honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

DEERHOOF

天性のポップ感覚を併せ持つ
米インディー・ロック界の異才バンド

09 4/1 UP

Text:Mayumi Horiguchi

G :
「ディアフーフは、ピッチフォークよりも前から存在しているけど、ピッチフォークは僕らを、もっと若い新バンドと同様に扱ってる。『Reveille』('02年度リリース作)が初アルバムだと思ってたぐらいだし(苦笑)。まあ、いいんだけどね。どうせいつか事実を知るだろうし。自分たちがオーセンティックとは思ってない。僕らのサウンドは、僕たちの内側——イマジネーションから現れているものだ。そういう意味では“本物”かもしれないけど、伝統的なバンドという意味では、オーセンティックな存在じゃない。別に“本場のブルーグラス《米国南部の伝統的カントリーミュージック》”や“本場の歌舞伎”をやってるわけじゃないんだし(笑)。逆に、若いバンドの方が、僕らよりもオーセンティックなんじゃないかな。学べば学ぶほど、逆に遠ざかっていくというか。僕は今後も学んでいきたいと思ってはいるけれど、同時に、ナチュラルに自分らしいスタイルの音楽をプレイしている、キッズ・バンドみたいにもなりたいと思うよ(笑)」

──
アルバムジャケットのアートワークですが、いつも凝っていて、面白い仕上がりになっていますよね。音楽以外の表現形態としてのアートやファッションについては、どう思ってますか?!
S :
「全員、アートには興味あります。前作の『フレンド・オポチュニティ』では、デヴィッド・シュリグリーっていう英グラスゴーのアーティストにお願いしたんですけど、すごいカラフルだったんで、今回はシンプルな、モノクロがいいんじゃないか、っていう話になって。毎回、音も違う形で見せていきたいし、アートワークとも繋がっていた方が、全部のコンセプトとして良いじゃないですか。で、グレッグが“モノクロがいいな”って言った時に、“あ、じゃあ五木田(智央)さんがいいよ!”って話になって、最新作である『オフェンド・マギー』のジャケをやっていただくことになったんです」
G :
「アートやファッションが好きな人は、音楽を好んで聴いている場合が多いよね。音楽オタクが僕らの音楽を真剣に聞き込んでくれたら、それは当然ハッピーなことだけど、例えば服をデザインするのが好きな人がいて、その人がBGMとして僕らの音楽をかけて、そこからインスピレーションを受けてくれたら、それもまた嬉しいよ。通常とは別の使用法として、僕らの音楽を“発見”してくれるっていうことだから。僕らの音楽が、ヴィジュアル・イマジネーションを喚起するものになってくれるんだとしたら、クールだよね」
S :
「今、X-girlのウェブサイトに私たちの楽曲が使用されているんですけど、こういう形のコラボレーションも面白いですよね。ステージで着用するってことで、服もいただいちゃいましたし(笑)!」

 

──
では、『オフェンド・マギー』のコンセプト、あるいはテーマについて教えてください。
G :
「アルバム自体のテーマやコンセプトがあるとは、あえて言わない。アルバムを制作する際に、僕自身にはテーマがあった、とは言えるけど。いや、テーマではなく、主題だな。主題は“男性的なもの/エレガンス/過剰な男らしさ/マッチョネス/不健康な男らしさ”かな。“女性らしさが欠如した男らしさ”というもの……そういう感じだね」
──
では最後に、マルーン5のリミックス・ベストアルバム『ベスト・リミックス〜コール・アンド・レスポンス 』への参加についてお伺いします。様々なジャンルからリミキサーを迎えており、ファレル・ウィリアムスやスウィズ・ビーツというヒップホップ勢、ティエストやポール・オークンフォールドといったハウス勢に加え、オブ・モントリオールと共に、米インディー界からは、あなたたちが起用されましたが。
G :
「すごく楽しい経験だったよ! マルーン5についてはあんまり知らなかったから、全曲をiTunes(アイチューンズ)で試聴してみた(笑)。で、どれをリミックスしたいか決めたんだけど、その曲はもう別の誰かに取られてたんだ。だからもう一度、別のチョイスをしなきゃならなくて、その曲を買った——いや……違う!」
<一同、爆笑>
G :
「買うのはもっと後の話だった! 曲をチョイスして、ジョンの家で、コンピューター・ファイルによるオリジナル・プロトゥールス・セッションを行ったんだ。提供された音源には、マルーン5が実際の曲には使用しなかった音素材がいっぱい入っていて、彼らが作品を制作する過程を知ることができたっていう印象を持ったね。僕らがリミキサーを手掛けた曲『グッドナイト、グッドナイト』はあんまりリミックスっぽくないよ。本当に曲を“混ぜ合わせた”感じだね。何もかもゼロからスタートして作ったものと言える。で、ミックスし終わってから、曲を買ったんだった。マルーン5が出した解答はどうだったのかを知るためにね。二つのバンドが出した解答は、お互い全然異なるものだと思う。僕は、あくまでも“僕の解答”を出した後に、マルーン5の出した解答を知りたかったんだよね。だから、リミックス作業が終了してから、曲を購入したんだった。99セント払ってね(笑)」

 

『オフェンド・マギ—』

2,310円(税込)
レーベル: P-VINE RECORDS
原盤レーベル: Kill Rock Stars