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THINK PIECE

THE BIG PINK

21世紀に甦ったポジパン?!
愛を尊ぶ、新・耽美派バンド

09 8/31 UP

Text:Mayumi Horiguchi

──
そうですよ。イギリスの音楽メディアが、80年代初期にそう言い出して、日本にも広まったんですよ。
R :
「ポジティヴ・パンクがゴシックだったんだ?!」
M :
「どっちかっていうと、ネガティヴじゃん!」
R :
「ほんとだよ、ネガティヴだよな」
──
私も当時、そう思いました(笑)。今、お二人はおいくつなんですか?
M :
「28歳だ」
R :
「29歳だよ」

──
なるほど。ポジティヴ・パンクっていう言葉を知らなくても当然ですね。すでに死語みたいなものだし。
R :
「ああ、知らない。でも、気に入ったよ、その言い方。多分俺達は、ポジティヴ・パンクなんだろう」
M :
「英国社会の反映とかは、まったくないね。僕らは、そういうことは全く気にしてないし、全然、何の影響を受けたりもしていない。すごく退屈なことだから」
R :
「英国で起こっている社会問題とかと俺達は、全く何の関係もない。なぜなら、つまらないから。関わり合いたくもないね。考えるのも嫌だよ」
M :
「僕らはとにかく、すべての種類の音楽を聴いている。60'Sソウルから、サイケデリック、ダブステップ、ゴス・バイブル……つまりさっきの“ポジティヴ・パンク”だよね、それを僕らの音楽の一部分に感じたとしても、単に、そういうものすべてを好んで聴いてきたっていうだけのことなんだ。ヒップホップも好きだし。とにかく、様々なジャンルの音楽すべてを、自分たちの音楽に取り込みたいと思ってるんだ」
R :
「俺達の音楽は、二人で共にクリエーティヴになったことのリアクションなんだ。だから俺は、ザ・ビッグ・ピンクというバンドが好きなのさ。創造的な面で、やりたいことをやっているからね。ブロック・チューンやソウル・チューン、ダンス・チューン、ダンス関連のソング……ザ・ビッグ・ピンクにはルールなんてない。何だって、やりたいことをやれるバンドなんだ」

 

M :
「ゴシック・バンドでもないよ。なんていうか——好きなようにやってるだけさ。単に、僕ら二人を反映したものなんだよ」
──
なるほど。新作のレコーディングはどうでした?
R :
「素晴らしかったよ! ニューヨークでやったんだけど、場所がエレクトリック・レディ・スタジオだったんだ。信じられないほど良かった! 毎日、ジミ・ヘンドリックスを感じながら、デヴィッド・ボウイやジミが使ったマイクを使ってレコーディングするなんて、最高さ!」
M :
「ニューヨークってそういう凄さのある街だよね。街に殺されかねない。そしてスタジオも、そんな街の一部なんだ。ジョー・ストラマーもキース・リチャーズも、ジミ・ヘンドリックスも使ったスタジオでレコーディングするなんて、素晴らしい経験になったね。それ以前には、スタジオ自体を使ったことがなかったぐらいなのにね」
──
ジャケットのアートワークは、コクトー・ツインズやデッド・カン・ダンス、ピクシーズ作品などを手掛けてきた巨匠、ヴォーン・オリヴァーですよね。
M :
「そう。彼と、彼のデザイン会社、 v23は、僕らが今までリリースしてきた作品のアートワークを、すべて担当しているんだ。4ADの作品を数多く手掛けてきたから、自然と知り合ってね。ちょっと神経質で、小うるさいところがあるんだけどね、彼(笑)」
──
アートは好きですか?
R :
「俺達はアートを愛してるよ」
M :
「アートを愛してるし、本も好きだよ。カメラも好きで、“デジタルハリネズミ”っていう、ちっちゃなトイカメラを、来日中に買おうと思ってるんだ。フィルムみたいな質感の、綺麗な色の写真が撮れるんだけど、でもデジタルなんだよ。日本は好きだよ。みんなすごくラヴリーだし、こんな気持ちになれる国は他にはないね。国旗も好きなんだよね、“日の丸”が! 僕らのウェブサイトやマイスペースには、いろいろな画像が掲載されているけれど、日本物もいっぱい好きで載せてるんだ。日本はセカンド・ホームだね!」
R :
「ホーム・オールウェイズ・ホームって感じだね、日本は。写真家のアラーキーも大好きだよ。何冊か、彼の本を持ってるよ」
果たしてマイロは、“デジタルハリネズミ”を買えたのだろうか?! いずれにせよ、ザ・ビッグ・ピンクの二人は、とても知的好奇心旺盛な、良い人たちだった。耽美=退廃的ではないことは、逆に、21世紀的な耽美なのかもしれない──そんなことを、インタビュー終了後思った、暑い夏の一日だった。

 

ザ・ビッグ・ピンク
『ア・ブリーフ・ヒストリー・オブ・ラヴ』

2,100円[税込]

ベガーズ・ジャパン
2009年10月14日発売予定