honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

DJ Harvey×Kenji Takimi

瀧見憲司が探る、“生ける伝説”DJ Harveyの秘密。

10 4/27 UP

Photo: Shoichi Kajino Text: honeyee.com

ハウス、ディスコ・ダブ、バレアリックのパイオニア的存在、リ・エディットの帝王DJ Harveyが、GW中の日本でツアーを行うため、8年ぶりとなる来日を果たした。
様々なジャンルの音楽を融合する独特のDJスタイルで世界中のダンスミュージック・ファンを魅了し続けるリビング・レジェンド、DJ Harvey。そのDJ Harveyのいまを瀧見憲司が探る。

DJ Harvey

ハウス、ディスコ・ダブ、バレアリックのパイオニア、リ・エディットの帝王。80年代後半「セカンドサマーオブラブ」と呼ばれたイギリスのダンスミュージック・シーンでデビューを飾る。様々ジャンルの音楽を融合した独特のDJスタイルは今なお色褪せることなく、世界中のダンスミュージック・ファンから高く評価される。
http://www.harveysarcasticdisco.com
http://www.facebook.com/pages/DJ-Harvey/88409697422?ref=ts
http://www.thirtyninehotel.com

Kenji Takimi (Crue-L)

88年頃よりDJ活動をスタート。今年設立19周年を迎える、インディペンデントレーベル、Crue-Lを主宰。 2010年1月に最新コンピレーション・アルバム『Post Newnow』をリリース。現在Crue-L Grasnd Orchestraのレコーディング中。5月にはUKツアーを行う。
http://www.crue-l.com
www.myspace.com/cruelrecords
www.myspace.com/lugerego

 

瀧見憲司(以下:T)
「Harveyからは70、80年代のブリティッシュ・ロックやサイケデリック・ロックのダイナミズムやピークゾーンレベルを、バンド形式ではなくDJとして表現している、という印象を受けるんだけど、Harveyは自身のDJスタイルをどのようなものとして捉えているの?」
DJ Harvey(以下:H)
「確かに70年代のロックやジャズには大きな影響を受けていると思う。僕はパーソナリティの強いDJだから、僕のDJを聴けば僕の人間性そのものが見えてくるはずだ。でも僕は自分自身の気持ちに素直に行動しているだけだから、それが周りの人にどう見えているかなんて分からないし、そんなこと考えたこともないんだ。憲司は僕にサイケデリック・ロックの影響を見たのかもしれないけれど、他の人からするとパンク、もしかしたらアシッドハウスの影響が見えるかもしれない。それは見る人達が判断することで、僕は僕がやりたいようにやってるだけ。それが僕の音楽性であって、人間性なんだ」
T :
「キャリアの初期にはカテゴライズされることを拒み続けてきたHarveyの音楽性が、多くのフォロワー達によってひとつのスタイル、ひとつのカテゴリーとしてクラシック化されたことについてはどう思う?」
H :
「気にしていないよ。もし誰かが『HarveyはガラージDJだ』と言ったとしてもね。人によってガラージはハウス、ディスコ、ブギー、ロックとそれぞれだろうし、ガラージは全ての音楽を指すんだから。レゲエと一緒で、一言では説明することのできないものなんだよ。そもそも、音楽をジャンル化、カテゴライズすることには無理があると思うんだ。それはメディアやジャーナリストが作り出したものでしかないんだよ。僕はそういったものに囚われることなくプレイすることができる。例えば僕の影響を受けたDJがかけたレコードだって、気に入ればプレイするしね。一つのスタイルに固執することなく、視野を広く持つことが重要だよ」

 

T :
「これだけ音楽が溢れている現在でも、昔ながらのアナログな手法で音楽を発掘して、新しいものとして聴かせることができるということは本当に素晴らしいと思う。それがHarveyのスタイルなんだと思うけど、正直未だにそれができるのはなぜ?」
H :
「全く分からない(笑)。レコード屋にも5年以上行っていないしね。新譜はたくさんのプロモの中から選んでかけているし、昔のレコードは自分のコレクションの中からだね。ごくたまにヤードセールで買うこともあるんだけど。この間、ヤードセールで70年代のArthur Brownのレコードを見つけたんだ(笑)。そういえば、憲司がくれたCrue-Lのレコードは、最近の新譜の中で一番良かったな」

T :
「音楽に限らず、あらゆるものが細分化されて、どんなことをやっても既に前もってやっている人がいたり、枠の中から出れない、というのが現状だと思うんだけど、そんな中でも自分のスタイルを独自のものに保とうという気持ちはある?」
H :
「そういった考えは一切無いよ。さっきも言ったけど、僕は僕の好きなことをやっているだけなんだけど、ラッキーなことにそれを好きだと言ってくれる人がいる。とてもシンプルに、自分の感情に素直に行動してきた。今までもそうだったし、これからもそうさ」
T :
「僕は、Harveyがかけた曲はかけないようにする、というタイプの人間で(笑)、人と被ることがすごく気になる。それでもやっぱり被る部分はあるんだけど」
H :
「そんなこと気にすることないよ。たとえ僕の次のDJが、僕と全く同じセットをプレイしたとしても、それは全然別のものになるからね。DJの個性や人間性によって、プレイされる音楽の聴こえ方も変わるんだ。僕は自分が好きな曲なら、他のDJがその曲をプレイしていたって迷わずかけるよ。Still Goingの"Spaghetti Circus"はもう1年以上も前の曲だし、大ヒットして数え切れないくらいプレイされた曲だ。でも僕は今でもこの曲が大好きだから、今回のツアーでだってプレイするつもりだよ。細かいことはいちいち気にしない。あまり知られていない曲なら、1回のセットで同じレコードを2、3回プレイすることだってあるんだ。1、2回聴いただけでは良さがわからなくても、3回目に聴いた時には熱狂することもある。3はマジックナンバーなんだよ(笑)」