては、俺は結構オープンだと思う。待って! もうひとつ例がある。ロンドンを拠点にしてるんだけど、日本にもAmosっていう店を持ってる、ジェームズ・ジャービスってアーティスト知ってる? 彼はヴァイナル・トイも作るし、アニメーターでもあるんだ。彼の音楽のテイストは最高なんだよ。彼みたいな人にキュレーターになってもらうのはいいアイデアだと思う。あと、前にラッセル・ウォーターマンが手がけてたSilasっていう洋服のブランドがあるんだけど、ジェームズとコラボして、彼がアニメーションを担当して、ラッセルがビジネスを担当したことがあるんだ。だからATPもコラボして、彼らにキュレーターを任せても面白いかもね。イギリスでもいいし、日本でもいいしさ。日本でやったら最高だろうな! 俺たちはヴィジュアル・アートも沢山使うからね。音楽の外に目を向けるのも良いことだと思うんだ。俺をクレイジーだと思う人もいるかもしれない(笑)。でも、やっぱり新しい事には挑戦していったほうがいいんじゃないかな」
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今までのアーティストは、簡単に依頼を受けてくれたのでしょうか? それとも、断られたこともありました?
「引き受けてくれるケースの方が多いかな。興味があるか尋ねると、殆どの場合は好意的に受け取ってもらえる。無理なアーティストは、やりたくないというよりは、スケジュールが合わない時のほうが多いよ。レディオヘッドにも、キュレーターをやって欲しいと思ってるんだけど、やっぱり聞いてみるべきだね(笑)」
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今年、ついにドキュメンタリー・フィルムが完成しましたが、感想は?
「映画の仕上がりには、心から満足してる。良い出来だと思うよ。映画を見ている人が、実際にイベントにいるかのような気分になれるところが良いよね。ファンの一部になれるだろ。出来上がるまでの過程は、本当に長かったけど……何せ、基本の場増だけで600時間近くかかって、更に編集があったからね。エディターのニック・フェントンとプロデューサーのルーク・モリスのお陰さ。彼らが全ての映像の基盤を作って、作品を最高のモノに仕上げたんだ。全員がこの出来上がりを嬉しく思ってるよ。最高のバンドが次々と出てくるし、Roscoe Mitchellの出てくるシーンも好きだな。それに、ファンとアーティストのインタラクション(交流)のシーンも良いよ。俺が一番気に入ってるのは、正気を失った少年が、シンクの前でヤー・ヤー・ヤーズの“Maps”を歌ってるシーンだね。この映画は、とにかく、イベントの特徴をリアルに良く捕えてると思う。あの雰囲気を、パーフェクトに映し出してるんだ」

 

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苦労した点などはありますか?
「まず、あの映画は、ファンから送られてきた映像、昔録って保存されている映像、撮影した映像で作られているんだけど、最初の段階でそれを集めてチェックするところから既に大変だった。その全てを、1時間25分にまとめないといけないわけだからね……全部を映画にしたら、つまらなすぎるだろう(笑)。その中からベストを決めて、これは必要、これはいらないと決めるのがとにかく大変だったんだ。だから、一番苦労したのは絶対に編集だね。かなり長いプロセスだったけど、楽しかったよ。また同じ事をやりたいかは分からないし、ATPフィルム2が出ないのは明らかだけどね(笑)。まぁどうであれ、今回の映画の出来は最高さ。このイベントではVIPエリアもなければ、エゴも存在しない。今回僕らは、ファンから送られて来た映像もたくさん使ったし、60年代の映像と現代の画像、ファンの画像を、モンタージュのように繋ぎ合わせた。だからファンにもクレジットをあげたかったんだ。それがオール・トゥモローズ・ピープルと書いてある理由さ」
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ATPでは、コンピレーションCDもリリースしていますが、今後も出し続けていきたいと思いますか?
「ははは(笑)、しばらくちょっと休憩したいかな(笑)。でも、リリースはまだ続くんだ。2010年にはライブアルバムが出るし、前のイベントからのコンピレーション作品もリリースされる予定だよ。だから……そうだね、リリースは続けて行きたいと思ってる。でもリリースするなら、本当に最高のクオリティのものをもった作品を作りたいんだ。アートワークも含めてね。でも、世界でイベントを開催しながらCDも作るっていうのは、かなり大変なんだよな(苦笑)。正直キツイんだ(笑)。日本での作品もいつかリリースできたらクールだね。日本は大好きなんだ。俺は、ヴァイナル・トイを集めるのが好きなんだけど、日本はヴァイナル・トイの天国みたいな場所だから(笑)。 俺の行きつけの店は、中野の“まんだらけ”。あそこは、毎日がクリスマスって感じ(笑)。ヴァイナル・トイも、レコードも、何でも揃ってるんだよ。それ以外でも日本は最高。食べ物もおいしいし、行く度に滞在を楽しんでる。でも、夏はさすがに暑すぎるよね(笑)。だからATPをやるとしたら冬がいいかな(笑)」
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予定されているラインナップ以外で、企画していることはありますか?
「実は、ヴェルヴェッツの別の曲から名前をとったイベントを考えてるんだ(笑)。クールだろ?(笑)。彼らが『オール・トゥモローズ・パーティーズ』を7インチでリリースした時のB面が、『アイル・ビー・ユア・ミラー』って曲だったんだけど、そのタイトルを付けたイベントをやろうと思ってるんだ。ATPの姉妹イベントみたいなものだよ。ATPの、ホリデー・キャンプがないバージョンさ。ロンドンとか、もっと都市の方で開催するイベントなんだ。来年ロンドンから始める予定だよ。キュレーターはまだ決まってないけどね。ニューヨークとか、ロサンゼルス、それにできれば東京でもやれたらいいなと思ってる。俺たちは、ATPよりもアクセスしやすいイベントを作りたかったんだ。キュレーターというコンセプトは残しつつね。交通費もかからないし、規模も小さいから、人々がもっと参加しやすくなると思うんだ。ATPのために、少々高いお金を払ってくれてる皆には、本当に感謝してる。俺たちも、できるだけリーズナブルな値段にできるよう頑張ってはいるんだよ。集まったお金は、ヘリコプターとかフェラーリじゃなくて、全部次のイベント運営のために使われてるし(笑)。ちなみに、そのイベントは来年の夏の後半に開催される予定。2011年は他の国でやりたいと思ってるんだ」
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では最後に、日本のファンに対して一言どうぞ。
「日本のみんな、今俺は、日本でATPをやるための場所を探してるんだ。どこかオススメはない? 近い将来、必ず日本でATPを開催するから!」

 

『オール・トゥモロ−ズ・パーティーズ』(2009、UK)
監督:オール・トゥモローズ・ピープル & ジョナサン・カウエット
プロデューサー:ルーク・モリス

Featuring:
Belle And Sebastian / Grizzly Bear / Sonic Youth / Battles / Portishead / Daniel Johnston / Grinderman / Lightning Bolt / David Cross / Animal Collective / Boredoms / Les Savy Fav / Mogwai / Octopus Project / Slint / The Dirty Three / Yeah Yeah Yeahs / the Gossip / GZA / Roscoe Mitchell / Seasick Steve / Iggy and the Stooges / A Hawk and a Hacksaw / Fuck Buttons /Micah P Hinson / Two Gallants / Mars Volta / Akron / Family / Jah Shaka / Saul Williams / Shellac / John Cooper Clark / Patti Smith

価格:3,990yen(tax incl.)

Label : WARP FILMS / BEAT RECORDS

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