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THINK PIECE

DELPHIC

中毒的なビートと叙情的なメロディを融合、
既成概念を破るサウンドを作り出す、新たな才能。

10 4/23 UP

Text: Kohei Onuki

2009年にリリースした1stシングル“Counterpoint”で一躍音楽シーンの最前線に躍り出た、マンチェスター発の新人バンド、Delphic。その彼等が先頃、ライブのために来日した。中毒的なビートと叙情的なメロディを融合、既成概念を破る新たなサウンドを作り出し、聴く者の体と心を揺さぶるDelphic。その彼等の音楽的背景を探る。

Delphic

2008年、マンチェスターで、James Cook(Vo、B)、Richard Boadman(Multi-instrumentalist)、Matt Cocksedge(G)の3人により結成。2009年、R&Sレコーズから1stシングル“Counterpoint”を、続いてKitsunéレーベルから2ndシングル“This Momentary”をリリース。そして今年、待望の1stアルバム『Acolyte』をリリース。ニューウェーヴ、アシッド・ハウス、テクノ、エレクトロ等とロックの要素を融合したサウンドが高い評価を得る。

http://hostess.co.jp/delphic/
http://www.myspace.com/delphic

 

──
Delphic結成の経緯を教えて下さい。
Richard Boadman(以下:R)
「僕たち3人はマンチェスターの大学で知り合ったんだけど、元々はメンバーそれぞれが別のバンドで活動していたんだ。僕たちがDelphicを結成する前のマンチェスターの音楽シーンは盛り上がりに欠けていたし、メンバーそれぞれ自分が活動していたバンドに納得出来ていなかった。そこで3人で新たなバンドを組むことにしたんだ」

──
マンチェスターの音楽シーンに少なからず不満があって、それがバンド結成の理由のひとつだったわけですね。
R :
「そうだね。マンチェスターの音楽シーンはOasisの影響力が強すぎる、というか……」
James Cook(以下:J)
「マンチェスターのバンドの多くはOasisの存在にとらわれている部分があって、新しくて面白い人たちが中々出てこなかったんだよね」
──
皆さんはどんなアーティストや音楽に影響を受けてきたんですか。
R :
「皆インディー・ロックを聴いてはきたけど、インディー・ロックに固執することに嫌気が差したんだ。その後、例えば僕の場合は、15歳くらいの時に聴いていたOrbitalなどのダンスミュージックを再び掘り下げるようになった。そして、ブレイクビーツのような音楽を生楽器で制作したら面白そうだな、と考えるようになったんだ。例えばAphex Twinも僕が好きなアーティストの一人なんだけど、彼が作る曲ではアップビートとダウンビート、盛り上がる要素とメランコリックな要素が共存しているよね。そういう音楽を、僕たちはバンドで表現しようと思ったんだ」

 

──
1stシングルをR&Sレコーズ(ベルギーのレコードレーベル。1990年代初頭のテクノ・シーンにおけるその影響力は大きく、Aphex Twinなどが作品をリリースしていた)から出したのも、自分たちの音楽性にAphex Twinをはじめとするダンスミュージックのアーティストからの影響があったからですか。
R :
「確かにそういう理由もあったね」
Matt Cocksedge(以下:M)
「自分たちが表現したいことを考えた時、普通のインディー・ロックのレーベルから作品を出すより、R&Sのようなレーベルから出した方がいいと思ったんだ」

──
2000年代中頃から「ニュー・ウェイヴ・リバイバル」とか「エレクトロクラッシュ」と呼ばれるムーブメントの中で、ロックとダンスミュージックの要素を融合した音楽がたくさん出てきました。しかしDelphicの音楽は、ロックとダンスミュージック両方の要素があるものの、「ニュー・ウェイヴ・リバイバル」とか「エレクトロクラッシュ」と呼ばれたムーブメントと断絶している、というか、ロックとダンスミュージックの融合の新たなカタチを示しています。
R :
「僕たちの音楽性がダンスミュージックからの影響を強く受けていることは確か。けれど、単にクラブ受けする曲を作りたいわけではないんだ。2000年代中頃なら、例えばThe Raptureのようなアーティストがダンスミュージックを意識したバンドサウンドを作り上げていたよね。聴いている人たちをアジテーションするような曲で。けれど、僕たちはよりデリケートな音楽を目指していて、繊細なメロディ作りや歌詞作りにもかなりの重点を置いている。叙情的な音楽を目指している、というか。そういう部分が2000年代中頃の『ニュー・ウェイヴ・リバイバル』とか『エレクトロクラッシュ』のムーブメントにいたアーティストとの違いかもしれないね」