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THINK PIECE

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』

笑って泣けて魂焦げる! 各界激賞のロック・ドキュメンタリーがついに上陸。
人呼んで「メタル版ロッキー・バルボア」。(不惑を超えても)不屈の男達による、これぞ不屈のバンド道!

09 11/5 UP

Text: Daisuke Kawasaki (Beikoku-Ongaku)

──
ところで、スティール・パンサー(注;高度な技術で80'sメタルをネタにしたオモロ系バンド。メタル版氣志團か?)ってどう思います?
L :
「だれ?」
S :
「ヘヴィメタル・コメディアンだよ」
R :
「あー、イングランドで見たな……ノー・コメント」
L :
「ナッシング」
S :
「あんなの古いよ! あんなネタの笑いは『スパイナル・タップ!』(注;架空のロックバンドをドキュメンタリー形式で追ったカルト映画。84年作)ですでにやったことだ。そういう意味では、僕らはこの映画で、期せずしてスティール・パンサーを負かしちゃったのかもしれないね。なにしろこっちは『リアル』なんだから。真実に勝るドラマはないよ」
──
そこなんですが。本作についての唯一の疑問が「これって全部、やらせナシなわけ?」ってことなんですよ。なぜなら、あまりにもドラマチックすぎる。
S :
「あー、それはね。凝縮したからだよ。出来事を。320時間ぶんのフッテージの中から、選りすぐりのものを抽出したから、そう見えたんじゃないかな」

──
それって、監督が彼らと同居してたとか?
S :
「いや。僕じゃなくて、カメラマンがトロントで彼らの近所に住んでた(笑)。それで、なにかあると、リップスからカメラマンに電話がある。『いまからホッケーやるぜ、クールだぜ!』とか。するとすぐに2人のもとに駆けつける。そうやって撮り溜めしたんだ」
──
でもあそこはやらせですよね。映画『スパイナル・タップ!』と同じ、音量の目盛りが11まであるアンプが出るシーン。あれってオマージュ目的で、プロップ使って撮影したんですよね。
R :
「あのアンプは本物なんだよ」
S :
「そうそう。『スパイナル・タップ!』が当たったあと、アンプ・メーカーが本当に作っちゃったんだ。目盛りが11まであるやつを」
──
そうなんだ? 映画が現実を浸食した?
S :
「そうともいえるね。で本作は、アンヴィルって存在の事実を追うことで、『スパイナル・タップ!』という映画をも打ち負かすのさ!」
──
もしアカデミー賞にノミネートされたら、もちろん行きますよね。みなさん、コダック・シアターに。
S :
「もちろん! でも、すでに僕ら、レッド・カーペットの上を歩いてるような気分なんだよな。ここ一、二年のめまぐるしい展開の中で」
R :
「リップスは『オスカー会場で演奏してる自分の姿が見えた』って言ってたよ」
L :
「はっはっは」
R :
「本当に見えたんだって。ワインボトルが乗ってるテーブル蹴っ飛ばしてる自分が」
S :
「まさにアンヴィル的だ(笑)。彼らには、いつも予測不可能なことが起こるのさ。いつもね」

 

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』

監督:サーシャ・ガバシ
出演:スティーヴ "リップス" クドロー(ANVIL)、ロブ・ライナー(ANVIL)、ラーズ・ウールリッヒ(Metallica)、レミー(Mortorhead)、スコット・アイアン(Anthrax)、スラッシュ(Velvet Revolver)、トム・アラヤ(Slayer)
2009年/アメリカ
原題:ANVIL! THE STORY OF ANVIL
上映時間:1時間21分
配給:アップリンク

http://www.uplink.co.jp/anvil

TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開中

© Ross Halfin / ANVIL! THE STORY OF ANVIL
© Brent J. Craig / ANVIL! THE STORY OF ANVIL