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THINK PIECE

Luminous Halo~燦然と輝く光彩~

Port of Notesの5年ぶりとなるニューアルバムが発売

09 11/30 UP

Text: Tetsuya Suzuki

ボサノヴァ、ジャズ、ソウルなどさまざまなアプローチで大人のためのポップスを聞かせるPort of Notesの5年ぶり、4枚目のオリジナル・アルバム『Luminous Halo(ルミナス・ヘイロー)~燦然と輝く光彩』が完成した。早くも傑作との呼び声も高い今作のプロデュースを手がけたのは、ノラ・ジョーンズ『Don't Know Why』の作者としても知られる、シンガーソングライターのジェシー・ハリスだ。彼のもとニューヨークでのレコーディングを敢行、また大貫妙子、曽我部恵一に作詞をオファーするなど、新境地にも挑戦した畠山美由紀と小島大介に、待望のアルバム誕生までのいきさつを尋ねた。

Port of Notes / ポート・オブ・ノーツ

1996年、それぞれソロ名義としても活動する畠山美由紀(Vo)と小島大介(G)により結成。マイペースかつ着実にファンを増やし、昨年にはデビュー10周年を記念してベスト・アルバム『Blue Arpeggio~Own Best Selection~“青いアルペジオの歌”』をリリース。先ごろ、4枚めのオリジナル・アルバム『Luminous Halo~燦然と輝く光彩』が発売され、8年振りの全国ツアーが盛況のうちに終わったばかり。12月15日には、青柳拓次、フラメンコダンサー中田佳代子と共に、『I.C.T.E.L.Morioka 2009~Port of Notes、青柳拓次、中田佳代子~』と題したイベントを盛岡で開催。

 

──
5年ぶりのオリジナル・アルバムとなりますが、今作『Luminous Halo~燦然と輝く光彩』の構想はいつ頃持ち上がったのでしょうか。
畠山美由紀(以下 : H)
「昨年リリースしたベスト盤に1曲だけ新曲を入れたのですが、その曲をきっかけにアルバムを作り始めようという話になったんです」
小島大介(以下 : K)
「時期としては、2007年の秋頃でしょうか」
──
その時点での“次の作品への手ごたえ”とは、どんなものだったのでしょうか。
H :
「すごく漠然とはしていたものの、また二人で新しい音楽を生み出せるという確信だけはありましたね」
──
ではとりあえず曲作りを始めてみよう、と。具体的に作詞・作曲はどんな風に進んでいったのですか。
K :
「今回、根本的に変わったと思う部分があって。ベスト盤用の新曲を作った後、コーラスとギターを小池龍平くんにサポートしてもらいつつ、3人編成で頻繁 にライヴをやるようになったんです。最初は過去に発表した曲を演奏していたのですが、やっていくうちに新しい曲も挟むようになり、曲ができるたびにライヴで試してみる、という流れができました。ライヴの感触をもとに、だんだんやりたいことの方向性が見えてきましたね」

──
この作品でメジャーデビューになりますが、今までで一番シンプルでベーシックになっていると感じました。曲によってはレゲエ、ブラジリアンなど色々なアレンジがされていますが、どの曲でもギターとボーカルがすごく印象に残るというか。そこは意識されていたのでしょうか。
H :
「曲の作り方や意識にしても、骨格の部分は昔から変わらないんですよね。ただ、私たちはメローだったり、マイナーだったり、サウダージ感の強いバンドなので、今回はフェスなどでもみんなで楽しめる曲があってもいいな、とか、いわゆるポップスとして聞いてもらえるといいな、というのは意識しましたね」
──
Port of Notesの歴史の中には、シンプルな日本語ポップスに対する抵抗、距離感もあったのかな、と思うんですよ。打ち込みを取り入れた時期や、テクニカルなアレンジにチャレンジした時期も ありましたし。それが一回りして、大貫妙子さんや山下達郎さん周辺のニューミュージックにも通じるというか、そこがいいのではないかとも思いました。
K :
「幅広い人に聞いてもらいたいというのはありますね。フェスのように、僕たちのことを知らないお客さんもいる状況において、これまでの持ち曲をやるのもいいのですが、加えて、知らない人も入ってこられるような普遍的なポップスも作りたかったんです」

 

──
そういった方向性の上で、今回、ニューヨークでのレコーディングやジェシー・ハリスによるプロデュースを決めたのでしょうか。
H :
「そうですね。やっぱり何かしらの化学反応というか意外性が欲しかったのもあって。ラッキーなことに、周りには素晴らしいミュージシャンがたくさんいる のですが、環境の全く違うところで私たちの音楽がどう受け止められてどう変化していくのかにも興味があったし。レコーディングはとても刺激的でしたね」
K :
「狭いスタジオにミュージシャンが集まって、ほとんど一発録りだったんです」
H :
「とはいえ、けっこうアバウトで。誰かが間違えて録り直しになったとしても、ネガティヴな緊張感や変な切迫感がなく、むしろもう一回歌えるのが楽しかったくらいでした(笑)。録音後のジャッジにおけるジェシーの集中力がすごくて、『録れた!』となればすぐに次の曲、という感じでしたね」
K :
「ポップスのバンドではありえない、1曲につき3テイク以下、2日で10曲分のベーシックトラックを録ってしまうような驚異的なスピードでした。6日めにはミックス作業に入って いたから、レコーディングは実質5日ちょっとで終わりました。レコーディング以前に、ジェシーにデモテープを送って2、3日後にはもう、『この曲はこの編成でやりたい』というアレンジのアイデアが返ってきていたんですよね」
H :
「その構想を元にニューヨークのミュージシャンをピックアップしたのもジェシーなので、そういう意味では彼に全てを預けましたね。すごく相性が良かったのだと思います。長々と説明をしなくても伝わるし」
K :
「英語でやりとりしている感じがしなかったよね。たとえこちらが不安に思うことがあったとして、それを言葉で言わなくても、先に『大丈夫、大丈夫』と返ってくるんですよ。そして僕たちらしさもきちんと立ててくれるし」
──
畠山さんとしては、ソロの作品と今作とで大きく違うところはあるのでしょうか。
H :
「Port of Notesには、大ちゃん(小島)との関わりの深さというのがあって、やっぱりそこは違いますよね。二人で方向性を探りつつ、曲を作る土壌からパーソナルな生活レベルの話までできるのもあって」