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THINK PIECE

TOKYO BLACK STAR

TOKYO BLACK STARが示す
ダンスミュージックの未来系

09 6/8 UP

Photo:Yuji Hamada Text:Tetsuya Suzuki

パリ生まれ東京育ちのインターナショナル・エクレックティックDJ “ALEX FROM TOKYO”と、エンジニア/サウンドプロデューサー“熊野功雄”によるユニット“TOKYO BLACK STAR”。この度、彼らが溜め込んできた楽曲を軸に制作されたファーストアルバム『BLACK SHIPS』がリリースされた。アルバムの制作背景と、彼らのダンスミュージックに対する思いについて迫る。

TOKYO BLACK STAR

ニューヨークと東京を拠点に世界中を飛び回る“ALEX FROM TOKYO”と、制作からマスタリングまでを統括するエンジニア/サウンドプロデューサー“熊野功雄”によるスペシャルユニット。これまでドイツのInnervisionsレーベルから4枚のEPをリリースしているほか、数々のアーティストのリミックスを手掛けるなど、世界各地から高い評価を得ている。現在、記念すべきファーストアルバム『BLACK SHIPS』が発売中。

http://www.alexfromtokyo.com
http://www.myspace.com/tokyoblackstar

 

──
今回リリースされたTOKYO BLACK STARとして初のアルバム『BLACKSHIPS』ですが、今までのALEXのキャリアからすると、ここまでアシッド感のある硬質なサウンドは少し意外だと思うのです。ここに至るまでの経緯みたいなものはどういったものですか?
ALEX FROM TOKYO(以下:A)
「80年代の終わり頃にダンスミュージックと出会ったとき、特にハウスミュージックはアシッドハウスの影響が強かったから、デトロイト流れのテクノや、イギリスのアシッドハウスにすごい影響されて、それから色々な出会いがあってプレイするようになって。今回のアルバムに関していうと、熊野さんとは10年前に東京で知り合って、彼が「レイズ」というスタジオで働いてる頃、僕はレコードショップで働きつつ、F Communicationsというレーベルを日本でやっていたんだ。イギリス的なジャズやラテンといった部分もありつつ、F Communicationsみたいなエレクトロなテクノも好きだったわけで。それで熊野さんと知り合って、お互いに共通する部分が多くてすぐに親しくなった。それから今まで約10年間一緒に作業してたんだけど、特に4年前に出したInnervisionsレーベルからの1作目『Blade Dancer』という曲が、僕らにとってはキャリアを変えた1枚でもあって、そこから一緒にアルバムを作ろうっていう意識がどんどん高まって。僕らが今まで聴いてきた、体の中に染み込んだクラブミュージックのような部分が、今回自然に出てきたような感じがしてる。時代的なところもあるけど、back to basic的なメッセージもあったりして、プロデュースされて作り込まれたものよりは、精神的な部分もあるんだけど、もうちょっとラフでダイレクトなものを求めてたりとかしてて、それがいつもより自然に出てきたんじゃないかな。」
──
『Blade Dancer』という4年前のトラックで、その方向性が見えてきた?
A :
「オファーがあって作るんじゃなくて、本当に自由に自分たちで作ろうと思って作った最初の曲だね。」
──
その時、熊野さんと一緒に曲を作るきっかけは何だったんですか?
熊野功雄(以下:K)
「それより6年前ぐらいから一緒に作ってたね。」
A :
「定期的に会ったりしてて。『Blade Dancer』を作る前から、熊野さんとなら面白いことが出来るなって思ってて、お互いにバックグラウンドは全然違うんだけど、聴いてきた音楽も向いてるビジョンも近いから、ここで2人でやったら1人じゃできないものが絶対できるし、何か特別なものができそうな気がして、単純に面白いセッションができるなと思ったね。」
K :
「僕は最初からALEXはエレクトロニックな音が好きだなって思いました。ギャラリーとかアフロだったり、わりと土臭いものだったりするけど、でも一緒にやってると、シンセのパットとかがものすごいしっかりしてるんですよね。」

 

──
もう一つ感じたのが、アグレッシブなダンスミュージックではあるけれど、シーンのトレンドには左右されていないのかな、と。
K :
「それはあまり考えないようにしてます。狙って作ったっていうのは全くないですね。狙ってというよりかは遊んで作った感じに近いですね。」
A :
「熊野さんのスタジオの音がすごく良くて、そういう意味では本当に遊べましたね。アートや映画の面白い話とか、DJで色んなところに行ってきた話を、2ヶ月に1回一緒になって話して、そこで必ず何かが生まれるんだよね。Innervisionsレーベルも『Blade Dancer』直後から、僕らの音を気に入ってくれて、それから彼らと音を通してコミュニケーションがとれて、自然に今まで出したシングルもそうだけど、こうしてアルバムを出せる機会ができたんだ。でもやっぱりアルバムにするのにはちょっとクラブを考えないようなリスニング的な要素がないと面白くないなっていうのもあって、僕らも結構ダンスミュージック歴が長いから、クラブはクラブですごい良いんだけど、やっぱり違うものも内部的に求めてたりもするし、Innervisionsレーベルも、アルバムをやるんなら12inchのスタイルとはちょっと違う感じで、コンセプチュアルなものができればいいかなって言ってたしね。」

──
コンセプチュアルでスケールの大きい音楽って最近少ない。やっぱりちょっと小粒なものというか、地味なものが多かったりする。その中でファンタジックなイマジネーションが広がっていくような音楽というのは、古いようでいて新しいと思うんです。
K :
「本当にそういうものが好きで音楽を始めてるんだけど、最近そういうものにお目にかからないというか、みんなすごくテクニカルになり過ぎちゃってる気がしますね。」
A :
「イマジネーションを活かして、自由にやっていこうっていうね。」
K :
「TOKYO BLACK STARのテーマだね。」
A :
「しかもこういう音楽を聞く側も同じことを感じてると思うから。」
──
少し前だと、こういうスケール感って出しずらかったんじゃないかなって思うんですよ。スベるじゃないけど、上手く伝わらないというか。
A :
「出して失敗したらしょうがないっていうか、とりあえず挑戦だね。でもすごく満足してるよ。ここまでエネルギーと時間をかけて作ったからね。」
K :
「そういう風に思って作ったものがちゃんと聴く側に伝わってるっていうのがとても嬉しいですね。」