honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

MISHKA

「バミューダのボブ・マーリー」が訴える
突き刺すようなメッセージとラブ&ピースに魅せられて

09 8/17 UP

Text:Mayumi Horiguchi

──
ミュージシャンのへザー・ノヴァですよね。
「そう。姉がアランを僕に紹介してくれたんだ。"弟なんだけど、この子もシンガーソング・ライターなのよ"ってね。で、アランが僕の曲を聴いてみたいというんで、4曲入りのCDを作って渡したら、すごく気に入ったみたいで、"イギリスに来て、レコードを作らないか?"って誘われたんだ。"う〜ん、どうかなぁ。わかんないなぁ"って感じで、悩んでた。音楽業界の歯車の一部になりたくはなかったんだよね。ただ、曲を作り、歌い続けたかっただけだったんだ。僕の中の一部は、英国に行き、ミュージシャンになることに反抗していたんだよ。でも、音楽を愛していたので、これは僕がやるべきことなんだろうと悟ったんだ。僕が悩んでいたら、母がこう言ったんだ。"行きなさい。もし一度もトライしなかったら、何事も起こることはないんだからね"ってね。それで英国に行ったんだ。結果、物事は良しと出たね。'99年にファースト・アルバム『ミシカ』をリリースしたんだけど、その頃、現在の妻と出会ったんだ。妻はジャマイカ出身なんだけど、英国に長い間住んでいた。出会ったのは英国さ。人生が大きく変わったね。その頃の僕は、すごくクリエーティヴだったよ。ギターを弾くことに多くの時間を割き、曲を書いて、歌ってね。アルバム発売後は、六ヶ月間ツアーを続けて、その後、クリエーションがなくなって……。ある日、電話がかかってきて、"もう契約はないから"ってね。その後は、バミューダに戻って、生活のために、家の塗装をする仕事についたりしていたよ」

──
セカンド・アルバムの『ワン・ツリー』が出るまでは、所謂"普通の人"として暮らしていたんですか?
「そう。クリエーションが無くなった後は、『ワン・ツリー』のプロデューサーと一緒にデモを作ってたんだ。別のレコード会社を探してたんだけど、誰も興味を持ってくれなくてね。結局、4年かかったね。カリフォルニアの小さなインディー・レーベルがそのデモを、『ワン・ツリー』としてリリースしてくれたんだ。その後は、またツアー三昧だよ。最新作の『アバッヴ・ザ・ボーンズ』の制作に取りかかったのは、'06年だ。発表までに何年もかけて完成させた。その間は、ツアーをしたり、それ以外は家族と過ごしたりしていたよ」
──
今は、フルタイム・ミュージシャンなんですよね。
「そう。'04年からはね。それ以前も、ギターをプレイするのを辞めることは一度たりともなかったけれどね」
──
最新アルバム『アバッヴ・ザ・ボーンズ』についてお聞きします。アメリカでは、俳優のマシュー・マコノヒー主宰のレーベル「j.k.livin」からリリースされているんですよね。
「そう。彼はファースト・アルバムの大ファンだったらしい。ジャマイカに休暇で遊びに来ている時に、僕のCDを聞いて、大好きになったらしくて。で、翌年に僕のことを捜そうとして、またジャマイカに来て、ライヴ・ハウスを訪ねたそうだ。で、僕の電話番号を手に入れて、電話をかけてきたんだ。その時に"数年間、曲は書き貯めてるんだけど、業界も厳しいみたいで、レコード会社と契約できないんだよね……"と言ったら、マシューは自分でも何かやりたい、と言ってくれて、"じゃあ、俺がレコード・レーベルを立ち上げて、きみのアルバムを出すよ"ってことになったんだよね」

 

──
そうだったんですか! ハリウッド・セレブにレコード・レーベルを作らせるきっかけになっていたんですね。ところで、同作には、テーマやコンセプトはあるんですか?
「分からないなぁ(笑)。音楽的なエネルギーの産物なんだよ、あのアルバムは。"オー、すげぇクールなサウンドだぜ"って感じ。テーマは特にないんだ。収録曲の内のいくつかは、クリエーションからファースト・アルバムをリリースする以前に作っていたもので、すごく古い曲なんだよね。とにかく、楽曲を作ることこそが、僕にとっては自然なことなんだ、って感じて。それで、"これはいいぜ、これはちょっとダメだな"っていう感じで選曲していって、気に入ったものを収録したんだ。アルバムのタイトル・トラックでもある『アバッヴ・ザ・ボーンズ』が、アルバム全体のテーマを伝えているといえるけれど、それも意図的にそうしたわけじゃないからね。この曲は、僕の妻が作ったんだ。妻はジャマイカ人だが、ジャマイカの人々は、アフリカから無理矢理連れてこられて、奴隷として400年もの間、無給で、ハードな仕事をすることを余儀なくされてきたんだ。きつい仕事に従事して、若くして死んで……単に、英国が安い砂糖を手に入れたいがためにね。この曲は、若い人たちに、僕らがこうして存在するのも、先祖がいたからなんだと伝えたいからなんだ。このメッセージは、他の国の人々にも伝わるだろう。例えば北米ではネイティヴ・アメリカンを虐殺したり、オーストラリアではアボリジニを、アジア諸国でも……と、他国でも、同様のことが行われてきた。政治家の強欲さゆえにね。だから、僕たちは、立ち上がらなければならないんだ。先祖の骨の上にね。死の上に立つのではなく、彼らの人生の上に立ち、ヴァイブレーションを感じるんだ。そして、現代を生きぬく方法を見い出すんだよ」
──
フランス政府は、先だって植民地政策が過ちだったと認めましたよね。
「そうだよね。必要なことだよ。アメリカなんか、自国民に対しても謝ってはいないぐらいだからね。政治的な問題なんだろう。謝ったら最後、終わりだと思っているのさ。我々の世代が、世界を変えていかなければならないんだ。過去や歴史をリスペクトしない態度は、もう終わりにしなければいけない。未来の為にね。ラスタの教えでも、そう言っている」
──
では最後に、ステューシーとのコラボレーションTシャツについて。ラスタっぽくて、良い感じに仕上がってますね。
「うん。レゲエ・スタイルでいい感じだよね。満足だよ。ラスタ・カラーである赤、緑、金色が使われているし、ライオンも背後にいるしね。僕の歌詞もフィーチャリングされているし。みんなが気に入ってくれると嬉しいね」

 

Mishka Above The Bones Tee

各5,250円[税込]
[問] STUSSY JAPAN
TEL:0548-22-7366

http://www.stussy.jp/

 

ミシカ『アバッヴ・ザ・ボーンズ』

初回盤限定:1,980円[税込]
通常盤:2,300円[税込]
※写真は通常盤

SURFROCK INTL/tearbridge
発売中