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THINK PIECE

Thomas Campbell

カリフォルニア生まれ、スケートボード育ち!
この夏話題のサーフ・ムービー『The Present』を制作した
多彩でクールなマルチ・アーティスト。

09 8/21 UP

Text:Masahiro Sugimoto Photo:Kentaro Matsumoto

スケートボーダー、フォトグラファー、ライター、雑誌編集者、アーティスト、レーベルの主宰など。マルチな活躍を続けるトーマス・キャンベルの今現在のライフワークとも言えるのが、サーフ・ムービーの制作である。『The Seedlimg('99年)』に『スプラウト('04年)』と、過去2作品ともに優れた映像美と独創的なアイデア、BGMの素晴らしさから、サーフィンをやらない人々にも受け入れられ、映像作家として高い評価を受けている。そんなトーマス・キャンベルによる3作目となる『プレゼント(The Present)』が遂に完成。待望の最新作を引っ提げ、来日した彼にインタビュー。映画作りの話を中心に、多彩な才能を持つ彼の人間性にちょっと触れてきた。

Thomas Campbell/トーマス・キャンベル

カリフォルニアに生まれ育ち、幼い頃よりスケートボードに熱中。'80年代初期のパンクロック・スケートボーディング・ムーブメントの洗礼を真っ向から受けたトーマス・キャンベル。スケートボード・カルチャーをバックボーンに、フォトグラファー、ライター、雑誌編集者として活動。その後、国内をはじめ、ヨーロッパ、アジアをトリップし、さらにクリエイティブな感性を磨くことにより、映像作家、ペインター、レコード制作、落書き家(?)など、アーティストとしての活動は多岐におよぶ。ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコをはじめ、フランス、デンマーク、イギリスなど、ヨーロッパでもコンスタントにアートショーを開催し、ワールドワイドなアーティストとしても知られている。自らが主催するレーベルGalaxiaでは、トミー・ゲレロをはじめ、トータスやマトソン2などをプロデュース。インディーズながら、素晴らしい音楽を世界に発信するレーベルとして音楽ファンからの評価も高い。

http://www.thomascampbell-art.com/
http://www.galaxia-platform.com/catalog/
http://www.myspace.com/galaxiarecords

 

──
今回の作品『プレゼント』を見ると、環境に優しいエコ・ボードの話が出てきたり、これまでの作品以上にエコな姿勢を随所に感じられたのですが……。
「今まで生きてきたなかで、環境問題のことは常に頭の片隅に存在していました。リッチな生活をしたいのではなく、いい物を食べ、いい生活をする、ということは自分の身体にも優しいし、地球のことを考える意味でもナチュラルな事だからね。実は僕が今住んでいるサンタクルーズは、エコロジーに対してとても進歩的だし、僕自身も13年くらいベジタリアンを続けている。さらに住んでいる場所も山の中で自然に囲まれているような環境なんだよね。この世の中のみんなが、こういったシンプルな生活を目指すようになれば、自分にも地球にも優しいこと。そういったことを声高に言うことじゃなくて、モラルやエチケットのような極普通なこととして伝えていければな、と思っている。自分のスタンダードを、みんなもそう感じられたらいいね」

──
『プレゼント』というタイトルには、どんな意味があるんですか?
「『プレゼント』というタイトルには、太陽系の惑星の中でこの地球に生きているという奇跡に感謝し、波乗りを通して感じられる自然の素晴らしさや心の豊かさこそが“プレゼント”なんだ、という意味を込めているんだ。かつては氷河期があり、今はグローバル・ウォーミングの時代という具合に、100年単位で考えてみると地球はずっと変わり続けてきているよね。今回の作品では、その変わっていく部分に着目しようと思っていたんだ。ただ、この先100年先のことを考えてストレスを貯めるよりも、今のことを考えてみるべきだなと。つまり、変わり続ける自然に気づくことは環境的な配慮として大切ではあるけれど、むしろ今こうして生きて楽しめることに感謝するべきなんだ。今、この瞬間が、実はとてもスペシャルな時だと知れば、自分たちのやるべきことも決って行くんじゃないかと思う。そして、そういうことは口から出さないと、わかってもらえないと思うんだ」

 

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あなたの映画を見ていると、まるで美しい雑誌を見ているような気分にさせられます。いくつかの興味深い特集があって、それぞれの特集ごとできちんと完結している。デーンのすごい技を見せ続けたり、新しい板、アライヤの事を取り上げたり、きちんと現在のトレンドも取り入れていて、まるでページをめくるように楽しめてしまう。
「13歳から28歳までスケートボード雑誌で働いていて、フォトエディターだったり、ライティングだったり、いろんな立場で雑誌作りのキャリアが15年くらいある。だから、自分は編集部マインドがあるんだと思ってるよ。自分が見せたい、伝えたい事があったら、どのエレメンツがあって、どのように使えば一番インパクトがあるのかを考える。もちろん、今あるものから作る方法もあるんだけど、どちらかと言うと、必要なものを撮り、それをいろいろと組み換えたりしながら作り込んでいく。たぶん、自分の根底にはリポートしている者としての責任感があるんだろうね。人に見せてもらったものを、自分の中のフィルターを通して如何に伝えるかを考えている。分かりやすいというのは、自分の視点に落とし込んでいるからだろうね。しゃべることは簡単だけど、意味の無いことをピーチクパーチクしゃべるよりも、話すことを絞って、意味のあるものを作りたいという想いが根底にあるからね。そうすれば話を聞いた人間のイメージが、話以上のものをカバーしてくれる。だから、出演するキャストにも気を使っているんだ。誰もがどこかで引っ掛かるものを、持ってもらいたい。60歳近いおじさんが、思い切りアフリカでサーフィンをしているところを見て、元気をもらったり。女の子がでかいチューブから出てくるシーンを見て“女の私が、あそこまで出来たらいいかな”って、目標がちょっと上がったり。そういう風に老若男女様々な人が楽しめるバランスを、自分が提供できればいいなと。ボクは自分の映画には好きなものしか入れたくないんだ。自分の好きなものがまずあって、それをうまく伝えるには、どれをどのように足したらいいのかと考えるからね。雑誌一冊作るよう、あらゆるエレメントを集めていく。雑誌編集的な考え方で作品を作っているから、そういう風に見えるんだと思うよ」
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あなたのサーフ・ムービーには、コスチューム・アクションのようなコメディ・タッチのものが必ず取り入れられます。それはあなたの映画のなかでも、効果的なアクセントとして機能しているように感じます。
「面白いシーンを入れることで、感情の移入があると思っているんだ。コメディがあるから、真面目なシーン、カッコいいシーンを体験できるような気分になれる。そういうのは出来るだけあった方がいいよね。実は60年代のサーフ・ムービーでは、そういったシーンが使われていたんだ。つまり、コスチュームを着てヒューマンなシーンを作るのは、サーフ・ムービーのトラディショナルなスタイルなんだよ。特別なことではなくて、ボクは今の時代にあっているように、そう言うシーンを挿入しているんだ」
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今『プレゼント』を撮り終えて、アーティストとしてやりたいことは何ですか?
「アートのエキシビジョンがコペンハーゲンで10月にある。ビーワン・ギャラリーというところで開催される。まだ時間はあるけれど、その準備をするだろうね」