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THINK PIECE

YOSHINORI SUNAHARA×iLL

砂原良徳とiLLが考えるコラボレーションとは。

09 8/24 UP

Photo:Kentaro Matsumoto Text:Tetsuya Suzuki

キャリア初となる映画のサウンドトラックを手掛けた砂原良徳と、
砂原プロデュースによるニューアルバムが間もなく発売されるiLL。
お互いを知り尽くしている2人が今回のコラボレーションを振り返り、
新たに見えてきた事とは。

(左)砂原良徳

電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。電気グルーヴの活動と並行して行っていたソロ活動では、飛行機/飛行場をテーマとした3部作『Crossover』('95)、『TAKE OFF AND LANDING』('98)、『THE SOUND OF '70s』('98)をリリース。2枚は海外でもリリースされ、その名は世界でも知られる。

http://y-sunahara.com/

(右)中村弘二/iLL

95年「スーパーカー」を結成し、05年2月解散。06年「iLL」として、アルバム『sound by iLL』をリリース。同年、フジロック06にて、レーザーを駆使した演出と自然との共演で高い評価を得て、07年4月にリリースされた映像作品『iLLusion by iLL』にはエッシャーの動画を駆使した映像を宇川直宏とともに制作。08年には二枚のアルバムを発表し、旺盛な制作欲は止まることがない。

http://www.illtheworld.jp/

 

──
砂原さんのソロ名義として実に8年ぶりとなるリリースが映画のサントラという事ですが、当然アルバムとしての意味合いといったら変ですが、アーティストとして自分の音楽に対する考え方や自分自身のアイデンティティがどうしても入ってくるでしょうし、入れていた部分もあると思うんですが。
砂原良徳(以下:S)
「普通に外から来る仕事というのはサントラ以外にもあるんですけど、やってみて分かったのは、自分が普段ソロでやっているような音楽スタイルというのを持ち込めなかったということです。というか、映画に合わなかったんですよね。それで、自分のアピールという感じよりはむしろ、単純に映画の中で機能させるにはどうしたら良いのかということを考えて曲を作りました」
──
随分長い間リリースがない中サントラとはいえ新しい作品が出るとなると、そこにはやっぱり砂原さんの新しい音楽性の何かが入っているのかなと。仮に入れたつもりがなくても、それをみんな嗅ぎ取ろうとすると思うんですよ。
S :
「それはあると思いますよ。ここで作業したことが、あまり自分の中にフィードバックされることってないのかなと思っていたんですけど、やっぱりあるのかなと最近は思ってますね。でも表面的にすごい分かりやすく出るかどうかは分からないけど……。非常に技術的な部分では所々あるかなって思ってます」

──
そのなかで言うと、ナカコーさんとのフューチャリングで一緒に作った主題歌は、わりとソロに近いニュアンスもありつつという感じでしょうか。
S :
「やっぱり僕のソロとは違います。この曲はiLLのアルバムにも収録されるんですけど、先に映画からの発注があったから、まずそこで機能することを先に考えないといけないなというのは、この曲も同じようにありましたね。曲のアレンジは制作サイドからの意見もあり、それに合わせたところもありましたね」
──
iLLのアルバムにも収録されるということですが、この曲が現在制作中のアルバムの中でひとつのポイントになったりするのでしょうか。
中村弘二(以下:N)
「今回のお話を頂いた時はアルバム制作中ではありましたけど、僕の方から見ると映画製作サイドと色々会話していたのは砂原さんで、僕の方はあまりそこにガンガン突っ込んでいくという感じではなかったですね。普通に楽しみながら製作できる方向に進んでいったので……」
S :
「ナカコー君とやるときって、悩んでどうしようというのはあまりないよね。でもカップリングでやった曲は、今までやったのを聴き直してみたら全然違ってたね(笑)」
──
一応、共作というカタチにはなると思うのですが。
S :
「共作というか、これはiLL名義であって、僕は単純にプロデューサー的な立場ですから、簡単に言ってしまうといつも通りだよね。スーパーカー時代から何度か仕事してるんですけど、他のメンバーがいない位でそんなに変わらないかな。昔はメンバーもたくさんいたから学校みたいな感じだったけどね(笑)」

 

──
ご自身でもカタチにできるナカコーさんが、あえて砂原さんに持ってくるという点でいうと、ナカコーさんが砂原さんに求めているものとは。
N :
「自分でまとめ上げるのも面白いんですけど、砂原さんとまとめ上げると、1つ1つの音のデザインがよりはっきりしてくるというか、ちゃんと見えてくる部分があって、そこが僕は好きですね。毎回勉強になります」

S :
「そんなに勉強になるような要素は入ってないけどね(笑)。ただ僕としても、ナカコー君が持って来た原石を磨くような作業ーー例えば建物でいったらネジを締めたりとか、細かいところをカチッと磨いていくと、何かが浮き上がってくるんですよね。その感じは僕が浮かび上がらせたんじゃなくて、本当は最初からあるんですよ。だから磨き屋みたいなもんですね(笑)。デモテープを聴いた時点で、内に秘めたポテンシャルは何となく分かるんですけど、それを磨いていく過程は僕もやっていて面白いと思います。でも自分でやっても同じでしょ(笑)? でもちょっとクセが出たりはするかもね」
N :
「自分で磨こうとすると、磨き慣れてるところは磨き慣れてるものができるだけなので」
S :
「リビングはキレイだけど、水回りは汚いみたいなね(笑)」
N :
「そういうクセは絶対あるよね。それを客観的に見ながら磨かれると、より曲が明確に浮かび上がってきて、いいなあと思うんですよね」